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51話・会話
しおりを挟む「ところで、なぜ私は殿下の部屋に呼ばれたのでしょうか?」
私は素直な気持ちを口にする。
王太子は自分の部屋に置かれた、素朴な椅子に座る。
「今日は父がソフィーを呼んでいる、と伝えたがそれは嘘だ」
王太子は平然と言った。
私は嘘という言葉に反応してしまう。
「どうしたんだ?」
「い、いえ。嘘だったんですか?」
私は気を取り直して、尋ねる。
つまり、王太子は私を呼び出すために、嘘をついたということになる。
王太子がそうまでして、嘘をつく必要は何処にあるのだろうか?
単純に私に会いたいだけなら、この前の様に窓からやってくれば良い話だ。
私はチラッと王太子の表情を覗く。
王太子の表情は至って真剣だった。
王太子は、もしかしたら私の置かれている状況に、薄々気付いているのかもしれない。
思い当たるのは、これしか無い。
助けを、求めることは簡単だ。
私が、今王太子に縋り付いたら間違いなく私を助けてくれるだろう。
しかし、それに伴って大きなリスクを負う羽目になる。
私と王太子の悪い噂だって流されるだろうし、王太子の婚約者にも迷惑がかかることだろう。
それに、行動を起こしたとしても義母に負けてしまうかもしれない。
義母は頭がいいとは言えないが、今は私の親なのだ。
それは、どうやっても変えようがない事実だった。
王太子でも、他人の家庭までに、頭を突っ込むことは出来ない。
そうなるとある程度の誤魔化しも、効いてしまう。
私は自分の心に問う。
そうまでして、私は助かりたいの?
助かったとしても、私には居場所がない。
人生を楽しむ、という方法を知らない。
令状としての作法や、正しい振る舞いも分からない。
そんなんで、やって行けるのだろうか。
答えは、いいえ。
それに、何度も決めた様に王太子に迷惑を掛けるのは絶対嫌だ。
仕方ない、王太子が勘付き始めてしまったからには、ここで終わりにせざるを得ない。
私は涙が溢れそうになった。
こんなに、人生って上手くいかないんだ。
私は、小さい頃事故か何かで死んでいた方が楽だったのかもしれない。
私は、泣きたい気持ちを抑えて口を開いた。
「殿下、お話があります」
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