こんにちは、お兄様

月鳴

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こんにちは、お兄様

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 私には十七年まともに会ったことの無いお兄様がいた。お兄様は本妻様の息子で、私は愛人の娘。そりゃ当然会うことなんてなかった。私に他の兄弟はなく、貴族の父の認知もなかった。けれど父は私たちに会いによく庶民街にやってきたし、母も私もそれを快く受け入れていた。
 幼かった頃の私は父が持ってくる貴族のお菓子が大好きだった。庶民ではなかなか食べることはおろか見ることすらない色とりどりの見た目、甘い香りと、それを包んだ宝石箱のような菓子入れ。その空き箱たちは全部私の宝物だった。

 そんな生活が変わったのは二年前。母が死んで、本妻様が家を出て、お兄様が私を迎えに来た。私は母の形見を入れた一番とびきりお気に入りの菓子箱だけを持って住み慣れた素朴な家を出た。
 小柄な私を出迎えた大きな御屋敷が今日から私の家と言われても実感などわくはずがなかった。
 家にはお兄様と私だけ。父の所在はしばらく知らないままだった。私はきっとここには父もいるのだと淡い期待をしていたのに。
 屋敷にやってきて一年後、父は失踪したのだとメイドの噂話で知った。理由はわからなかったけれど、なんとなくもう会えないのだと思った。

「こんにちは、お兄様」

 私が初めてお兄様にかけた言葉だ。初めて会った時はまるで連れ去られるようにしてやってきたのではじめましての挨拶もなかったし、広い屋敷で私たちが会うこともなかった。
 中庭にお兄様が婚約者様と会っていると聞いて私は初めてお兄様と会話をすることになったのだ。それまではおそらくきっと、お兄様のほうが私を避けていたのだろう。本当に同じ敷地内にいるのに全く会うことがなかったのだから。
 今日なら逃げられっこないだろうと踏んだのは当たりらしかった。
 お兄様は秀麗な顔を青ざめさせて私を見ている。私は習ったばかりのみすぼらしいカーテシーを見せて婚約者様にも頭を下げた。麗しい容姿のおふたりは切り取った絵画のようで自分がいかにお門違いな場所にいるのか改めて感じる。
 この人をお姉様と呼ぶことはないのだろう。
 何故自分がここに連れてこられたのかはよく分からないが、たぶんずっといられるわけではないのだろうと思っていた。
 屋敷も使用人もドレスもベッドも私を歓迎してはいない。もちろんお兄様も。

 出来ることなら早くこんな窮屈な場所から逃げ出したかった。


「あれは、どういうつもりだ」

 その夜お兄様が突然私の部屋に訪れた。まぬけな私は初めてお兄様に声をかけられたなと思った。けどよくよく考えてみればここへ来る前になんらかの言葉をかけられた気がする。難しくてよくわからなかったけど。

「礼儀としてご挨拶をしただけです」

 礼儀なんて付け焼き刃で習った薄っぺらしか知らないくせに私はそう言った。マナーの先生がそんなことを言っていた気がしたから、というのは言い訳に過ぎない。お兄様に挨拶くらいしてみたかった。ただそれだけの話。

「何か問題がありましたか?」

 敬語は慣れていない。もっとかしこまった言い方も習ったけれど、咄嗟になんて出てくるわけない。だって私はここの子じゃないんだから。

「お前は、ここで大人しくしていればいい。挨拶もいらない」

 不服そうな私の雰囲気に気づいているのか、お兄様の声は静かな怒りに満ちていた。怖いと思ったけどその反面、お兄様にも感情があるのだなと当たり前のことを思った。
 お兄様は顔立ちが整っていて表情がない。見ていると無機質なお人形のような気がしてくるのだ。立って歩いて話しているだけで謎の感動を覚えるほど。ああ、お兄様も私と同じ人間なのだな。なんて。

