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1 家の扉を開けると、そこには少女が倒れていた。

家の扉を開けると、そこには少女が倒れていた。8

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「出発ね」


モネが発見された翌日。すでに準備は整っていた。

モネが元から着ていた服は大分汚れていたので、代わりに姉貴に借りた服をモネに着させている。それだけで大分印象が変わるから不思議なものだ。

モネは動きやすい柔らか素材のズボン(裾をだいぶ折り曲げてある)に水色の半袖シャツを着て、その上に白のパーカーという出立ち。
足には少し底の高いサンダルを履いていた。

本当は靴を履かせたかったのだが、どうしてもサイズの合う靴がなくてこれだけは元から履いていたモノのまま。
ただし、足首まで隠せる靴下を履かせていた。見目は悪くなるが、素肌を出したままにはさせたくなかったから仕方がない。

タロットはというと、黒のフード付きノースリーブに、ワークパンツ。首には鎖のついた黒い首輪。足にはブーツを履いていた。

ここまではいつもと同じ。

ただし、太ももの左右両側に、刃渡り二十センチの両刃のナイフを鞘に納まった状態で縛り付けてあった。
そして、少し小ぶりなナイフも、ブーツに一本仕込んである。

道中何があるか分からないし、運良く食べられる獲物がいれば仕留めるつもりだ。

「うまくいけば三日でセントラルタウンにつくわ。そこならどの種族も自由に出入りできるから、まずはそこに。
そこから二日も歩けば王族の領域につけるはずよ。運がよければ馬車を捕まえることができるかもしれないし」


 説明している姉貴本人は行かないくせに、妙に張り切っている。
モネはその説明を聞き逃さないようにと、しっかりと耳を傾けていた。その横で。

「まだかー?」

四日分の食料(約二人分)や、その他もろもろの品物が入った鞄を肩にかけ、半眼でタロットは声をかけた。
 

「じゃ、後はタロットに任せるから。頼んだわよ」


 笑顔の中に「失敗したら承知しない」という意味がしっかりとこめられているのは気のせいだろうか。


「りょーかい」


 もうここまで来たら後戻りはできないことは経験上よーくわかっている。すでに準備は整ってしまったのだ。もうなるようにしかならない。


「いってらっしゃい。気をつけてね」


「行ってきます。あの、ご飯ありがとうございました。おいしかったです」


姉貴に挨拶を済ませたモネが、今度はこちらを向いて頭を下げた。


「よろしくお願いします」


「よろしく」


 簡単に言葉を交わし、いよいよ出発の時が来た。生い茂る森。まずはそこを通り抜けなければならない。


「行くか」


 タロットは自分とモネに対して、気合を入れるようにそう口にし、森に足を踏み入れた。
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