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第五章
出立
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カルカンヌ王国を発って2日目。
オンタリア王国との国境としてそびえ立つ連峰を丸一日かけて越え、辿り着いた先には、広大な砂漠が広がっていた。
「まるでサハラ砂漠のようだな」
見渡す限りの砂、砂、砂の世界に、思わずそう口にする。だけどサハラ砂漠とは違い、見れば所々に小さなオアシスと呼べるような場所が点在している。
「私が以前こちらを訪れた時より、オアシスが増えましたね」
隣に立っているザビア将軍が感心しきりといった風に呟く。
へぇ、こちらの世界でもオアシスって言うんだ。
ザビア将軍によれば、なんでもコリン王太子が先頭に立ち、緑地化に尽力している結果なのだそうだ。以前は本当に僅かな草すら生えていなかったらしい。…って、そんな砂漠にオアシス造っちゃうなんて、コリン皇太子って何気に凄くないか。
『多分だが、そのコリンとやらは地の精霊と相性が良いんだろう。四大精霊の中でも奴らは特に実直な人間を好むからな』
ベルの言葉に、試しに近くのオアシスに意識を集中してみれば、本当に幾つものノームの気配を感じた。
「…本当に、シェンナ姫の言っていた通りの人だったんだな」
そうでなければ王族なのに、自ら砂漠を緑地化しようと行動しないだろう。
しかもこうして地の精霊の力を借りて、着々とオアシスを増やしているのだから。
「それにしてもさ。自分達で歩かなくて済むのは有り難いけど、出来れば空中移動の方が良かったな。空からなら一日もかからなかっただろうし」
そう言いながら、固まった身体をほぐすように伸びをする。なんせ国境迄は馬車で、ここに来るまではずっと籠で移動していたのだから。そんな俺の言葉にザビア将軍が苦笑する。
「貴方だけならともかく、下位精霊一柱だけでは、私やシェンナまで一緒に運べませんからね」
そうなんだよね。
演出として皆で王宮に飛んで現れた時も、かなりフウに無理させてしまったからな。「マスタ~疲れた~!!」って、俺にべったりしたがったので、ベルに威嚇と威圧をしないように頼んで、フゥは無事頭や肩に乗れるようになったのだ。ちなみに今は、俺のマントの中で休んでいる。
休んでといえば。シェンナ姫は砂漠の旅の前に充分な水分と休憩をとって、それから移動し易い服に着替える為、まだ籠の中にいる。
その時、クスリ…と、ザビア将軍が笑った。
「失礼ですが、本当に魅了師殿は変わったお方ですね。凄まじい力をお持ちなのに、時折私よりも世界の理や魔法一般について疎くていらっしゃる」
内心ギクリとする。
そりゃあそうですよ。俺、貴族の箱入り息子な上、魅了師どころか魔法を使う事すら本気で初心者のド素人なんだから。
「ですが、そのアンバランスさが私にとりましては逆に…なんと言いましょうか…。とても心をくすぐると言うか…魅力的です」
「そ…そう、かな?」
「はい。時折顕現される威厳あるお姿など、意識が囚われるような錯覚すら...」
うっとりとした表情で熱く語られ、仮面内の顔を引き攣らせてしまう。え、魅力的?威厳?何だそりゃ。
ああ、もしかしたら俺(本物)とベル(偽物)との『ギャップ萌え』ってやつか…な?ん?おいベル、牙を剥きだして威嚇するのは止めなさい。
「ゲイルガ殿。ここからはどう移動するのですか?」
俺に声をかけられたゲイルガは、ビクリと思いっきり身体を跳ねさせ、まるで錆びたロボットのようにぎこちなくこちらを振り向いた。
初対面の時だけベルに交渉をお願いしたが、それ以降は別に高圧的な態度を取ってはいないんだけど…。よっぽど恐怖だったのか、その様子は明らかに挙動不審で不遜さが鳴りを潜めてる。