「……わかりました。もうしません」

 お兄様は私の返事に溜飲を下げたのか、音もなく部屋から出ていった。背の高い男の人が目の前に立つとそれだけで緊張感があるものだと私は知った。


 それからは屋敷に来客があったら部屋から出ないようにした。挨拶は不要なら私の存在も不要なのだろう。誰とも出くわさないように静かに引きこもった。

 毎日はあっという間に過ぎていく。この屋敷に来てもう二年が経っていた。私は来年成人するらしい。そうすると社交界に出て、婚約者を見繕い結婚するのだと。
 不思議だった。庶民街にいるときは恋の話、結婚の話はわりと身近に感じていたけれど、ここに来てからはそういうモノが一切遠くなってしまった。私の友達はここにはいないし、結婚のことをしつこく話すおばさま方もいなかった。
 そして私が貴族相手に結婚するかもしれないということも。
 なんだか意味不明な言語で伝えられた気分だった。

 成人の日にはこの屋敷で盛大なパーティが開かれるのだという。私のために?
 一瞬過った考えはすぐにねじ伏せられた。いいえ、この家のため。貴族の尊厳を守るため。私は前の当主が他所に産ませた婚外子、跡取りになる資格もなく、孕み腹としてぐらいにしか価値のない女。
 貴族の体面というのは色々と面倒なのだと私はもう知っていた。

 この頃になると父の失踪はお兄様が関わっていたのでは、という噂を耳にするようになった。根も葉もない噂だったが、傾きかけていたこの家が持ち直したのは父が消えお兄様が当主になってからなのだという。
 私は単純にお兄様が優秀だったから、と思っていたけれど、優秀な人間にも権利がなければどうすることも出来ないことが世の中にはあるそうだ。
 だからといって私はお兄様が本当に父をどこかへやってしまったとは思っていない。私の父は貴族のくせにお供も付けずに庶民街にやってくるような無防備な人だった。ゴロツキや暴漢に襲われてもおかしくはなかった。そのまま死体は金目のものを奪われて身分不明の遺体になって焼かれてしまっているかもしれない。
 でも悲しくはなかった。父のことは好きでも嫌いでもなかった。薄情と呼ばれても、無責任に私を作るような人だ。ろくでなしとそしられたって仕方のない人なのだ。今思えば無条件に受け入れていた母は何を考えていたのか。
 あの人が父でなければ、私はここにいなくても良かったのだ。まあでも別に恨んでもいない。
 ここにいることは望んでいなかったけれど、ここでも暮らせているのは事実。お兄様がどういうつもりで私をここへ住まわせているのかはやっぱりよくわからないけれど、飢えもせず寒さに震えもしないこの生活はお兄様によってもたらされているのだから感謝している。


「今度の夜会、お前はこのドレスを着ろ」

 お兄様がおもむろに差し出したのはパールの沢山ついた白いドレス。お披露目には白いドレスを着る風習でもあったのだろうか、と首を傾げていたが、お兄様がそういうのなら私は二つ返事で受け入れるしかない。

「はい、わかりました」
「他に欲しいものはあるか」
「欲しいもの?」
「アクセサリーや靴、手袋の一切は用意してある。それ以外だ」

 ええと。欲しいもの。……自由?
 なんて言えるわけないので私は首を振った。

「お兄様のよいように」

 お兄様は眉間にくっきり皺を寄せて私を睨むと、いつかのように静かに部屋を出ていった。それを見て思う。あの技術があれば部屋からも屋敷からもこっそり抜け出せやしないかと。
 今の私は籠の鳥だ。どこにも行けない。行くあてもない。
 なんだか急に孤独が喉元までせり上がってくる。このまま息が止まるまで私はここに居るのだろうか。

 パーティまではもうそこまで日付が迫っていた。パーティが終われば何か変わる?
 私は待っているだけでいいの?

