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新たな旅

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 王都へ近づけば他の馬車や旅人達も現れ賑やかになってきた。
 この辺からは既に道が舗装され、王都まで迷う事もない。
 その中を王立騎士団を先頭に貴族の馬車が通っていくものだから、人々は道を開けていく。

「おい。あの紋章はポーレット公爵家じゃないか?」

「本当だ。カーバンクルの紋章はポーレット公爵家だ。
 まさか、公爵ご本人が王都へ来たのか?」

「確か、王城で大きな茶会が催されるとか・・・。」

「にしても、ポーレット公爵家の騎士団は相変わらず、凛々しく美しいな。」

「本当に!数年前にも見た時と変わらずに輝いているわ!」

「あの色は第一部隊だ。・・・何で軍の人までいるんだ?」

 そんな声が聞こえてきても、一団の足は止まらずに進んでいく。



[ここで説明しておこう]

 アースガイルにある数ある騎士団は全て白で統一されているがデザインや装飾の色や模様によって部隊の区別をつけている。
 ポーレット公爵家騎士団は全身白色にカーバンクルの守護符が白い刺繍がされている。
 目立たぬ白い刺繍が光の加減で煌くのを憧れる者も少なくない。

 王立騎士団第一部隊は白い衣装に中央が赤く、第二部隊は青、第三部隊は緑などに区別がされている。
 市民が第一部隊と分かったのもその為である。

 ちなみにアンティティラにはバラージュ伯爵家騎士団があり、チュニック型が特徴的であり肩には街を作るのに不可欠だったツルハシが刻み込まれている。
 イオリ達にも馴染みのあるダグスク公爵家騎士団は白い衣装の肩から腕にかけて一筋の青いラインが入り、港町らしくイカリなどが刺繍に施されている。
 
 それぞれの地や思い入れによりデザインが変わっていったアースガイルの騎士団の衣装はそれぞれの誇りであり、今回のような王都へ集まる際などは白の衣装が集まる為に市民にとっても楽しみの一つになっている。

 そして、それらとは違いザックス・ヒルが身に纏うのはシルバーの甲冑で“シルバーファング”の呼び名のきっかけでもある。
 甲冑は戦や式典で使うもので普段はモスグリーンの軍服がある。
 ザックスのような階級持ちは胸に勲章を身につける決まりがあるが、それはまた別の時の話に・・・

[話を戻そう・・・]




 木々の繁る石畳の街道を抜けると開けた景色の先にポーレットよりも大きな都市が現れた。

「見えてきたぞ、あれが王都マテオールだ!」

 ザックスの声に反応した子供達が馬車から顔を出して驚きの声を出した。

「「うわぁぁぁ!大きい!」」

「クリストフさんが言ってたのより、ずっと大きい!」

「すごいねー。」

 喜ぶ子供達に微笑むとオルガ夫人も顔を出した。

「本当に立派ね。久しぶりに来ると、やっぱり圧巻ね。」

 王都育ちのテオルドは何とも懐かしそうな顔で外を見つめていたが、ニコライはうんざりした顔をしていた。

「ニコライは王都嫌い?」

 スコルはニコライの裾を引っ張ると心配そうに聞いた。

「いや、普段は何と言う事もないんだが今回は・・・。」

「タヴァロス侯爵令嬢か・・・。」

 意味ありげな顔をするテオルドに嫌そうな顔のオルガ夫人。
 そんな大人を見てスコルは首を傾げた。
 ニコライはスコルの頭に手を置いて弱々しい声で説明した。

「苦手な人に狙われているんだ。結婚してくれって。」

「えっ?!ニコライって結婚するの?」

 驚く子供達に必死に首を振るニコライ。

「しないさ!本当に嫌いなんだ。人を大事にしない人間は・・・。
 いつかは考えなければいけないが、今回の相手は絶対に御免被りたい。」

「ふーん。ごめんさないって言えば良いのに。」

 不思議そうな顔をする子供達にニコライは苦笑した。

「そう言えれば良いけど、簡単じゃないんだ。
 “貴方みたいな非道な人は嫌いです。”って知り合いのおじさんに言えるか?」

「言うよ!酷いって。
 だって、傷ついてる人がいるんでしょ?助けなきゃ!
 普通に言いづらいなら、虐めてるところをフン捕まえれば良いんだよ。」

 キラキラした瞳で言うスコルをニコライはギュッと抱きしめた。

「お前こそ、正義の騎士様だよ。
 そうだよな・・・。困ってる人がいるはずだよな。
 助けてやらないとな・・・。
 まぁ、今回はその為に来たんだけどな。」

「大丈夫だよ。ニコライの事は私達が守るからね!安心して、お嬢さまを振って良いよ。」

 ニッコリと親指を立てるパティに馬車の中は笑いに包まれたのであった。

 そんな中、1人の青年はそれどころではなかった。

「イオリ。もう少しだ。
 王都は目の前だぞ!」

 ヒューゴの声がけに弱々しくも微笑むSランク冒険者イオリは現れ始めた民家や畑に目をやり、安らぎを感じていたのだった。

「見えてからの王都までが長い・・・。」

 そう呟くイオリに心配そうなゼンであった。

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