うん、小物感が更にレベルアップしているな。
オンタリア王国との国境としてそびえ立つ連峰を丸一日かけて越え、辿り着いた先には、広大な砂漠が広がっていた。
「まるでサハラ砂漠のようだな」
見渡す限りの砂、砂、砂の世界に、思わずそう口にする。だけどサハラ砂漠とは違い、見れば所々に小さなオアシスと呼べるような場所が点在している。
「私が以前こちらを訪れた時より、オアシスが増えましたね」
隣に立っているザビア将軍が感心しきりといった風に呟く。
へぇ、こちらの世界でもオアシスって言うんだ。
ザビア将軍によれば、なんでもコリン王太子が先頭に立ち、緑地化に尽力している結果なのだそうだ。以前は本当に僅かな草すら生えていなかったらしい。…って、そんな砂漠にオアシス造っちゃうなんて、コリン皇太子って何気に凄くないか。
『多分だが、そのコリンとやらは地の精霊と相性が良いんだろう。四大精霊の中でも奴らは特に実直な人間を好むからな』
ベルの言葉に、試しに近くのオアシスに意識を集中してみれば、本当に幾つものノームの気配を感じた。
「…本当に、シェンナ姫の言っていた通りの人だったんだな」
そうでなければ王族なのに、自ら砂漠を緑地化しようと行動しないだろう。
しかもこうして地の精霊の力を借りて、着々とオアシスを増やしているのだから。
「それにしてもさ。自分達で歩かなくて済むのは有り難いけど、出来れば空中移動の方が良かったな。空からなら一日もかからなかっただろうし」
そう言いながら、固まった身体をほぐすように伸びをする。なんせ国境迄は馬車で、ここに来るまではずっと籠で移動していたのだから。そんな俺の言葉にザビア将軍が苦笑する。
「貴方だけならともかく、下位精霊一柱だけでは、私やシェンナまで一緒に運べませんからね」
そうなんだよね。
演出として皆で王宮に飛んで現れた時も、かなりフウに無理させてしまったからな。「マスタ~疲れた~!!」って、俺にべったりしたがったので、ベルに威嚇と威圧をしないように頼んで、フゥは無事頭や肩に乗れるようになったのだ。ちなみに今は、俺のマントの中で休んでいる。
休んでといえば。シェンナ姫は砂漠の旅の前に充分な水分と休憩をとって、それから移動し易い服に着替える為、まだ籠の中にいる。
その時、クスリ…と、ザビア将軍が笑った。
「失礼ですが、本当に魅了師殿は変わったお方ですね。凄まじい力をお持ちなのに、時折私よりも世界の理や魔法一般について疎くていらっしゃる」
内心ギクリとする。
そりゃあそうですよ。俺、貴族の箱入り息子な上、魅了師どころか魔法を使う事すら本気で初心者のド素人なんだから。
「ですが、そのアンバランスさが私にとりましては逆に…なんと言いましょうか…。とても心をくすぐると言うか…魅力的です」
「そ…そう、かな?」
「はい。時折顕現される威厳あるお姿など、意識が囚われるような錯覚すら...」
うっとりとした表情で熱く語られ、仮面内の顔を引き攣らせてしまう。え、魅力的?威厳?何だそりゃ。
ああ、もしかしたら俺(本物)とベル(偽物)との『ギャップ萌え』ってやつか…な?ん?おいベル、牙を剥きだして威嚇するのは止めなさい。
「ゲイルガ殿。ここからはどう移動するのですか?」
俺に声をかけられたゲイルガは、ビクリと思いっきり身体を跳ねさせ、まるで錆びたロボットのようにぎこちなくこちらを振り向いた。
初対面の時だけベルに交渉をお願いしたが、それ以降は別に高圧的な態度を取ってはいないんだけど…。よっぽど恐怖だったのか、その様子は明らかに挙動不審で不遜さが鳴りを潜めてる。
うん、小物感が更にレベルアップしているな。
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