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第五章
同じ疑問にぶち当たる
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少し気温下がった?と思ったら、真っ青だった空が紫の混ざったような色になってきた。
太陽も下に降りてきているのは、黄金色が形として見えるようになったのでわかる。
あれから三十分弱経過した。
段々、砂漠にポツリ、またポツリと小さなオアシスとサボテンが点在するようになり、大岩が積まれたような丘も見え始めた…と思ったら、どんどん緑が増えてきた。とは言っても、乾燥地帯特有の緑だけど。
あ!あの植物ってまんまジョシュアツリーじゃん!今通り過ぎたのはパームツリーっぽい。それに、色んな形のサボテンが生えているなー。ずーっと砂漠ばかりだったから、色彩が加わるだけで気分が高揚してくる!
…うん。ベル、悪かったよ。だから、浮かれてる場合じゃねえ!ってジト目で尾っぽ振るのやめてくれ。
「魅了師殿。そろそろ『流浪族』の天幕が見えてきます」
「え?流浪族?」
「はい。オンタリオ王国は数多くの少数民族が集まり、小国を吸収して興された国家です。その中で『国』という枠組みを嫌い、未だ砂漠を転住する民族達を総じて『流浪族』と呼んでいるのです」
説明を受けている間にも、砂漠色をしたテントが幾つか固まっているのが見えてきた。これだけ数のある火竜が走ってくるからだろう。警戒の色を強く浮かべた男達が、テントを守るように外に立っている。中には剥き出しの剣を持ってる人達もいた。
当然、俺達は彼らに用はないので挨拶もなくあっという間に通り過ぎて行ったわけだけど、その際にざっと観察するのは忘れない。
彼らの服はアラブ風の装束で、地球の砂漠に住むベドウィン族そのものだった。これでラクダがいれば完璧だったけど、男達の側に繋がれているのは火竜達なのが、此処は異世界なんだって改めて実感する。
...待てよ。流浪族の皆さん、俺達..いや正しくはシェンナ姫を迎えに行く火竜の群れを見てる筈。行きはラシャドが先陣切ってたのに、帰りは謎の仮面男と男女ペアだもん。そりゃ警戒マックスにもなるよね。
そう言えば流浪族の皆さん、火竜の軍勢…ってより俺を集中ガン見してたような…。
「あの人達は、オンタリオに自治権を認められてるのかな?」
「前王は、幾度となく彼らを国に併合させようとして、小競り合いを繰り返していたらしいです。けれど今の王は穏健派なので、彼らの好きにさせていると」
「へぇ、今の国王ってコリン王太子の父親だよね?」
「はい!コリン様は、父である陛下のご気性を受け継がれたと、前宰相様が仰っておりました」
俺の問いかけに最初はザビア将軍が、そして次はシェンナ姫が答えてくれた。
成る程、大方コリン王太子の祖父がかなりの暴れん坊だったのか。で、父親は戦争よりも外交に力を入れていて、王太子も同じだったと。
『益々、国王主体の陰謀には思えないなぁ…』
現国王の統べるオンタリオと、ザビア将軍達の父親が統べるカルカンヌは友好国だったし、コリン王太子とシェンナ姫も..互いを想いあってた。
姫が成人する前に婚約、そして成人後に結婚すればどちらにもハッピーエンドだったじゃないか。
『それを強引に…。これって輿入れじゃなくて拉致だ。国王にも王太子にもメリットなし。もしや、彼らは『魅了』に掛かっている?そして、画策した奴…奴らが急がなければならない理由…』
宰相が今回の企みの中核にいるのは間違いない。
けれど、個人でかといえば疑問系だ。現国王が「穏健派」…って事は、反対勢力みたいなのもいるんだろう。例えば前国王みたいに好戦的な「強固派」とか。
だったらバティルがその派閥に与していて、グリフォンを呪って力を奪い、尚且つシェンナ姫を何らかの理由で無理矢理輿入れさせて国家乗っ取りを企てる…なんて考える事もできる。
で、やっぱり「何で?」「どうして?」って同じ疑問にぶち当たるんだよ。そもそも、オンタリオ国の内情なんて全然分からないし。
『やっぱり情報が足りないなぁ…』
俺はチラリと進行方向に鎌首を向けているベルを見る。バティルが肩に乗せていた鴉の事を聞いてから、こいつの様子が明らかに変わった。何かを察したというより、疑っているような…思案してるような。
「諸悪の権化」とは何なのか?ひょっとして、俺が懸念している通りなのか。しかも「炙り出す」とかも言ってたけど、それってどういう事なんだ?
