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美食の旦那さん

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 子供達のノックでギルマスの部屋に入ると疲れた顔をしたギルマスが1人掛けソファーに座っていた。

「おぅ!来たか!こっち来い。」
 
 その他のソファーにはサブマスのエルノール。
 公爵であるテオルド・ニコライ・ヴァルトにそれぞれの従魔と従者がいた。

「お疲れですか?」
 
 イオリは笑いながら脇にあったポットでハーブティーを淹れた。
 その間に子供達が腰バックから各々お菓子を出して大人達に薦めると公爵を筆頭に微笑んで礼を言った。
 ナギに差し出されたクッキーをエルノールは一つ摘んでニッコリ頭を撫でた。

「どうぞ。疲れた体に良いですよ。」
 
 レモンバームとミントのハーブティーを置いていった。

「悪いな。」

 ギルマスは1口飲むと顔を叩き無理やり頭を覚ました。

「さぁ、イオリ。報告してくれ。
 イオリが見たもの、知った事を・・・。」

「あの鹿の魔獣はパライソの森の主であるアマメです。
 自身の森で人間達に襲われ息子を攫われ己も魔の森に飛ばされました。
 息子を探すうちに核が闇に染まり始め暴走しました。」

 イオリは淡々と伝えた。

「まさか原獣種だったとは・・・。」

 ギルマスは頭を抱えた。

「原獣種?」

「そうだ。
 全ての生命体の始まりのモノ。
 すでに幻とされ、絶対神と共に信仰の対象だ。」

「その襲った人間達の事を調べなければいけませんね。」

 エルノールが厳しい顔をしているとニコライが頷いた。

「現在、エドガーとフランがラモンに尋問中だ。」

「こんな事をしでかす奴らだ。
 ラモンには説明してないだろう。」

「そうであろうな・・・。
 にしても、隙があろうがアマメを倒し転送させる。
 何人の魔法師を使っているか知らぬが面倒な者共だ。」

 ギルマスと公爵も顔を歪めた。
 黙って聞いていたイオリにルチアは見上げながら尋ねた。

『どうしました?イオリ?』

「うーん。
 何点か気になっている事があるんですけど考えがまとまらなくて。」

 バンデとクロムスとアウラと遊ぶ子供達に視線を向けイオリが頬を掻いた。

「気にせず言ってみるが良い。」

 公爵は真っ直ぐにイオリを見ていた。

「・・・。以前、テオさんが言ってました。
 公爵家が王室と近しいから色んな意味で狙われるって。

 もし、それが今回の目的でポーレットを狙い魔の森でスタンビートを起こす事。
 これは理に叶っていると思うんです。

 それなら何でアマメなんですか?
 アマメが原獣種だと言うのなら倒す事自体困難なはずです。
 むしろ、レッドボアを数十頭、闇落ちさせた方が楽です。」

 イオリの言葉に大人達は唸った。

「闇トロール事件の人間と同じだとすれば・・・。
 まぁ、こんな考えをする人が何人もいるとは思いませんけど・・・。

 闇トロールは実験でアマメが本命だとしたら、相手の計画としてアマメは最終手段だったと思うんです。

 ポーレットがアマメに壊されれば、それで良いし何らかの理由で原獣種を倒したらポーレットが世間でどう言われるか分かりません。

 自分で言うのも何ですが、アマメが人間と・・・。
 ポーレット公爵と和解し、この地を去った事って相手にとって予想外だと思うんですよ。」

「なるほど・・・。」

 公爵は優しい目を子供達と遊ぶバンデに向けた。

「俺の想像通りだとしたら、今回の作戦に相手も随分と犠牲を出していると思います。
 次の一手を打ってくるには時間がかかるんじゃないかと・・・。」

 一息に説明するとイオリはハーブティーを口にした。

「私もおおむね同意します。」

 エルノールが何度も頷いた。

「概ねとは?」
 
 ギルマスが続きを促すとエルノールはニッコリ笑った。

「次の一手を打つのはこちらだという事です。
 やられるばかりではいけませんよ。」

「確かにな。」

 ニコライ・ヴァルト兄弟もニヤリとした。

「相手の事をどう思う?」

 公爵が皆を見渡した。

「顔も出さず裏から操る嫌な奴。」

 そう言うヴァルトにデニとルチアはクスクスと笑った。

「イオリはどう思う?」

 ニコライがイオリに話を振ってきた。

「そうですねー。
 まずはアマメが街を襲う事を知っていたのだから、ポーレットに居なかった人ですね。
 現に知らされていなかったラモン子爵は慌てていたし、子息は逃げたかっていました。

 次にテオさんが嫌いで王族に取り入りたいか倒したい人ですね。
 獲物を狩るなら回りから準備しろって爺ちゃん・・・祖父が言ってました。」

 テオは腕を組んで頷いた。

「貴重な意見だな。その手の人間など多数いそうだが国内なら何人か当たりをつけて調べを進めよう。
 それはそうと・・・。」

 公爵はニッコリ笑顔をギルマスに向けた。

「それはそうとギルマス。例の話をイオリに・・・。」

「そうですね。分かりました。
 イオリ。お前今日からSランクな。」

「は?」

 部屋にいた大人達がニッコリとイオリを見ていた。

「はぁぁぁ?」
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