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2 フサフサの犬耳が、どうやらお気に召したらしい。
フサフサの犬耳が、どうやらお気に召したらしい。5
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諦めの境地でタロットが手足を投げ出して座ると、耳にそっとモネの手が伸ばされてきた。
最初は撫でるように、そっと。
タロットが黙っていると、俺の了解を得たと解釈したらしい。
犬耳の感触を確かめるように、ファサファサとモネが遠慮なく触りだした。
「ふわふわだぁ~」
モネからなにやら楽しそうな嬉しそうな、歓喜の声が上がる。
「……耳元で騒ぐなら、その手を引っ剥がすぞ?」
「あっごめんなさい、つい。でもふわふわですね。うーん、欲しいです。黒髪に黒耳がまたいいですねぇ」
タロットが苦情を口にしたからか、耳元で大声を上げることはなくなった。
ただ、モネの手がタロットの耳から離れる気配はない。
「もういいか?」
「もう少しお願いします!」
途中「そろそろ止めてほしいな」的なジャブを打つが効果なし。
なにがそんなに気に入ったのかわからないが、モネは飽きることなくタロットの耳を触り続けていた。
(いい加減、くすぐったくなったきたな……)
そんなタロットの胸中などしるよしもなく、モネは犬耳に夢中になっているようだった。
「……そろそろ、終わってもらっていい?」
物足りない顔のモネにタロットは「おしまい」と宣言し、いまだに耳の位置にいるモネの手をつかんで耳から遠ざける。
やや不満そうな表情をされても、タロットは気にしないことにした。そろそろくすぐったかったし、先を急ぎたいのもある。
「ほら、行くぞ」
さっさとタロットが歩き出してしまえば、大人しくモネはタロットの後についてきた。
けれど、じろじろとした視線を後頭部に感じ、まさかと思いチラリとモネの様子を伺う。
懸念した通り、モネの目線は前や地面ではなく、タロットの犬耳に向けられていた。
何とも幸せそうな溜め息をつき、モネの手が何かを触るようにもぎゅもぎゅと空気を掴む。
(こいつ、余力がありそうだな)
隙あらば触ろうとしているのがありありと見て取れる様から、タロットはそう判断した。
意地悪とかではないとちょっと言い訳をしつつ、モネに断らずタロットは少しだけ歩く速度を上げたのだ。
最初は撫でるように、そっと。
タロットが黙っていると、俺の了解を得たと解釈したらしい。
犬耳の感触を確かめるように、ファサファサとモネが遠慮なく触りだした。
「ふわふわだぁ~」
モネからなにやら楽しそうな嬉しそうな、歓喜の声が上がる。
「……耳元で騒ぐなら、その手を引っ剥がすぞ?」
「あっごめんなさい、つい。でもふわふわですね。うーん、欲しいです。黒髪に黒耳がまたいいですねぇ」
タロットが苦情を口にしたからか、耳元で大声を上げることはなくなった。
ただ、モネの手がタロットの耳から離れる気配はない。
「もういいか?」
「もう少しお願いします!」
途中「そろそろ止めてほしいな」的なジャブを打つが効果なし。
なにがそんなに気に入ったのかわからないが、モネは飽きることなくタロットの耳を触り続けていた。
(いい加減、くすぐったくなったきたな……)
そんなタロットの胸中などしるよしもなく、モネは犬耳に夢中になっているようだった。
「……そろそろ、終わってもらっていい?」
物足りない顔のモネにタロットは「おしまい」と宣言し、いまだに耳の位置にいるモネの手をつかんで耳から遠ざける。
やや不満そうな表情をされても、タロットは気にしないことにした。そろそろくすぐったかったし、先を急ぎたいのもある。
「ほら、行くぞ」
さっさとタロットが歩き出してしまえば、大人しくモネはタロットの後についてきた。
けれど、じろじろとした視線を後頭部に感じ、まさかと思いチラリとモネの様子を伺う。
懸念した通り、モネの目線は前や地面ではなく、タロットの犬耳に向けられていた。
何とも幸せそうな溜め息をつき、モネの手が何かを触るようにもぎゅもぎゅと空気を掴む。
(こいつ、余力がありそうだな)
隙あらば触ろうとしているのがありありと見て取れる様から、タロットはそう判断した。
意地悪とかではないとちょっと言い訳をしつつ、モネに断らずタロットは少しだけ歩く速度を上げたのだ。
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