 この屋敷で盛大なパーティが開かれるのは私がやって来て初めてのことだ。どんな雰囲気になるかはわからないけれど、裏方は大わらわになるに違いない。

 ――この機に乗じて、逃げ出してみようか。

 そんな考えが降って湧いた。正直私などいてもいなくてもいい存在だ。パーティの名目ではあるけど、ただそれだけの事。飾られたタイトルに注目する人もいないだろう。
 ここにやってくる人は皆お兄様が目的なのだ。ほとんど社交をしないお兄様はこの家を立て直したその手腕と、見目の良さで人々の耳目を集めている。
 私の存在含めスキャンダルも多いこの家は噂の的らしい。

 パーティの日が慌ただしくなるだろうことは間違いない。

 私は小さなカバンに、宝物入れの菓子箱と簡素な服を何枚か詰めヒールのない靴を用意した。なんだか冒険に出るみたいな気分になって、子どもの頃の遊びを思い出した。
 輝かしい未来が待っている。そんな予感がした。



 綺麗にヘアセットされ、華美なお化粧をして、ピカピカのヒールにレースをたくさんあしらったパールホワイトのドレスに身を包んだ。

「知らない人みたい……」

 鏡に映る自分の言葉に、メイドが小さく笑った。

「お嬢様、大変お綺麗ですよ」
「……うん、ありがとう」

 メイドの優しいお世辞に笑って返す。彼女と話すのもこれで最後かもしれないと思うとなんだか不思議な気持ちになった。
 ここから出たあとのことはなんにも考えていない。なのに私はおかしな自信があった。別にここじゃないどこかでも生きていける気がしていた。

 私のお披露目が終わって、お兄様とダンスをして、パーティが中盤をすぎた頃に疲れたと言って抜け出す。その頃には大人たちの社交の時間になっていてきっと成人を迎えたばかりの小娘など必要なくなる。
 そうしたら、控え室に置いてある服に着替えてカバンを持って裏口から出ていく。それでここからおさらばするのだ。

「準備できたか」

 今日はお兄様がエスコートしてくれる。最初で最後の兄妹ごっこだ。黒のタキシードを着たお兄様は美しかった。女の美しさとは別の洗練された美しさ。あんなに着飾ったのに、この人の隣で歩くのは気が引けてしまう。

「どうかしたか?」
「いいえ、今日もお兄様は麗しくあられるなと」
「なんだそれは。お前も褒めて欲しいのか?」
「いえ私など見劣りしますから」
「何を言っている。俺の選んだものを着ているんだ、見劣りなどせん」

 どうやらお兄様は自分が選んだものに絶大な自信を持っているらしい。私は目を伏せてお兄様の腕に手を添えた。


 大広間は盛大に飾り付けられシャンデリアが眩く光っている。踊り場から見下ろすと下の階には大勢の人が集まっていて、私はついこれなら逃げやすそうだな、なんて思ってしまった。
 お兄様が滞りなく挨拶を述べて、私が昔より上手くなったカーテシーを披露する。
 そして二人で階下に降りて、ダンスを踊る。
 お兄様のエスコートで踊るのは初めてだったが、なんの違和感もなくて、お兄様は踊りも上手いのだと感心してしまった。この人に苦手なことなどあるのだろうか?

「なにを見ている?」
「お兄様、眉間にシワが寄ってますわ」
「……お前はいつもはぐらかすな」
「何をです?」
「言いたいことがあるなら言え」
「ありませんわ」

 私が即答すると、お兄様はまた深くシワを寄せた。言いたいことと言う必要は同じ意味では無い。それに別に言いたいこともなかった。言わないだけだ。必要ないだけ。

 お兄様に聞かせる必要のあることなど何も無い。
 私はそういう存在だから。

 お兄様はまたむっすりと黙り込むと私を睨むようにした。睨まれてもこの瞳を見るの最後だと思えば可愛く見えた。

 それからお兄様と別れ、誘われるがままに何人かと踊って疲れたふりをして会場の隅に移動した。その頃には私を注目している人もいなくて、私は給仕からフルーツジュースをもらって一息つく。これを飲んだら行動開始しよう。
 この華やかで気取った世界ともお別れだ。
 感慨はなかった。

