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三章 再会
純 CHAPTER10
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----------純視点(純 CHAPTER9のつづき)----------
「え?」
(あれ、私死んだんじゃなくて?)
どこまでも続いているかのような薄暗い空間に、純はいた。さっきまでいた病室とは余りにもかけ離れた場所だった。
(もしかして天国ってやつ、なのかな)
だが、イメージしていたものとは180度違う。それに、やけに現実くさい。
(結局、トラックにはねられてから、一度も恭くんに会えなかったな……)
あの悪夢で遭遇したおかしな恭平を除けば、現実世界で一度も会っていないことになる。恭平が見舞いに来た時にはまだ純の意識が戻ってきていなかったので、純は一回も恭平を見ていない。
もう恭平とは二度と会うことはできないという思いばかりが膨らんていく。
(これからもずっと、とはいかないまでも好きな時にいつでも会えるって、思ってたのに。それが『普通』だって思ってたのに)
後悔の念ばかりが先行する。好きな時に恭平と会える、それが普通。その普通が日常。その純にとっての『日常』は、トラックに轢かれた『あの瞬間』から粉々に崩れ去った。
(気付いた時にはもう全部が遅くて、ろくに時間もないまま意識が途切れて……)
神様がいるのなら、純は言いたい。せめて、恭平に一回でも会って会話がしたかったと。いきなり死んでしまうのはやりすぎだと。
しかし現実というものは残酷なもので、時間がたっても何も変わらない。何の変哲もない空間がただ広がっているだけだ。
(もしかして、このまま永遠に過ごすなんてことは……)
かなり恐ろしいことだが、起こりえることなのが怖い。考えただけで、身震いしてしまった。そして、その考えは時間が経過するごとに勢力を増していく。
そして、『永遠にこの空間で過ごさなければならない』という考えのみにとらわれてしまった時、今まで抑えていた純の色々な感情が、次々にあふれ出した。水道管が破裂したかのごとく、感情があふれ出してゆく。
「怖い……、怖いよ……」
(嫌だ……、嫌だよ!ここで永遠に独りなんて……。誰か、誰でもいいから近くにいてほしい……)
思わず声に出てしまう。返答はもちろんない。
(これって、夢だよね? 何か悪い夢だよね?)
そう純は思いたかった。だが、どうしてもそうとは思えなかった。記憶が無くなる直前、今までの人生でのすべての出来事が一気に脳に流れ込んできたからだ。まさに死ぬ寸前に起こる現象だったからだ。
(会いたい会いたい会いたい会いたい……。恭くん……)
涙はもうこぼれなかった。枯れてしまっていたのだ。いつもならこみ上げてくるはずの涙が出てこない。
純は両手を床につけて、四つん這いの状態でただ顔を下に向けることしか出来なかった。
(あっ……。恭くんへの告白、結局出来なかったのか……)
現世には未練しか残っていない。もう一度時を巻き戻せることが出来るのなら、もっと早くに告白したい。
(今そう思っても、無駄かな)
だが、時間は逆には進まない。止まりもしない。永遠に前へと進んでいくだけだ。一方通行の看板のように、逆走は禁止。人は皆、流れに抗えないままに流されていく。
「はぁー……」
純は、頭から地面に崩れ落ちた。もう体には、体勢を立て直すだけの気力も無かった。上下左右、何も変わらぬただ白く薄暗い空間が続いているだけだった。
----------
どれ程時が経過しただろうか。純は、かすかだがはっきりと、地面が振動しているのを感じた。本当に小さく、しかし確かに耳に伝わってくる。
『誰かがいる』……。希望的観測かもしれないが、賭けてみてもいいかもしれない。いや、賭けないといけない。
純の精神は、もう何かを支えにしなければ崩れてしまうほど脆くなっていた。そよ風が吹いただけで倒れるような、そんな危うい状態になっていた。
一度切れた気持ちを再び入れなおすのは簡単なことではない。純は、やっとの思いで立ち上がった。
地平線の彼方から、誰かのシルエットが見えた。距離が遠いのと薄暗いのとで誰かは分からないが、誰かが歩いてきている。
(誰かがいる!)