でもそれについて尋ねてみても、『あくまで推測だ』と素っ気なく言い放たれて終了。
フウは魔鳥と仲良くなったみたいで、俺の頭の上に乗ってお喋り(?)に興じてる。
「なぁフウ。スラッシュさ、バティル情報持ってないかな?」
『えーっと、よく分からないみたい。使役されたのついさっきみたいだし、『目』をつなげてただけだって』
フウの言葉を肯定するみたいに、クォッと鳴いて頭を上下させる魔鳥。火竜もそうなんだけど、人の言葉を解した反応がとても和むなぁ~…って、そうじゃなくて!
「う~ん…。やっぱ駄目か」
一応ボス火竜にも、ベルにバティルの事訊いてもらったんだよな。そしたら、使役と呪いを受けたのが意外にも二年前と最近だったのが判明。
けど、それからは「不快な『縛り』を受けていた」「主に解放されるまで、己の意志は抑えられていた」って訳で、個人情報はほぼ無しだった。
まあ、普段は帝国の城門外の宿舎に待機してるらしいし、あんまり期待はしてなかったけど。
ちなみに「主」とは...やっぱり使役してしまった俺の事らしい。
『ユキヤ。火竜が言うには、オンタリオまで後少しらしい。時間が無いんだ、さっさと指示した通りやっとけ』
『え?そうなんだ!分かった』
ベルに言われ、俺は慌てて後方にいるザビア将軍とシェンナ姫を振り返った。
太陽も下に降りてきているのは、黄金色が形として見えるようになったのでわかる。
あれから三十分弱経過した。
段々、砂漠にポツリ、またポツリと小さなオアシスとサボテンが点在するようになり、大岩が積まれたような丘も見え始めた…と思ったら、どんどん緑が増えてきた。とは言っても、乾燥地帯特有の緑だけど。
あ!あの植物ってまんまジョシュアツリーじゃん!今通り過ぎたのはパームツリーっぽい。それに、色んな形のサボテンが生えているなー。ずーっと砂漠ばかりだったから、色彩が加わるだけで気分が高揚してくる!
…うん。ベル、悪かったよ。だから、浮かれてる場合じゃねえ!ってジト目で尾っぽ振るのやめてくれ。
「魅了師殿。そろそろ『流浪族』の天幕が見えてきます」
「え?流浪族?」
「はい。オンタリオ王国は数多くの少数民族が集まり、小国を吸収して興された国家です。その中で『国』という枠組みを嫌い、未だ砂漠を転住する民族達を総じて『流浪族』と呼んでいるのです」
説明を受けている間にも、砂漠色をしたテントが幾つか固まっているのが見えてきた。これだけ数のある火竜が走ってくるからだろう。警戒の色を強く浮かべた男達が、テントを守るように外に立っている。中には剥き出しの剣を持ってる人達もいた。
当然、俺達は彼らに用はないので挨拶もなくあっという間に通り過ぎて行ったわけだけど、その際にざっと観察するのは忘れない。
彼らの服はアラブ風の装束で、地球の砂漠に住むベドウィン族そのものだった。これでラクダがいれば完璧だったけど、男達の側に繋がれているのは火竜達なのが、此処は異世界なんだって改めて実感する。
...待てよ。流浪族の皆さん、俺達..いや正しくはシェンナ姫を迎えに行く火竜の群れを見てる筈。行きはラシャドが先陣切ってたのに、帰りは謎の仮面男と男女ペアだもん。そりゃ警戒マックスにもなるよね。
そう言えば流浪族の皆さん、火竜の軍勢…ってより俺を集中ガン見してたような…。
「あの人達は、オンタリオに自治権を認められてるのかな?」
「前王は、幾度となく彼らを国に併合させようとして、小競り合いを繰り返していたらしいです。けれど今の王は穏健派なので、彼らの好きにさせていると」
