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初めての旅 〜ダグスク〜
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ダグスクの市民の噂話に苛立っていた貴族はここにもいた。
マリノフ伯爵家では現在、使用人を含めて情報を調べている最中で慌ただしくなっていた。
「貴方!街に行くなとは、どう言う事なの?」
仕事部屋に奥方が怒る様に入ってきた。
楽しみにしていたドレスの受け取りにいけないと不機嫌らしい。
「今日は駄目だ。クラーケンの出現により街が混乱している。危険だ。」
「でも、もうクラーケンはいないのでしょう?
それなら・・・アチラに来てもらおうかしら。
来週はハール伯爵夫人にお茶会に呼ばれているの、ディアス子爵夫人やルコフ男爵夫人も参加されるんですって。
ほら、ミケルセン伯爵が最近拘束されたって言うじゃない?奥方様がお姿が見えにならないから心配で。」
「ハァー。」とマリノフ伯爵は溜息を吐いた。何も知らない女共は楽でいい・・・。
心配と言いながらも、どうぜ悪口を言い合うのだ。先週まであんなに仲良くしていたのに・・・。
「様子を見てから、呼びに行かせよう。
大人しく部屋に居なさい。」
「分かりましたわ。早めにお願いしますね。」
メイドを連れて出ていく妻の背に小声で悪態を吐きながら代わりに入ってきた執事に声をかけた。
「アレが煩い。後で衣装屋へ使いを出して呼び出せ。」
「承知しました。後ほど呼びに行かせましょう。
では報告を・・・。
噂の出所は分かりません。目撃者が多過ぎで自然発生した様です。」
「ふん!どうせ、何も分からず噂も鎮まるだろう。
雇った男達は騎士団が?」
「はい。即刻、拘束された様です。
しかし、奴らに何も教えていませんので証言など取れませんでしょう。」
「騎士団に探りを入れておけ。街を混乱させた不届き者を見に来たとでも言えばいいだろう。」
頭を下げて出て行った執事が時間も立たずに慌てて入ってきた。
「騎士団が参りました。旦那様に会いたいとか・・・。いかがしますか?」
「・・・・。大丈夫だ。通せ。」
甲冑を身につけ現れた騎士団は冷めた目を向けるマリノフ伯爵に会釈をした。
「ダグスク侯爵家騎士団、領主様の命によりマリノフ伯爵を拘束し屋敷を全て差し押さえさせて頂きます。
今すぐご同行願います。」
「何だと!」
挨拶も早々に伯爵の拘束に入り、屋敷に雪崩れ込む様に入ってきた騎士団。
喚くマリノフ伯爵を意に返さずに動いている。
「離せ!無礼者!騎士団如きが伯爵家当主に触るな!
何の罪で拘束だ!不当な扱いをして後々困るのはお前達だぞ!」
屋敷の中で悲鳴が聞こえた。
「キャー!!何者です!貴方!貴方!」
妻が騒いでいるのが耳障りだった。
「黙れ!今は忙しいのだ!お前の声など聞きたくない!」
「何ですって・・・。貴方!妻の私に何でことを・・・シクシクシク。」
妻と離されると屋敷の外に出され騎士団長レイナードの足元に転がされた。
「お前は!侯爵家の犬!無礼者!これを外せ!
冤罪などで私を失脚させられると思うなよ!」
ガシャンッ!!
レイナードは軽蔑した目で見下ろすとマリノフ伯爵の顔の側で剣を土にさした。
「証言は揃っている。言い逃れしても無駄だ。」
レイナードの視線の先には馬車に押し込まれているお馴染みの貴族達がマリノフ伯爵を睨みつけていた。
「なっ・・・。」
「因みに、王都にも連絡済みだ。
せいぜい味わっておくといい。貴族の称号に縋っていられるのも今だけだ。」
「なぜだ・・・。何故・・・。」
「アンタが先に裏切ったからでしょうが!1人だけ生き残れると思うなよ。」
「今までの仲間が切られてきたのを何度も見てきた。奴らと同じになるものか!」
「ミケルセン伯爵だったらまだしも!貴方に義理だてする理由はない!!」
同じ馬車に入れられるや、仲間だった貴族に罵声を浴びせられ戸惑うマリノフ伯爵は震えながら言った。
「何を言っている?私は何も言ってないし、裏切ってないぞ?」
「ハンっ!しらばっくれてくれるなよ。お前が我々を売ったと知っている!」
「そうだ!馬鹿にしやがって!」
「あのハンカチは信頼するものにしか渡さんだろう!」
言われた事を反芻する様に繰り返すとマリノフ伯爵は目を見開いた。
「ハンカチ・・・?あぁ・・・。
嵌められたのだ!奴らはそれを見せて私が裏切ったと見せかけたのだ!」
「騙されんぞ!」
「そうだ!全て話してやった!」
「ミケルセン伯爵もこれで救われまい!!」
一度疑心暗鬼になった貴族達は、最早一枚岩になる事などできなくなっていた。
騎士団が取り調べする建物に到着するまで馬車の中は罵声が飛び交っていた。
マリノフ伯爵家では現在、使用人を含めて情報を調べている最中で慌ただしくなっていた。
「貴方!街に行くなとは、どう言う事なの?」
仕事部屋に奥方が怒る様に入ってきた。
楽しみにしていたドレスの受け取りにいけないと不機嫌らしい。
「今日は駄目だ。クラーケンの出現により街が混乱している。危険だ。」
「でも、もうクラーケンはいないのでしょう?
