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初めての旅 〜アンティティラ〜

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「なぁ・・・。なぁって。この馬車おかしくないか?
 馬車って、こんな揺れないもんか??」


 しばらく走っているとヒューゴが声をかけてきた。

「中古の馬車を自分でカスタマイズしたんです。
 揺れないでしょう?
 俺が普通の馬車に弱いんです。
 酔うんですよ。 
 だから、必死に考えましたよー。

 馬車自体はアウラが引っ張ってくれてるんで、殆ど操縦も必要ないし子供でもここに座れます。

 いい感じでしょ?」

 《はいっ。魔法かけてます》と返ってくるかと思えば自分でカスタマイズ?
 ヒューゴの反応を分かっていたのか、イオリは後ろを向いてニヤリとした。

「全部、魔法じゃ面白くないでしょ?」

 あぁ・・・俺の主はこーゆー奴だった。

 ヒューゴが苦笑していると、向こうから血走った目のギガバイソンが土煙を上げながら突進してくるのが見えた。

「おい!アイツこっちくるぞ!!」

 ヒューゴが大剣を出そうとするとイオリが止めた。

「今、馬車止めたくないんでこのまま仕留めます。
 ゼン!」

『了解!』

 荷台で子供達とお菓子を食べていたゼンはイオリの声に反応して後から飛び出した。

「ヒューゴさん御者席、交代してもらえますか?」

「ああ・・・。」

 戸惑いながらも走行中の馬車の上で運転席を交代した。

「アウラ!そのまま道沿いに真っ直ぐね。」

「ヒヒッン!」

 任せて!とアウラは頭を上下に動かし頷いた。

「よし!」

 イオリは腰バックからスナイパーライフルを出すと静かに構えた。



 ヒューゴは初めて見た知らない武器を見て何事かと目を見開いた。
 目の前で黒い筒を構えるイオリに目を奪われたのである。

 ドォンっ!ドォン!

 二発発射させると突進してきていたギガバイソンが頭から反転するように転げ倒れた。

 ドゴ!ズササー!

 倒れたバイソンの首元をゼンが噛みつき引きずって戻ってくる。

「お疲れ!腰バックにしまっちゃうよ。
 後で解体しておこう。」

「パティやる!!」

「頼むね。」

 馬車の速度に合わせて走るとゼンは後ろから飛び乗ってきた。

「あー。ゼンちゃん。足真っ黒ー。」

 パティがゼンの足を払ってあげているとニナがハイハイで近づき洗浄魔法でゼンの足を綺麗にし、汚れたマットも掃除した。

「ニナ!すごーい!もう綺麗だよ!!
 ありがとう。」

 感動するパティはニナに抱きついた。
 ゼンもスリスリするとニナはクスクスと笑った。

「コレで、いつでもゼンちゃん外で走り回れるね。」

『確かに!』

 子供達が楽しんでいるのを見て微笑むイオリにヒューゴは聞いた。

「お前の武器って、何処まで届くんだ?」

「んー。あの山のテッペンの木見えます?」

「ああ・・・。」

 イオリは遠くに見える山を指した。
 その山のテッペンは目視でギリギリとわかるくらいだ。

「あそこにとまってる、黒鷲は狙えますね。」

「黒鷲・・・。見えるのか?」

「まぁ、見えるのと狙うのとは違いますけど。」

「確かにお前の戦い方は人と組めないな。
 理解した。子供達の守護は俺に任せろ。」

「よろしくお願いします。
 あっ!接近戦用の銃もありますよ。」

「だから、お前は!
 小出しにすんな!心臓が持たねーだろーが!!」

 ニコッと笑うイオリにヒューゴは苦笑した。

「運転、代わりましょう。」

「いや、このままでいい。
 アウラが頑張ってくれるから俺は必要ないがな。
 頼むなアウラ。」

「ヒンっ!」

 
 ギガバイソンを仕留めた馬車は街道を一直線に進んでいった。
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