「へぇ、今の国王ってコリン王太子の父親だよね?」
「はい!コリン様は、父である陛下のご気性を受け継がれたと、前宰相様が仰っておりました」
俺の問いかけに最初はザビア将軍が、そして次はシェンナ姫が答えてくれた。
成る程、大方コリン王太子の祖父がかなりの暴れん坊だったのか。で、父親は戦争よりも外交に力を入れていて、王太子も同じだったと。
『益々、国王主体の陰謀には思えないなぁ…』
現国王の統べるオンタリオと、ザビア将軍達の父親が統べるカルカンヌは友好国だったし、コリン王太子とシェンナ姫も..互いを想いあってた。
姫が成人する前に婚約、そして成人後に結婚すればどちらにもハッピーエンドだったじゃないか。
『それを強引に…。これって輿入れじゃなくて拉致だ。国王にも王太子にもメリットなし。もしや、彼らは『魅了』に掛かっている?そして、画策した奴…奴らが急がなければならない理由…』
宰相が今回の企みの中核にいるのは間違いない。
けれど、個人でかといえば疑問系だ。現国王が「穏健派」…って事は、反対勢力みたいなのもいるんだろう。例えば前国王みたいに好戦的な「強固派」とか。
だったらバティルがその派閥に与していて、グリフォンを呪って力を奪い、尚且つシェンナ姫を何らかの理由で無理矢理輿入れさせて国家乗っ取りを企てる…なんて考える事もできる。
で、やっぱり「何で?」「どうして?」って同じ疑問にぶち当たるんだよ。そもそも、オンタリオ国の内情なんて全然分からないし。
『やっぱり情報が足りないなぁ…』
俺はチラリと進行方向に鎌首を向けているベルを見る。バティルが肩に乗せていた鴉の事を聞いてから、こいつの様子が明らかに変わった。何かを察したというより、疑っているような…思案してるような。
「諸悪の権化」とは何なのか?ひょっとして、俺が懸念している通りなのか。しかも「炙り出す」とかも言ってたけど、それってどういう事なんだ?
でもそれについて尋ねてみても、『あくまで推測だ』と素っ気なく言い放たれて終了。
フウは魔鳥と仲良くなったみたいで、俺の頭の上に乗ってお喋り(?)に興じてる。
「なぁフウ。スラッシュさ、バティル情報持ってないかな?」
『えーっと、よく分からないみたい。使役されたのついさっきみたいだし、『目』をつなげてただけだって』
フウの言葉を肯定するみたいに、クォッと鳴いて頭を上下させる魔鳥。火竜もそうなんだけど、人の言葉を解した反応がとても和むなぁ~…って、そうじゃなくて!
「う~ん…。やっぱ駄目か」
一応ボス火竜にも、ベルにバティルの事訊いてもらったんだよな。そしたら、使役と呪いを受けたのが意外にも二年前と最近だったのが判明。
けど、それからは「不快な『縛り』を受けていた」「主に解放されるまで、己の意志は抑えられていた」って訳で、個人情報はほぼ無しだった。
まあ、普段は帝国の城門外の宿舎に待機してるらしいし、あんまり期待はしてなかったけど。
ちなみに「主」とは...やっぱり使役してしまった俺の事らしい。
『ユキヤ。火竜が言うには、オンタリオまで後少しらしい。時間が無いんだ、さっさと指示した通りやっとけ』
『え?そうなんだ!分かった』
ベルに言われ、俺は慌てて後方にいるザビア将軍とシェンナ姫を振り返った。
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