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第六章
お願い、助けて!
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『マスター!姫、そろそろ上がるよー』
『おー、そっか。ありがとなフゥ』
万が一、浴室に諸々のネズミが入り込んだ時の為に張り付かせていたフゥから、シェンナ姫が湯浴みを済ませて身支度を整えに寝室へと戻ると脳内通信が届いた。
寝室を通らなければならないけど、妹だし大丈夫だろうと思い、ザビア将軍にも湯浴みを勧めようと口を開きかけた時だった。
「ん?」
コツコツ、と小さな音が聞こえた気がして、ステンドグラスが嵌め込まれてる格子窓の方を見る。
「……誰も……いないよな?」
すると、侵入防止の二重構造で尚且つ不透明のガラスから、またコツコツ外側から音が聞こえてくる。
ソファから立ち上がろうとしたザビア将軍を止め、窓に近寄り掌を音にあてて気配を探ってみた。
「…あ!魔鳥か」
直ぐに窓を開けてやると、目にも止まらぬ速さで黒い鳥が飛び入ってきた。
そして天井を旋回してから真っ直ぐ俺の肩へと降り立ち、クルルと甘えるように鳴いて仮面に擦り寄る。
「よしよし。無事に俺達の場所に来れたな。危ない事なかったか?」
頬と首の間辺りを掻いてやると、気持ち良さそうに目を細めクルクル鳴く。外傷も無いし、どうやら大丈夫だったみたいでホッとした。
「何か有益な情報を見聞きしたかな、こいつ。ベル、ちょっと聞いてみてくれよ」
『面倒くせぇ。ンなもん羽虫にやらせろ』
「...あーそうかよ。ならコイツに『名付け』して正式な従魔にするか!そしたら会話出来るし...」
ツンとしてそっぽを向くベルをジト目で睨み、半ば本気でそう言った俺へ怒りの威嚇音が投げつけられる。え?羽虫で十分だ、これ以上余計なのを増やすな?だったらもっと俺の役に立ってくれよ!
そう、俺は謁見の前に少しでも情報を拾えないものかと考え、隠密に長けて尚且つ俊速な『空の便利屋』であるこいつを使ってみようと思いついたのだ。
そしてバティルと別れ、後宮に向かう際の渡り廊下で「内部でどのような動きがあるのか探ってみてくれ」と囁き、密偵として放った。
けど、此処は人の陰謀渦巻くだけでなく、更に魔のモノが跋扈しているだろう伏魔殿だ。
バティルの動向も探れたら良いけど、危険だと判断したら速攻逃げて俺の魔力を辿って来いと言い含めておくのも忘れなかった。
『マスター!ただいま~』
「おかえりフゥ。早々悪いけど、ちょっとコイツと話してもらえるか?」
良いタイミングで戻ってきた風妖精を手招きし、肩の魔鳥を指差した俺だったが、返ってきたのは素っ頓狂な声だった。
『あれーっ?コイツの中になんかいるよー?』
「えっ!?なんかいるって、なにが!?」
フゥの言葉に驚き、俺はキョトンとする魔鳥を凝視した。が、気配を探ってみても、別段悪い魔力も感じない。
「魅了師殿、一体どうされたのですか!?魔鳥に何か細工が…!」
『ちがうよー。すっごく弱いけど、知ってる感じがするナニかー』
「…いや。そうじゃないみたいだけど…フゥの知ってる感じ?」
警戒するザビア将軍にフゥの言葉を伝え、俺は戸惑いながらベルを見ると、舌をチロチロ出しながら魔鳥を睨んで...いや眇めている。内部にいる『なにか』を見極めているみたいだけど、『魔』に対して敏感なベルが即座に反応しなくてフゥが反応したって事は…。
『キレイ…魔力… このコがつけてたモノと おなじ….』
「え!?」
その時、囁きの様な弱々しい声を耳が拾ったと同時に、肩にとまっていた魔鳥が羽を広げて一人掛けのソファーチェアへ飛び移る。すると、胸の辺りから淡い光の球が浮き出てフヨンと空に浮いた。
『この感じ…。フゥとエレメントは違うけど、これは』
『あれー?お前、土妖精じゃん!』
フヨフヨ浮かんでる球を見るなり、俺の頭の上にいたフゥが目を丸くして飛んでいく。やっぱり四大元素の妖精だったか。
それにしても、今にも消えそうな位に弱い魔力波動だ。最初に出会った時のフゥは、体が半透明だったけど人型は取れていたのに。
『……あの ね 』
消えそうな声を発する球に触れ、フゥは真剣な顔をしてる。属性は違っても同じ精霊。仲間意識も強い筈だから、心配で仕方なさそうだ。
『マスター。コイツ、マスターにお願いあるんだって』
じっとしていたフゥは、やがて触っていた球を抱えて俺の目の前に連れてくる。俺が手を差し出すと、球はふよんとその上に着地して再び微かな声を発した。
