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美食の旦那さん

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 翌日の早朝には子供達はパッチリと目を覚ましイオリを起こした。
 1人眠いイオリはブツブツと言いながら身支度を整え子供達について行った。

「「「おはよーございます!」」」

 元気に返事する子供達の視線の先には乳屋の家族が大量の牛に餌をやっているところだった。

 挨拶を済ますと子供達は柵を超えて家族の側に行った。
 大きな牛達が朝ごはんにありつこうと餌箱に首を突っ込んでいる。

「牧草以外にもあげているんですね。」

 イオリは餌箱に手を入れて掴んでみた。すると牛は自分のだとばかりにイオリの手を舐め始めた。

「ええ。麦とか米の籾殻とかタダでもらってくるんですよ。
 金に余裕のある時は身もあげます。」

 スヴェンがイオリに説明してるとミラが子供達に手招きをした。

「子供達おいで~!」

 双子はナギの手をとりミラの後について行く。
 イオリはスヴェンに聞きながら歩き出した。

「なんです?」

「牛の子供です。もう少ししたら大きくなっちまうんで、可愛いギリギリですね。」

「俺も見たいです!」

「ハハハ。行きましょう。旦那は可愛い物好きですか?」

 顔を赤くするイオリだが子牛にはドキドキした。

 小屋の中は藁が引き詰められており真ん中に大きな牛が数頭いて牛のお腹に子牛が食らいついていた。

 双子とナギは子牛を優しくなでて子牛が一生懸命に乳を飲んでいるのを見ていた。

「もう少し前に来てたら、もっと小さかったんだけどな。
 また見においで。」

 双子はスヴェンに笑顔で頷いて見せた。

「ナギ達が乳飲んだら子牛のなくなっちゃう?」

 ナギが悲しそうにスヴェンに目線を向けるとスヴェンは笑って首を横にふった。

「見てごらん。牛ってこんなに大きいだろう?
 だから、子牛も飲みきれないんだ。それでも、母牛は乳が出てしまうからお腹が重たくなっちゃう。
 俺達はそれを分けてもらっているんだよ。」

「牛さんは凄いねー。」

 ナギは納得するとニッコリ頷き子牛を撫でた。

「見せてくれて有難うございます。
 子供達は大事に乳を飲むと思います。」

 ミラは嬉しそうに頷いた。

 朝のお仕事を終えて乳屋の家族とサンドイッチで朝食をとっていると、ニコライ達とバートが起きてきた。

「皆さん早いですね。」

 バートは欠伸を隠そうとせずに椅子に座りイオリの差し出すカップを受け取り飲んだ。

「うわぁ!なんですかこれ??」

 クスクス笑う子供達に構わず食べなさいと言い。イオリはバートにサンドイッチを差し出した。

「ジンジャーティーです。
 潰したジンジャーをハチミツで漬けておいたんでお湯で割ってみました。
 少し辛いでしょうけど目覚ましにはいいでしょう?
 体もあったまるしね。」

 「ジンジャーティー・・・。
 ハチミツじゃ流通はむづかしいか。」

 一気に商売の頭になったバートに苦笑しイオリはニコライ達にも差し出した。

「俺達は飲み慣れてるからな・・・。
 うん、美味い。
 最近、コック達がイオリ料理にハマって食卓に出してくるんだ。」

 サンドイッチを食べながら、帰路の話になった。
 たった1日なのが寂しいが、また来る事にしようと子供達を納得させた。

 お腹いっぱいに食べると、それぞれがテントを片付け始め、イオリ達はテーブルや椅子、焚き火などを片付けていった。

 その間には、バートは自分の馬車に樽を8個乗せ動かない様に縛っていった。

「それじゃあ、昨日の打ち合わせ通り商業ギルドに提出します。
 ホワイトキャビンの最初の商品は砂糖と牛乳です。
 お互い頑張りましょう。」

 バートは乳屋の家族に挨拶した。
 ニコライも人材や土地の事などを話し始め子供達もこれが最後だと奥さんやミラに抱きついた。

 イオリは腰バックから大量のクッキーを出した。来る前に公爵家のコックと作ってきたのだ。

「これを、働いてる皆さんでどうぞ。
 小麦と砂糖の他に使われているのは皆さんの乳です。
 バターにして入っていたり、直接に混ぜたりしています。
 恐らく、こう言うのが貴族の口に入ってやがて一般にも流通するのだと思います。
 皆さんが何を作っているのかを分かって欲しくて作りました。
 召し上がってください。
 俺はここから何もできないけど、皆さんの乳が大好きです。」

 そう言うイオリに乳屋をはじめ従業員は涙した。
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