 人気のない廊下を歩く。この角を曲がれば控え室だ。そこで着替えて荷物を持って出ていく。ざわついた会場と打って変わってここはとても静かだった。
 私が曲がり角に差し掛かったとき、ふいに人影が目の前に現れた。角の死角で相手が見えなかった。

「きゃっ!」

 そのまま私はその人にぶつかった。私の顔が胸に当たるのだから相手は男性のようだ。恐る恐る顔を上げる。どうか知らない人でありますように。

「あ、……」

 そんな願いも虚しく目の前にいたのは、よく知っているようでよく知らない、他人のようなお兄様、だった。

「どこへ行くんだ?」
「あの、控え室に行こうかと、……」
「そんなに急いでか?」
「すこし、疲れてしまったので」

 お兄様はどこか威圧的な雰囲気で何か怒っているようだった。どうしてこんな場所にいるの。私よりも会場にいなくてはならない人が、こんな場所で油を売っているなんて。

「そのわりには元気そうに見える」
「人酔いしたんです」
「嘘をつくな、お前の目当てはこれだろう?」

 お兄様がそう言って差し出したのは見覚えのあるカバンと靴。私はざっと血の気が引いた。よりにもよって一番バレてはいけないひとに見つかってしまったらしい。

「お、お兄様、これは」
「“これは”、……なんだ?」

 ギラッとお兄様の目が瞬いた。言い訳が上手く見つからない。この時になってバレた時のこと考えていなかったことに気がついた。この家には私は必要ないと思っていたからバレても誰も引き止めやしないだろうと思っていたのだ。

 ――でも、それはお兄様も同じことでは?


「ここから、出ていこうかと思いまして」

 私は開き直ることにした。もうこんな物的証拠が見つかっていて誤魔化しなんてしようがない。お兄様があっさりここから解放してくれることを願うしかないのだ。

「、なに?」
「ですから、ここから出ていくための準備です。お披露目した矢先にその本人がいなくなるのはまずいかもしれませんが、私などここにいても不要なだけでしょう? ですから出ていこうかと。遅くなってしまいましたが、その決心がようやくついたのです」

 遮られる前に一息に言いたいことを言い切る。こんな風にお兄様に本心を述べたのは初めてかもしれない。というかこの家に来てからも初めてな気がした。

「お前は、何を言ってるんだ」

 お兄様の美しい顔は引き締められ、厳しい表情をしている。

「それはお前の本心か?」
「……はい」
「なら、俺の本心も教えてやろう」

 面と向かったお兄様の瞳は、驚くほど暗く淀んでいて、その美貌がいっそ恐ろしかった。ここに来て私はようやく、何か踏んではいけないものを踏んでしまったのだと気づいた。

「お前は、俺の妹などではない」

 そんなこと、言われなくても知ってる。父は外の女に私を産ませたが、お兄様の母もまた別の人との元でお兄様を授かったのだと。だからお兄様は父を排除する必要があった。お兄様は表向きは父の子となっているが、父には私がいた。私がいてはいつ血筋の正当性を持ち出して、転覆させられるかわかったものではない。
 私にそんなつもりはなくともお兄様にとっては関係ない。私の存在自体が脅威だったのだ。
 だからこそ、私はこの家で敵意はないはないことを示すためにひっそりと息を潜めて生きてきたのに。まあどれもこれもここに来てから知ったことではあったけど。

「邪魔者には違いないでしょうに」
「俺がいつ、そんなことをお前に言った」
「言われてはいませんが、感じてはいました。ここはお前の場所では無いと」
「それは違う。ただ、俺のわがままだったんだ」
「わがまま? なんの?」
「初めてお前を見た時に思った。――お前を誰にも見られたくないと」
「は?」
「お前を誰にも知られたくなかったし、お前を閉じ込めておきたかった」

