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初めての旅
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「ようこそ!ここがホワイトキャビンです。
今日はどうしたんです?」
両手を広げて立ち上がったバートにイオリは会釈をした。
「少し旅に出ようと思いまして、ご挨拶に来ました。」
「何ですって?それは大変だ。ブルーノ!
叔父上とハンスを呼んでくれ!」
「かしこまりました。」
バートはイオリ達をソファーに座らせると自分のテーブルを片付け始めた。
「散らかしててスミマセン。」
「いいえ。突然お邪魔したのはこちらなんで気にしないでください。」
そうこうしていると、アーベルが男性を連れてやってきた。
「イオリさん。よくいらっしゃった。
旅に出るとか?」
「はい。お忙しいところにお邪魔します。」
「いやいや、来てくれて嬉しい。気にせずにゆっくりして行ってください。」
アーベルはバートに頷き自身もソファーに座った。
「紹介しましょう。
先程、案内してきたのはブルーノです。グラトニー商会ポーレット支部を任された男です。
そしてハンスは俺と共にホワイトキャビンを運営してくれる信頼できる仲間です。」
ブルーノさんは何処ぞの貴族でも良い様な威厳がある男性で、ハンスさんは執事さんの様に隙のない佇まいだった。
2人はイオリに頭を下げてた。
「ご挨拶遅れました。ブルーノと申します。
イオリ様におかれましては初めてのお目見え嬉しく思います。」
「ハンスです。微力ながらお力になれる様に精進したします。」
しっかりと頭を下げて挨拶をする2人にイオリは慌てて頭を下げた。
「わぁぁぁ!イオリです。
宜しくお願いします。こちらは従魔のゼンとアウラ、双子のスコルとパティ、そしてナギです。
お世話になってます。」
イオリの慌てぶりに子供達を始めアーベルとバートも笑った。
「本当にお若くしてSランク冒険者になられたとは思えない謙虚なお方です。」
ブルーノとハンスもニッコリと笑った。
「そうだ!イオリさん。Sランク昇格おめでとうございます。
先の活躍が評価されたと聞きました。」
バートはアーベルの隣に座り嬉しそうに手を叩いた。
「何だか大事になりそうで困ってます。」
苦笑いするイオリにアーベルは微笑みながら頷き、ハンスが入れた紅茶に口をつけた。
「ハハハ。まあ、貰える物は貰っておくと良い。
今回貰うSランクの称号は貴方だけじゃなく家族も守る力になるはずだ。」
アーベルはイオリに語ると子供達に目をやった。
子供達は紅茶に砂糖をタップリ入れてフーフーしながら飲んでいた。
「今回のラモンの件も我々が調べを進めても、どの角度からでもミズカルズに行きつく。
どんな物でも守りは手に入れるべきだ。
商人は基本、買い手の事情など気にせず商売するが渡ってはいけない橋がある。
絶対にだ。
人の命を軽々しく利用してはいけないんだ。
あの者たちは、その橋を自ら渡りおった。いつかは、こうなる運命だったのだ。」
アーベルは怒っているような悲しいような顔をした。
「“実る程、頭を垂れる稲穂かな”
俺のいたところの言葉です。
立派な人ほど、謙虚な姿であると言う意味ですが実際に人の欲の前には難しいのかもしれません。」
「良い言葉だ。イオリさんも体現しているのだね。」
「どうでしょう。
そうであればと思っています。
別の言葉で“ノブレス・オブリッジ”
財力・権力・地位を保持するには義務が伴うとも言われています。」
アーベルは首を傾け興味深そうに聞いた。
「法律かね?」
「いいえ。法律ではなく、こうであれと言う心得の一つです。
高貴な者は弱者を守り助けろという教えですね。
だから、エルノールさんから聞いたエルフ迫害をやめさせた初代アースガイル王や使用人さんや街の人に優しいポーレット公爵家の皆さんが好きなんだと思います。」
「なるほど・・・。
国や地域が違えど皆そうあるべきだな。」
イオリはニコニコとして頷いた。
「皆そっちの方が楽しいでしょう?」
今日はどうしたんです?」
両手を広げて立ち上がったバートにイオリは会釈をした。
「少し旅に出ようと思いまして、ご挨拶に来ました。」
「何ですって?それは大変だ。ブルーノ!
