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初めての旅 〜ダグスク〜
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エナばあちゃんの家はなんとも懐かしい匂いがした。
イオリ達がキョロキョロとしているとエナばあちゃんはケラケラ笑いながら手招きをした。
「とって食いはしないよ。遠慮せずに入っていおいで。」
イオリは奥に入ると会釈をした。
「はじめまして。冒険者をしていますイオリと言います。
突然の訪問を失礼します。
海産物の乾物を探していまして、グラトニーのカイさんとアクセルさんからエナさんなら心当たりがあるかもしれないと聞いてやってきました。」
丁寧なイオリの挨拶にエナはニッコリ頷いた。
「ここいらではエナばあちゃんって呼ばれてるから、そう呼んでおくれ。
海産物の乾物?若いのに変なものを欲しがるね。こんなのかい?」
エナばあちゃんは小さなイカを開いて干からびた物を持ち上げた。
「スルメ!!そうです!そういうのです。
昆布のとか魚のとかないですか?」
テンションの上がるイオリにエナばあちゃんは嬉しそうに箱を開けていった。
「昆布あるじゃないですか!!
これは・・・ヒジキ?!海苔は・・・流石に一枚のはないか。
でも、揉み海苔があるー!!」
「こっちも見てご覧よ。」
「干し海老?えー!!煮干しも!!
すごいですね。これはエナばあちゃんが全て作っているんですか?」
「そうだよ。先祖代々が作ってきたんだ。
普通の人は食べないけどね。私は好きだよ。
時々、従魔の食糧とかに買っていく者もいるしね。」
「そんな!美味しいのに・・・。
これ作るのにどれだけ、時間と労力がかかるか・・・。」
そんなイオリを不思議そうにエナは見つめた。
「驚いた。作り方を知っているのかい?」
「いえいえ。
なんとなく、干す事までは分かりますが工程は知らないんです。
だから、探していました。」
「使い方は分かるのかい?」
「まぁ、使う事なら・・・。」
「ヒジキも?干し海老もかい??それならアンタはこれの使い方を知ってるかい?」
奥の方から取り出した木箱の中にはイオリが求めてやまない例の物が入っていた。
「か・・・鰹節・・・。」
感動のあまり震えて声の出ないイオリの脇から、スコルとパティが覗き込み鰹節を手にとり匂いを嗅いだ。
「いい匂いがするけど、硬くて食べ物ではないね。」
「うん。かじったら歯が壊れちゃいそう。」
「私もね。その食べ方が分からないんだよ。
作り方だけは伝えられているんだが、硬すぎて砕いたのを煮込むしかやり方がない。
アンタはこれの食べ方を知っているのかい?」
目を見開き、自分の世界から戻ってこないイオリのお尻をゼンがトントンと叩いた。
「あぁ!ごめん!あまりの感動に思考が停止していた。
食べ方ですか?知ってますよ!
あのー。これと一緒に伝わった器具とかありませんか?」
「器具?