そのことは、純の気持ちを奮い立たせる材料にもなった。『永遠に独り』。純に恐怖を与えていたその思いが消え去ったことが大きかった。
地平線の向こうの誰かも純に気付いたらしく、駆け足で純の方へとかけてきた。それにつられて、純も足を速める。
その誰かの顔が見えた。
(何でここに……?)
純は、困惑した。なぜ死んだはずの自分の目の前にいるのかが謎だった。『独りではなかった』という安堵感とは別に、『何かあったのだろうか』という心配な気持ちも生まれた。
「あ、れ……? 純、ちゃん……? なんで、ここに……」
(そのセリフは私の方が言いたいよ)
恭平だった。遠くから歩いてきていたのは、恭平だった。
(でも私は死んじゃってるはずだから、ってことは……。まさか……)
『恭平も死んだ』。星の数ほどある可能性のうちの一つに、純はたどり着いた。確証が無い方が、なまじ信じてしまう。
(恭くんは普段自分で死ぬようなことはしないはず。ということは、私のせい……?)
「純ちゃん!どうしたの?」
恭平が純を揺さぶった。魂までもぬけの殻のように体が揺れる。純は現実に戻った。
「なんで、ここに?」
今にも消えてしまいそうな声で、恐る恐る純は尋ねた。体全体がブルブル震えている。
「夜、寝たらこの空間にいて、延々と歩いてたら誰かいるのが見えて、それで走ってきたらそれが純ちゃんだったんだ」
そう言う恭平の顔も、少しぎこちない。何と言うか、何か隠しているような印象を受けた。だが、これで『恭平も死んだ』という可能性が低くなったのは事実。心に少しだけゆとりができた。
「ところで純ちゃん、体は大丈夫なの?」
一瞬『どこかキズでもついてたっけ』と自分の体を一目見まわしたが、すぐに別の意味だと分かった。
(恭くんがお見舞いに来てくれてた時は、まだ私は意識が無かったんだよね。そりゃ、心配もされるかぁー)
恭平が言っている『体』とは、現実世界の方の生身の体のことだろう。
純は、なかなかそのことについて切り出せなかった。
「え?」
(あれ、私死んだんじゃなくて?)
どこまでも続いているかのような薄暗い空間に、純はいた。さっきまでいた病室とは余りにもかけ離れた場所だった。
(もしかして天国ってやつ、なのかな)
だが、イメージしていたものとは180度違う。それに、やけに現実くさい。
(結局、トラックにはねられてから、一度も恭くんに会えなかったな……)
あの悪夢で遭遇したおかしな恭平を除けば、現実世界で一度も会っていないことになる。恭平が見舞いに来た時にはまだ純の意識が戻ってきていなかったので、純は一回も恭平を見ていない。
もう恭平とは二度と会うことはできないという思いばかりが膨らんていく。
(これからもずっと、とはいかないまでも好きな時にいつでも会えるって、思ってたのに。それが『普通』だって思ってたのに)
後悔の念ばかりが先行する。好きな時に恭平と会える、それが普通。その普通が日常。その純にとっての『日常』は、トラックに轢かれた『あの瞬間』から粉々に崩れ去った。
(気付いた時にはもう全部が遅くて、ろくに時間もないまま意識が途切れて……)
神様がいるのなら、純は言いたい。せめて、恭平に一回でも会って会話がしたかったと。いきなり死んでしまうのはやりすぎだと。
しかし現実というものは残酷なもので、時間がたっても何も変わらない。何の変哲もない空間がただ広がっているだけだ。
(もしかして、このまま永遠に過ごすなんてことは……)
かなり恐ろしいことだが、起こりえることなのが怖い。考えただけで、身震いしてしまった。そして、その考えは時間が経過するごとに勢力を増していく。
そして、『永遠にこの空間で過ごさなければならない』という考えのみにとらわれてしまった時、今まで抑えていた純の色々な感情が、次々にあふれ出した。水道管が破裂したかのごとく、感情があふれ出してゆく。
「怖い……、怖いよ……」
(嫌だ……、嫌だよ!ここで永遠に独りなんて……。誰か、誰でもいいから近くにいてほしい……)
思わず声に出てしまう。返答はもちろんない。
(これって、夢だよね? 何か悪い夢だよね?)