それなら・・・アチラに来てもらおうかしら。
来週はハール伯爵夫人にお茶会に呼ばれているの、ディアス子爵夫人やルコフ男爵夫人も参加されるんですって。
ほら、ミケルセン伯爵が最近拘束されたって言うじゃない?奥方様がお姿が見えにならないから心配で。」
「ハァー。」とマリノフ伯爵は溜息を吐いた。何も知らない女共は楽でいい・・・。
心配と言いながらも、どうぜ悪口を言い合うのだ。先週まであんなに仲良くしていたのに・・・。
「様子を見てから、呼びに行かせよう。
大人しく部屋に居なさい。」
「分かりましたわ。早めにお願いしますね。」
メイドを連れて出ていく妻の背に小声で悪態を吐きながら代わりに入ってきた執事に声をかけた。
「アレが煩い。後で衣装屋へ使いを出して呼び出せ。」
「承知しました。後ほど呼びに行かせましょう。
では報告を・・・。
噂の出所は分かりません。目撃者が多過ぎで自然発生した様です。」
「ふん!どうせ、何も分からず噂も鎮まるだろう。
雇った男達は騎士団が?」
「はい。即刻、拘束された様です。
しかし、奴らに何も教えていませんので証言など取れませんでしょう。」
「騎士団に探りを入れておけ。街を混乱させた不届き者を見に来たとでも言えばいいだろう。」
頭を下げて出て行った執事が時間も立たずに慌てて入ってきた。
「騎士団が参りました。旦那様に会いたいとか・・・。いかがしますか?」
「・・・・。大丈夫だ。通せ。」
甲冑を身につけ現れた騎士団は冷めた目を向けるマリノフ伯爵に会釈をした。
「ダグスク侯爵家騎士団、領主様の命によりマリノフ伯爵を拘束し屋敷を全て差し押さえさせて頂きます。
今すぐご同行願います。」
「何だと!」
挨拶も早々に伯爵の拘束に入り、屋敷に雪崩れ込む様に入ってきた騎士団。
喚くマリノフ伯爵を意に返さずに動いている。
「離せ!無礼者!騎士団如きが伯爵家当主に触るな!
何の罪で拘束だ!不当な扱いをして後々困るのはお前達だぞ!」
屋敷の中で悲鳴が聞こえた。
「キャー!!何者です!貴方!貴方!」
妻が騒いでいるのが耳障りだった。
「黙れ!今は忙しいのだ!お前の声など聞きたくない!」
「何ですって・・・。貴方!妻の私に何でことを・・・シクシクシク。」
妻と離されると屋敷の外に出され騎士団長レイナードの足元に転がされた。
「お前は!侯爵家の犬!無礼者!これを外せ!
冤罪などで私を失脚させられると思うなよ!」
ガシャンッ!!
レイナードは軽蔑した目で見下ろすとマリノフ伯爵の顔の側で剣を土にさした。
「証言は揃っている。言い逃れしても無駄だ。」
レイナードの視線の先には馬車に押し込まれているお馴染みの貴族達がマリノフ伯爵を睨みつけていた。
「なっ・・・。」
「因みに、王都にも連絡済みだ。
せいぜい味わっておくといい。貴族の称号に縋っていられるのも今だけだ。」
「なぜだ・・・。何故・・・。」
「アンタが先に裏切ったからでしょうが!1人だけ生き残れると思うなよ。」
「今までの仲間が切られてきたのを何度も見てきた。奴らと同じになるものか!」
「ミケルセン伯爵だったらまだしも!貴方に義理だてする理由はない!!」
同じ馬車に入れられるや、仲間だった貴族に罵声を浴びせられ戸惑うマリノフ伯爵は震えながら言った。
「何を言っている?私は何も言ってないし、裏切ってないぞ?」
「ハンっ!しらばっくれてくれるなよ。お前が我々を売ったと知っている!」
「そうだ!馬鹿にしやがって!」
「あのハンカチは信頼するものにしか渡さんだろう!」
言われた事を反芻する様に繰り返すとマリノフ伯爵は目を見開いた。
「ハンカチ・・・?あぁ・・・。
嵌められたのだ!奴らはそれを見せて私が裏切ったと見せかけたのだ!」
「騙されんぞ!」
「そうだ!全て話してやった!」
「ミケルセン伯爵もこれで救われまい!!」
一度疑心暗鬼になった貴族達は、最早一枚岩になる事などできなくなっていた。
騎士団が取り調べする建物に到着するまで馬車の中は罵声が飛び交っていた。
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