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新たな旅 ー王都ー
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必死でエトワールから逃げ出すブリエは後ろから来る人の気配から逃れる様に飛び上がり屋根に登り上がった。
廊下を走り去る足音を聞きホッとしたのも束の間だった。
「ですよね。」
後ろから声が掛かりドキッと振り返る。
そこには真っ黒な姿に身を包んだ青年がニッコリと立っていた。
「離宮・シグマの屋根にも誰かが施した保護膜があったんですよ。
誰に聞いても知らないって言うんです。
王城の人が知らないなんて変じゃ無いですか?
だから、これは誰かが逃げる時に利用する保険じゃないかと考えたんです。
最近、俺達もよく追いかけられるし。
王都って変な人が多いんですね。
で?貴方は誰なんですか?」
「ッ・・・。」
ブリエはローブを深くかぶり、どうやって切り抜けるか考えた。
「えっと、なんでしたっけ?
ミズガルドの・・・ロズ?ロゼ?ロボ?」
「ロザリンダ様だ!!」
思わず叫んだブリエに真っ黒な青年は手を打って頷いた。
「それだ!ロザリンダさん!」
「平民の分際で不敬だぞ!ロザリンダ様はミズガルドの姫!
お前の様な、湧いて出た冒険者が御名を呼ぶのも痴がましい!」
ブリエは真っ黒な青年に呪詛を投げつけようと魔石に手を触れようとした。
「おっと・・・。それはダメです。」
次の瞬間、ブリエの全身に電撃の様な衝撃が走り、膝から崩れ落ちていった。
「な・・・にを・・・。」
バタンと倒れ、そのまま屋根を転げていくブリエを見送ると真っ黒な青年は声を張り上げた。
「ゼン!!落ちてくよ!」
『了解!!』
ブリエが落ちる、その時。
真っ白な狼がブリエのローブを加えてキャッチし着地をした。
「イオリ・・・。こいつが?」
一緒にやってきたマルクルが驚いた顔でローブの男を見下ろしていた。
「そうですね。名乗りませんでしたが、ロザリンダさんの事は大切なようですよ。
俺がロザリンダさん呼びしただ激怒してたんで。」
「ははは。まぁ、普通の臣下は怒るもんだ。」
すると、エドガーが衛兵を連れて戻ってきた。
「大丈夫ですか?」
エドガーは心配したようにイオリに声をかけた。
流石の王城で好き勝手はできないと、イオリは衛兵にフードの男を引き渡した。
「無事です。少なくとも、王城の屋根に登り我々が追うと逃げました。
ローブに魔石が隠されてるようです。
俺に攻撃しようとしてきたので、扱いは注意したほうがいいでしょう。」
衛兵は頷くと王城の魔導師に確認を取ると男を引き取っていった。
「イオリにつきまとっていたのもアイツなのか?」
「それはどうでしょう?気配は似てますが、断言はできません。
どうやら、彼らは魔石の力を吸いすぎて自分の力を弱まらせているようです。」
「気配が薄い理由も同じですね・・・。
とりあえず、大事にならなくて良かったです。
ゼンも有難うございました。
エトワールに一度戻りましょう。」
エドガーの提案でエトワールに戻る事になった。
どうやら王族一家とポーレット公爵一家に気を取られた他の貴族達には気づかれていなかった。
しかし、一連の動きを目で追っていたロザリンダだけはイオリ達だけが戻って来た事に緊張したように顔を強張らせ扇で隠していた。
それに気付いたイオリであったが気にするでもなく元いた場所に立ち直した。
「さぁ、後は何がしたいのかな?」
イオリが小さく呟くのを聞いていたのはゼンだけだった。
廊下を走り去る足音を聞きホッとしたのも束の間だった。
「ですよね。」
後ろから声が掛かりドキッと振り返る。
そこには真っ黒な姿に身を包んだ青年がニッコリと立っていた。
「離宮・シグマの屋根にも誰かが施した保護膜があったんですよ。
誰に聞いても知らないって言うんです。
王城の人が知らないなんて変じゃ無いですか?
だから、これは誰かが逃げる時に利用する保険じゃないかと考えたんです。
最近、俺達もよく追いかけられるし。
王都って変な人が多いんですね。
で?貴方は誰なんですか?」
「ッ・・・。」
ブリエはローブを深くかぶり、どうやって切り抜けるか考えた。
「えっと、なんでしたっけ?
ミズガルドの・・・ロズ?ロゼ?ロボ?」
「ロザリンダ様だ!!」
思わず叫んだブリエに真っ黒な青年は手を打って頷いた。
「それだ!ロザリンダさん!」
「平民の分際で不敬だぞ!ロザリンダ様はミズガルドの姫!
お前の様な、湧いて出た冒険者が御名を呼ぶのも痴がましい!」
ブリエは真っ黒な青年に呪詛を投げつけようと魔石に手を触れようとした。
「おっと・・・。それはダメです。」
次の瞬間、ブリエの全身に電撃の様な衝撃が走り、膝から崩れ落ちていった。
「な・・・にを・・・。」
バタンと倒れ、そのまま屋根を転げていくブリエを見送ると真っ黒な青年は声を張り上げた。
「ゼン!!落ちてくよ!」
『了解!!』
ブリエが落ちる、その時。
真っ白な狼がブリエのローブを加えてキャッチし着地をした。
「イオリ・・・。こいつが?」
一緒にやってきたマルクルが驚いた顔でローブの男を見下ろしていた。
「そうですね。名乗りませんでしたが、ロザリンダさんの事は大切なようですよ。
俺がロザリンダさん呼びしただ激怒してたんで。」
「ははは。まぁ、普通の臣下は怒るもんだ。」
すると、エドガーが衛兵を連れて戻ってきた。
「大丈夫ですか?」
エドガーは心配したようにイオリに声をかけた。
流石の王城で好き勝手はできないと、イオリは衛兵にフードの男を引き渡した。
「無事です。少なくとも、王城の屋根に登り我々が追うと逃げました。
ローブに魔石が隠されてるようです。
俺に攻撃しようとしてきたので、扱いは注意したほうがいいでしょう。」
衛兵は頷くと王城の魔導師に確認を取ると男を引き取っていった。
「イオリにつきまとっていたのもアイツなのか?」
「それはどうでしょう?気配は似てますが、断言はできません。
どうやら、彼らは魔石の力を吸いすぎて自分の力を弱まらせているようです。」
「気配が薄い理由も同じですね・・・。
とりあえず、大事にならなくて良かったです。
ゼンも有難うございました。
エトワールに一度戻りましょう。」
エドガーの提案でエトワールに戻る事になった。
どうやら王族一家とポーレット公爵一家に気を取られた他の貴族達には気づかれていなかった。
しかし、一連の動きを目で追っていたロザリンダだけはイオリ達だけが戻って来た事に緊張したように顔を強張らせ扇で隠していた。
それに気付いたイオリであったが気にするでもなく元いた場所に立ち直した。
「さぁ、後は何がしたいのかな?」
イオリが小さく呟くのを聞いていたのはゼンだけだった。
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