 お兄様の言っている意味がまったくわからない。お兄様は持っていたカバンやらをいつの間にか遠くに投げ捨てていて、空いた手で私の両手首を掴んできた。そのまま壁に押し付けられるとどこにも逃げ場がなかった。
 蒼穹の美しい瞳にめいっぱい私が映り込んでいる。

「だから使用人たちにはできるだけお前と個人的に関わるなと厳命していたし、来客の挨拶もさせなかった。あの時は参ったよ、お前が突然現れた時には。一緒にいた女に彼女は誰だと聞かれて妹だと答えざるを得なかった。まだ準備が出来てなかったから」
「何を言ってるんですか……?」
「でももう準備は整った。これで堂々とできる、そう思った矢先にこれだ」

 お兄様の右手が私の頬を撫でる。お互いの息がかかる距離で、思わせぶりに顔を撫でられてゾッとしたものが背筋を走る。お兄様は熱に浮かされた表情で私を見つめている。なに、これ。
 がっ、と急に喉を掴まれる。衝撃で息が一瞬止まった。けれどそれほど力は篭っていない。

「お前には成人のお披露目パーティだと言ったよな」
「は、い」
「でも実はお前には言ってないもうひとつの名目があったんだ」
「……え?」
「それはな……」

 聞いてはいけない気がした。でも私の体はすでにお兄様に押さえつけられている。逃げ場なんてなかった。

「俺とお前の婚姻披露パーティなんだよ」
「そ、んな……!」
「お前も知ってるように俺はこの家の血を継いでない。だから、お前と結婚する。そうすれば正式に継承出来るんだ。実際俺たちに血縁関係はない。他の親戚連中を納得させるにはいい方法だった。奴らは俺を上手く使いたい。だが赤の他人に好き勝手されたくない。お前がいればその言い訳も立つからな。ちょうど良かったんだ」
「何が、ちょうどいいものですか……!!」
「だって俺は、」

 お兄様は信じられないくらい乱暴な言葉で言い募ると、不意に言葉を切った。

「んむぅっ!?」
「……っ、んん、口を開けろ」
「んー、!」
「抵抗するな、噛みつきたくなる」
「ぁっ! んっ、ふぁ……!」

 お兄様のアツい舌が私の口の中を好き勝手に暴れ回る。唾液を絡めて味を染み込ませるみたいにしつこく口内を舐めまわして離れる時にはつぅと糸を引いた。

「お前を俺のものにするつもりだったから」

 耳元で囁かれる言葉も酸欠の頭には入ってこない。ただ、一つだけわかるのは、私はここからは逃げられないのだろうということだけだった。

「愛してるよ。俺のかわいいかわいい妹さん」

 ガリッと耳を噛まれて、痛みからなのか、私の瞳から雫がひとつ零れ落ちた。










 初めて彼を見た時、まるで絵本の王子様のように見えた。淡い憧れが、嫉妬を伴った深い感情に変わるのはあっという間で、私は彼の瞳に留まりたいと思うようになった。

 女の人と一緒にいるのを見た時、どうしようもなく苦しくなった。だから思わずあの場に行ってしまったのだ。

 けど、生まれた時から貴族だった彼らと私だけが異分子だと、悟ってしまったから。
 ――私はここから逃げ出したくなったのだ。

 お兄様が選んでくれたもので最後に着飾って、忘れないでいてくれたら、それだけで良かった。ドレスは置いていくけれどアクセサリーだけは持っていこうと思っていた。

 想いを伝えるつもりはなかった。だって生きてる世界が違うと思ったのだ。共に歩む道なんて知らなかった。

「んん………………」

 隣で眠る髪の柔らかさも知るはずなかったのに。

 いつか、伝えられたらいい。

 眠っている美しい頬に口付けして私は彼の温もりでまた眠りに落ちていく。
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