そう純は思いたかった。だが、どうしてもそうとは思えなかった。記憶が無くなる直前、今までの人生でのすべての出来事が一気に脳に流れ込んできたからだ。まさに死ぬ寸前に起こる現象だったからだ。
(会いたい会いたい会いたい会いたい……。恭くん……)
涙はもうこぼれなかった。枯れてしまっていたのだ。いつもならこみ上げてくるはずの涙が出てこない。
純は両手を床につけて、四つん這いの状態でただ顔を下に向けることしか出来なかった。
(あっ……。恭くんへの告白、結局出来なかったのか……)
現世には未練しか残っていない。もう一度時を巻き戻せることが出来るのなら、もっと早くに告白したい。
(今そう思っても、無駄かな)
だが、時間は逆には進まない。止まりもしない。永遠に前へと進んでいくだけだ。一方通行の看板のように、逆走は禁止。人は皆、流れに抗えないままに流されていく。
「はぁー……」
純は、頭から地面に崩れ落ちた。もう体には、体勢を立て直すだけの気力も無かった。上下左右、何も変わらぬただ白く薄暗い空間が続いているだけだった。
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どれ程時が経過しただろうか。純は、かすかだがはっきりと、地面が振動しているのを感じた。本当に小さく、しかし確かに耳に伝わってくる。
『誰かがいる』……。希望的観測かもしれないが、賭けてみてもいいかもしれない。いや、賭けないといけない。
純の精神は、もう何かを支えにしなければ崩れてしまうほど脆くなっていた。そよ風が吹いただけで倒れるような、そんな危うい状態になっていた。
一度切れた気持ちを再び入れなおすのは簡単なことではない。純は、やっとの思いで立ち上がった。
地平線の彼方から、誰かのシルエットが見えた。距離が遠いのと薄暗いのとで誰かは分からないが、誰かが歩いてきている。
(誰かがいる!)
そのことは、純の気持ちを奮い立たせる材料にもなった。『永遠に独り』。純に恐怖を与えていたその思いが消え去ったことが大きかった。
地平線の向こうの誰かも純に気付いたらしく、駆け足で純の方へとかけてきた。それにつられて、純も足を速める。
その誰かの顔が見えた。
(何でここに……?)
純は、困惑した。なぜ死んだはずの自分の目の前にいるのかが謎だった。『独りではなかった』という安堵感とは別に、『何かあったのだろうか』という心配な気持ちも生まれた。
「あ、れ……? 純、ちゃん……? なんで、ここに……」
(そのセリフは私の方が言いたいよ)
恭平だった。遠くから歩いてきていたのは、恭平だった。
(でも私は死んじゃってるはずだから、ってことは……。まさか……)
『恭平も死んだ』。星の数ほどある可能性のうちの一つに、純はたどり着いた。確証が無い方が、なまじ信じてしまう。
(恭くんは普段自分で死ぬようなことはしないはず。ということは、私のせい……?)
「純ちゃん!どうしたの?」
恭平が純を揺さぶった。魂までもぬけの殻のように体が揺れる。純は現実に戻った。
「なんで、ここに?」
今にも消えてしまいそうな声で、恐る恐る純は尋ねた。体全体がブルブル震えている。
「夜、寝たらこの空間にいて、延々と歩いてたら誰かいるのが見えて、それで走ってきたらそれが純ちゃんだったんだ」
そう言う恭平の顔も、少しぎこちない。何と言うか、何か隠しているような印象を受けた。だが、これで『恭平も死んだ』という可能性が低くなったのは事実。心に少しだけゆとりができた。
「ところで純ちゃん、体は大丈夫なの?」
一瞬『どこかキズでもついてたっけ』と自分の体を一目見まわしたが、すぐに別の意味だと分かった。
(恭くんがお見舞いに来てくれてた時は、まだ私は意識が無かったんだよね。そりゃ、心配もされるかぁー)
恭平が言っている『体』とは、現実世界の方の生身の体のことだろう。
純は、なかなかそのことについて切り出せなかった。
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