ふむ・・・あれかね。」
そう呟くとエナばあちゃんはもっと奥に探しに行った。
「イオリ。知ってるのか?これの食べ方。
木みたいなのに、本当に硬いぞ?食えたもんじゃない。」
「まぁ、まるっと食べる物ではないからね。」
ニコニコと振り返るイオリに家族は不安な思いをした。
「あったよ。これかね?」
エナばあちゃんが持っていたのは、まさしく鰹節を削る大工のカンナのような箱だった。
「それ!!それです。削って食べるんですよ。」
「削る?!それじゃ、ペラッペラを食べるのかい?」
「使い方です。見せてください。」
イオリは削り器を手に取ると長年の放置による歪みを確認して、腰バックからトンカチを取り出し調整をした。
そしてニナに洗浄魔法をかけてもらうとエナばあちゃんに向かってニヤリとした。
「さぁ!やりましょう!!鰹節の使い方を!」
ゼンをはじめとした家族達はイオリのテンションに苦笑しながらも
美味しい物を楽しみに待つ事にした。
イオリ達がキョロキョロとしているとエナばあちゃんはケラケラ笑いながら手招きをした。
「とって食いはしないよ。遠慮せずに入っていおいで。」
イオリは奥に入ると会釈をした。
「はじめまして。冒険者をしていますイオリと言います。
突然の訪問を失礼します。
海産物の乾物を探していまして、グラトニーのカイさんとアクセルさんからエナさんなら心当たりがあるかもしれないと聞いてやってきました。」
丁寧なイオリの挨拶にエナはニッコリ頷いた。
「ここいらではエナばあちゃんって呼ばれてるから、そう呼んでおくれ。
海産物の乾物?若いのに変なものを欲しがるね。こんなのかい?」
エナばあちゃんは小さなイカを開いて干からびた物を持ち上げた。
「スルメ!!そうです!そういうのです。
昆布のとか魚のとかないですか?」
テンションの上がるイオリにエナばあちゃんは嬉しそうに箱を開けていった。
「昆布あるじゃないですか!!
これは・・・ヒジキ?!海苔は・・・流石に一枚のはないか。
でも、揉み海苔があるー!!」
「こっちも見てご覧よ。」
「干し海老?えー!!煮干しも!!
すごいですね。これはエナばあちゃんが全て作っているんですか?」
「そうだよ。先祖代々が作ってきたんだ。
普通の人は食べないけどね。私は好きだよ。
時々、従魔の食糧とかに買っていく者もいるしね。」
「そんな!美味しいのに・・・。
これ作るのにどれだけ、時間と労力がかかるか・・・。」
そんなイオリを不思議そうにエナは見つめた。
「驚いた。作り方を知っているのかい?」
「いえいえ。
なんとなく、干す事までは分かりますが工程は知らないんです。
だから、探していました。」
「使い方は分かるのかい?」
「まぁ、使う事なら・・・。」
「ヒジキも?干し海老もかい??それならアンタはこれの使い方を知ってるかい?」
奥の方から取り出した木箱の中にはイオリが求めてやまない例の物が入っていた。
「か・・・鰹節・・・。」
感動のあまり震えて声の出ないイオリの脇から、スコルとパティが覗き込み鰹節を手にとり匂いを嗅いだ。
「いい匂いがするけど、硬くて食べ物ではないね。」
「うん。かじったら歯が壊れちゃいそう。」
「私もね。その食べ方が分からないんだよ。
作り方だけは伝えられているんだが、硬すぎて砕いたのを煮込むしかやり方がない。
アンタはこれの食べ方を知っているのかい?」
目を見開き、自分の世界から戻ってこないイオリのお尻をゼンがトントンと叩いた。
「あぁ!ごめん!あまりの感動に思考が停止していた。
食べ方ですか?知ってますよ!
あのー。これと一緒に伝わった器具とかありませんか?」
「器具?
ふむ・・・あれかね。」
そう呟くとエナばあちゃんはもっと奥に探しに行った。
「イオリ。知ってるのか?これの食べ方。
木みたいなのに、本当に硬いぞ?食えたもんじゃない。」
「まぁ、まるっと食べる物ではないからね。」
ニコニコと振り返るイオリに家族は不安な思いをした。
「あったよ。これかね?」
エナばあちゃんが持っていたのは、まさしく鰹節を削る大工のカンナのような箱だった。
「それ!!それです。削って食べるんですよ。」
「削る?!それじゃ、ペラッペラを食べるのかい?」
「使い方です。見せてください。」
イオリは削り器を手に取ると長年の放置による歪みを確認して、腰バックからトンカチを取り出し調整をした。
そしてニナに洗浄魔法をかけてもらうとエナばあちゃんに向かってニヤリとした。
「さぁ!やりましょう!!鰹節の使い方を!」
ゼンをはじめとした家族達はイオリのテンションに苦笑しながらも
美味しい物を楽しみに待つ事にした。
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