『キレイな ひと。ボクの友達…コリンを 助けて…!』
『おー、そっか。ありがとなフゥ』
万が一、浴室に諸々のネズミが入り込んだ時の為に張り付かせていたフゥから、シェンナ姫が湯浴みを済ませて身支度を整えに寝室へと戻ると脳内通信が届いた。
寝室を通らなければならないけど、妹だし大丈夫だろうと思い、ザビア将軍にも湯浴みを勧めようと口を開きかけた時だった。
「ん?」
コツコツ、と小さな音が聞こえた気がして、ステンドグラスが嵌め込まれてる格子窓の方を見る。
「……誰も……いないよな?」
すると、侵入防止の二重構造で尚且つ不透明のガラスから、またコツコツ外側から音が聞こえてくる。
ソファから立ち上がろうとしたザビア将軍を止め、窓に近寄り掌を音にあてて気配を探ってみた。
「…あ!魔鳥か」
直ぐに窓を開けてやると、目にも止まらぬ速さで黒い鳥が飛び入ってきた。
そして天井を旋回してから真っ直ぐ俺の肩へと降り立ち、クルルと甘えるように鳴いて仮面に擦り寄る。
「よしよし。無事に俺達の場所に来れたな。危ない事なかったか?」
頬と首の間辺りを掻いてやると、気持ち良さそうに目を細めクルクル鳴く。外傷も無いし、どうやら大丈夫だったみたいでホッとした。
「何か有益な情報を見聞きしたかな、こいつ。ベル、ちょっと聞いてみてくれよ」
『面倒くせぇ。ンなもん羽虫にやらせろ』
「...あーそうかよ。ならコイツに『名付け』して正式な従魔にするか!そしたら会話出来るし...」
ツンとしてそっぽを向くベルをジト目で睨み、半ば本気でそう言った俺へ怒りの威嚇音が投げつけられる。え?羽虫で十分だ、これ以上余計なのを増やすな?だったらもっと俺の役に立ってくれよ!
そう、俺は謁見の前に少しでも情報を拾えないものかと考え、隠密に長けて尚且つ俊速な『空の便利屋』であるこいつを使ってみようと思いついたのだ。
そしてバティルと別れ、後宮に向かう際の渡り廊下で「内部でどのような動きがあるのか探ってみてくれ」と囁き、密偵として放った。
けど、此処は人の陰謀渦巻くだけでなく、更に魔のモノが跋扈しているだろう伏魔殿だ。
バティルの動向も探れたら良いけど、危険だと判断したら速攻逃げて俺の魔力を辿って来いと言い含めておくのも忘れなかった。
『マスター!ただいま~』
「おかえりフゥ。早々悪いけど、ちょっとコイツと話してもらえるか?」
良いタイミングで戻ってきた風妖精を手招きし、肩の魔鳥を指差した俺だったが、返ってきたのは素っ頓狂な声だった。
『あれーっ?コイツの中になんかいるよー?』
「えっ!?なんかいるって、なにが!?」
フゥの言葉に驚き、俺はキョトンとする魔鳥を凝視した。が、気配を探ってみても、別段悪い魔力も感じない。
「魅了師殿、一体どうされたのですか!?魔鳥に何か細工が…!」
『ちがうよー。すっごく弱いけど、知ってる感じがするナニかー』
「…いや。そうじゃないみたいだけど…フゥの知ってる感じ?」
警戒するザビア将軍にフゥの言葉を伝え、俺は戸惑いながらベルを見ると、舌をチロチロ出しながら魔鳥を睨んで...いや眇めている。内部にいる『なにか』を見極めているみたいだけど、『魔』に対して敏感なベルが即座に反応しなくてフゥが反応したって事は…。
『キレイ…魔力… このコがつけてたモノと おなじ….』
「え!?」
その時、囁きの様な弱々しい声を耳が拾ったと同時に、肩にとまっていた魔鳥が羽を広げて一人掛けのソファーチェアへ飛び移る。すると、胸の辺りから淡い光の球が浮き出てフヨンと空に浮いた。
『この感じ…。フゥとエレメントは違うけど、これは』
『あれー?お前、土妖精じゃん!』
フヨフヨ浮かんでる球を見るなり、俺の頭の上にいたフゥが目を丸くして飛んでいく。やっぱり四大元素の妖精だったか。
それにしても、今にも消えそうな位に弱い魔力波動だ。最初に出会った時のフゥは、体が半透明だったけど人型は取れていたのに。
『……あの ね 』
消えそうな声を発する球に触れ、フゥは真剣な顔をしてる。属性は違っても同じ精霊。仲間意識も強い筈だから、心配で仕方なさそうだ。
『マスター。コイツ、マスターにお願いあるんだって』
じっとしていたフゥは、やがて触っていた球を抱えて俺の目の前に連れてくる。俺が手を差し出すと、球はふよんとその上に着地して再び微かな声を発した。
『キレイな ひと。ボクの友達…コリンを 助けて…!』
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