叔父上とハンスを呼んでくれ!」
「かしこまりました。」
バートはイオリ達をソファーに座らせると自分のテーブルを片付け始めた。
「散らかしててスミマセン。」
「いいえ。突然お邪魔したのはこちらなんで気にしないでください。」
そうこうしていると、アーベルが男性を連れてやってきた。
「イオリさん。よくいらっしゃった。
旅に出るとか?」
「はい。お忙しいところにお邪魔します。」
「いやいや、来てくれて嬉しい。気にせずにゆっくりして行ってください。」
アーベルはバートに頷き自身もソファーに座った。
「紹介しましょう。
先程、案内してきたのはブルーノです。グラトニー商会ポーレット支部を任された男です。
そしてハンスは俺と共にホワイトキャビンを運営してくれる信頼できる仲間です。」
ブルーノさんは何処ぞの貴族でも良い様な威厳がある男性で、ハンスさんは執事さんの様に隙のない佇まいだった。
2人はイオリに頭を下げてた。
「ご挨拶遅れました。ブルーノと申します。
イオリ様におかれましては初めてのお目見え嬉しく思います。」
「ハンスです。微力ながらお力になれる様に精進したします。」
しっかりと頭を下げて挨拶をする2人にイオリは慌てて頭を下げた。
「わぁぁぁ!イオリです。
宜しくお願いします。こちらは従魔のゼンとアウラ、双子のスコルとパティ、そしてナギです。
お世話になってます。」
イオリの慌てぶりに子供達を始めアーベルとバートも笑った。
「本当にお若くしてSランク冒険者になられたとは思えない謙虚なお方です。」
ブルーノとハンスもニッコリと笑った。
「そうだ!イオリさん。Sランク昇格おめでとうございます。
先の活躍が評価されたと聞きました。」
バートはアーベルの隣に座り嬉しそうに手を叩いた。
「何だか大事になりそうで困ってます。」
苦笑いするイオリにアーベルは微笑みながら頷き、ハンスが入れた紅茶に口をつけた。
「ハハハ。まあ、貰える物は貰っておくと良い。
今回貰うSランクの称号は貴方だけじゃなく家族も守る力になるはずだ。」
アーベルはイオリに語ると子供達に目をやった。
子供達は紅茶に砂糖をタップリ入れてフーフーしながら飲んでいた。
「今回のラモンの件も我々が調べを進めても、どの角度からでもミズカルズに行きつく。
どんな物でも守りは手に入れるべきだ。
商人は基本、買い手の事情など気にせず商売するが渡ってはいけない橋がある。
絶対にだ。
人の命を軽々しく利用してはいけないんだ。
あの者たちは、その橋を自ら渡りおった。いつかは、こうなる運命だったのだ。」
アーベルは怒っているような悲しいような顔をした。
「“実る程、頭を垂れる稲穂かな”
俺のいたところの言葉です。
立派な人ほど、謙虚な姿であると言う意味ですが実際に人の欲の前には難しいのかもしれません。」
「良い言葉だ。イオリさんも体現しているのだね。」
「どうでしょう。
そうであればと思っています。
別の言葉で“ノブレス・オブリッジ”
財力・権力・地位を保持するには義務が伴うとも言われています。」
アーベルは首を傾け興味深そうに聞いた。
「法律かね?」
「いいえ。法律ではなく、こうであれと言う心得の一つです。
高貴な者は弱者を守り助けろという教えですね。
だから、エルノールさんから聞いたエルフ迫害をやめさせた初代アースガイル王や使用人さんや街の人に優しいポーレット公爵家の皆さんが好きなんだと思います。」
「なるほど・・・。
国や地域が違えど皆そうあるべきだな。」
イオリはニコニコとして頷いた。
「皆そっちの方が楽しいでしょう?」
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