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美食の旦那さん

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「はぁぁぁ?
 何でまた、そんなメンド・・・。」

「お前!今、面倒って言おうとしたろう!?
 ダメだからな!決定事項だからな。」

 ギルマスは呆れた様にイオリを睨んだ。

「「イオリ、Sランク?スゴーイ!」」
「スゴーイ!」

 子供達が顔を真っ赤にしてイオリに抱きついた。
 イオリは困ったように眉尻を下げるとギルマスに聞いた。

「一体、何でそんな事に?」

 ギルマスは腕を組んで胸を張って答えた。

「Sランク冒険者にはな、強いだけでもなれないんだ。
 貴族とギルドが認めた人格も伴う人物という規定がある。
 ポーレット公爵が認めギルドマスターの俺が決めた。
 
 大体!あんな活躍しといて昇格させないなんて他の冒険者に示しがつかないし、周りが怒りだすぞ。」

 ギルマス以外がニコニコと頷いていた。

「はぁ・・・。
  Sランクになると何か変わるんですか?」

 深いため息をつきイオリが続きを求めるとギルマスは益々、熱が入った。

「それは、お前!先ずは名誉だろ。
 国王にも会えるぞ!
 今以上に活躍すれば爵位が貰えるかもしれないし領地が貰えるかもしれな・・・。

 ・・・お前本当に嫌そうな顔するな。」

 気づかぬうちに顔が歪んでいたらしい。
 ギルマスが呆れたような顔で肩の力を落とし、公爵・ノア・エルノールは苦笑していた。
 ニコライとヴァルト、そしてカーバンクルの番は腹を抱えて笑い、子供達はよく分からないのかキョトンとしていた。

 それらを困った顔で見ていたイオリをゼンは嬉しそうに見つめていた。


「残念だがな、お前のSランク昇格は決定なの!」

「はぁ・・・。分かりましたよ。」

 ギルマスが最後通告を突きつける中、イオリは新たなハーブーティーを入れながら諦めを悟った。

「そろそろ、旅に出ようと思ってたのに・・・。」

 イオリがそう呟くとエルノールがすかさずに言った。

「それなら、尚更必要になりますよ。
 イオリさんはポーレットにいるから身分の証明に苦労しませんが、他の街へ行けば冒険者ならランクが物を言います。
 持っていて損はないですよ。」

 それなら貰っておいても良いかと考えるイオリに公爵も付け加えた。

「イオリはあくまでもポーレット公爵専属冒険者だ。
 使命依頼があれば私に連絡が来る。
 自由は保証できるぞ。」

 フンフンと頷き、少しづつ納得してしまっているイオリに、カーバンクルの番は体を震わせ笑っていた。


「うお!何だこれ!辛ぇぇぇ!」

 イオリはニヤっとして、バーブティーを飲んだギルマスを見た。

「ジンジャーティーのジンジャー増々です。」

「お前、ワザとやったな!絶対にSランクな!」

 ギルマスの部屋は笑いに包まれた。


 暫くしてギルマスの部屋から出ると、先ほどまでの煩さが嘘のようにフロア全体が静かで人も居なかった。

 階段を降りてラーラに声をかけた。

「皆さんどうしたんですか?」

 ラーラを含め受付の人達はニッコリとしていた。

「皆さん。大きなゴミ出しをお願いしたら快く引き受けて下さいまして出払っています。
 今なら換金所も空いてますよ。」

「へー。そうなんですか。
 それじゃ、また。
 皆んな行こうか。」

 子供達と換金所に行こうとしたイオリだが酒場エリアのカウンターに立っていた親父に腕輪を出しニッコリした。

「皆さんにお礼で一杯づつ差し上げて下さい。」

「いいのか?ボンクラ共だぞ?」

「俺、臨時収入あるんで。」

 イオリと親父はニヤリと笑った。

「そうかい。アイツらも喜ぶだろうよ。」

 金貨10枚ほど払い。イオリは改めて子供達と換金所へ向かった。
 その後姿を親父が微笑んで見ているのをラーラは知っていた。

 そしてラーラはポーレット冒険者ギルドで誕生した新たなSランク冒険者の為のカードを発行手続きを嬉しそうに始めた。
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