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第四章
オンタリア王国の勅使
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「カルカンヌ王よ、シェンナ姫様はまだいらっしゃらないのですかな?」
謁見の間にて、ラフネと対峙した男は、居丈高な態度を隠そうともせずにそう口にした。
「うむ。いずれ参ると思うが…。使者殿をお待たせし、申し訳ない。」
そんなラフネに対し、男は口角を上げ下卑た笑みを浮かべた。
「今度こそ本当に王女は来られるのでしょうな?いつもそう仰っては、聖獣様からのお許しが出ない、やれ体調が悪いと何度無駄足を踏んだことか。彼の巫女姫は大変に病弱なのですなぁ。…ああ、そうだった。この国の王族には魔獣の血が流れていらっしゃるから、普通でいらっしゃらないのは当然か。いやはや、純粋な人間ではないということは、大変ですなぁ!」
明らかに侮蔑を含んだ言葉に周囲の者逹は一斉に気色ばむ。
だが、王は無言で周囲を見回し、抗議しようとする者逹を黙らせた。
この男の名はゲイルガ。この国が異常気象に曝された後、勅使としてこの国を訪れるようになった男だ。
痩せぎすで狡猾そうな小男。
お世辞にも傑物とは言い難く、とてもではないが国同士の交渉役を司るに足る者ではない。
オンタリアがまだ友好国であった頃には見たことがない顔だった所を見るに、オンタリア王国にも我が国同様、何かしら不穏な事が起こっているのかもしれない。あの温厚だった王太子が変わってしまったのも、あるいは…。
その時だった。外をにわかに騒がしくなった。
「失礼します。王よ!シェンナ姫様、ご到着に御座います!」
「…分かった。姫をこれに」
「おお、やっとですかな?!」
周囲の重苦しい雰囲気とは対照的に、喜色全開にするゲイルガ。だが、姫の到着を知らせに来た兵士は何故か困惑顔で外を気にしている。
「どうしたのだ?」
「いえ、あの…。どうぞ外へ」
「?」
ラフネは訳も分からず席をたつと、謁見の間から続く吹き抜けの回廊へと向かう。それを見た臣下やゲイルガ逹も、慌てて王の後を追った。
「な、何だ!?あれは!」
ゲイルガが空を見上げ、声をあげる。
兵士に案内された王や臣下逹が見たのは、以前黒の魅了師がこの国にやって来た時と同じく、空中に浮かんでいるザビア将軍とシェンナ姫、そして黒の魅了師の姿だった。
『く…黒の魅了師殿!?ザビア…何故だ!?彼の身分はただの薬師とすると伝えていた筈なのに!!』
驚愕で絶句している王逹の姿を確認すると、彼らはフワリと回廊に降り立った。
「な…な…?!」
しばし呆けていたゲイルガだったが、地に足をつけた彼らを指目し我に帰る。
将軍とシェンナ姫と共に現れた、全身黒ずくめの仮面を被った男。だが、自分がオンタリア王国の特使。無様に狼狽てなるものかと腹に力を込め口を開いた。
「おい、貴様!何者だ!?」
奇異な出立ちの男を警戒しながらも、虚勢で胸を張りながら怒鳴り声をあげる。だがその顔にはまざまざと怯えの色が浮かんでいた。
当の黒ずくめの仮面男は、ゲイルガの方に顔を向けると静かに一歩、前に足を踏み出した。思わずといった様子でゲイルガの身体が後ろに下がる。
「…何だこの男は。俺がこちらを離れていた隙に、ドブネズミでも紛れ込んだか?」
静かに発せられた言葉の内容に、一瞬呆けたゲイルガの顔が、みるみる怒りで真っ赤に染まった。
謁見の間にて、ラフネと対峙した男は、居丈高な態度を隠そうともせずにそう口にした。
「うむ。いずれ参ると思うが…。使者殿をお待たせし、申し訳ない。」
そんなラフネに対し、男は口角を上げ下卑た笑みを浮かべた。
「今度こそ本当に王女は来られるのでしょうな?いつもそう仰っては、聖獣様からのお許しが出ない、やれ体調が悪いと何度無駄足を踏んだことか。彼の巫女姫は大変に病弱なのですなぁ。…ああ、そうだった。この国の王族には魔獣の血が流れていらっしゃるから、普通でいらっしゃらないのは当然か。いやはや、純粋な人間ではないということは、大変ですなぁ!」
明らかに侮蔑を含んだ言葉に周囲の者逹は一斉に気色ばむ。
だが、王は無言で周囲を見回し、抗議しようとする者逹を黙らせた。
この男の名はゲイルガ。この国が異常気象に曝された後、勅使としてこの国を訪れるようになった男だ。
痩せぎすで狡猾そうな小男。
お世辞にも傑物とは言い難く、とてもではないが国同士の交渉役を司るに足る者ではない。
オンタリアがまだ友好国であった頃には見たことがない顔だった所を見るに、オンタリア王国にも我が国同様、何かしら不穏な事が起こっているのかもしれない。あの温厚だった王太子が変わってしまったのも、あるいは…。
その時だった。外をにわかに騒がしくなった。
「失礼します。王よ!シェンナ姫様、ご到着に御座います!」
「…分かった。姫をこれに」
「おお、やっとですかな?!」
周囲の重苦しい雰囲気とは対照的に、喜色全開にするゲイルガ。だが、姫の到着を知らせに来た兵士は何故か困惑顔で外を気にしている。
「どうしたのだ?」
「いえ、あの…。どうぞ外へ」
「?」
ラフネは訳も分からず席をたつと、謁見の間から続く吹き抜けの回廊へと向かう。それを見た臣下やゲイルガ逹も、慌てて王の後を追った。
「な、何だ!?あれは!」
ゲイルガが空を見上げ、声をあげる。
兵士に案内された王や臣下逹が見たのは、以前黒の魅了師がこの国にやって来た時と同じく、空中に浮かんでいるザビア将軍とシェンナ姫、そして黒の魅了師の姿だった。
『く…黒の魅了師殿!?ザビア…何故だ!?彼の身分はただの薬師とすると伝えていた筈なのに!!』
驚愕で絶句している王逹の姿を確認すると、彼らはフワリと回廊に降り立った。
「な…な…?!」
しばし呆けていたゲイルガだったが、地に足をつけた彼らを指目し我に帰る。
将軍とシェンナ姫と共に現れた、全身黒ずくめの仮面を被った男。だが、自分がオンタリア王国の特使。無様に狼狽てなるものかと腹に力を込め口を開いた。
「おい、貴様!何者だ!?」
奇異な出立ちの男を警戒しながらも、虚勢で胸を張りながら怒鳴り声をあげる。だがその顔にはまざまざと怯えの色が浮かんでいた。
当の黒ずくめの仮面男は、ゲイルガの方に顔を向けると静かに一歩、前に足を踏み出した。思わずといった様子でゲイルガの身体が後ろに下がる。
「…何だこの男は。俺がこちらを離れていた隙に、ドブネズミでも紛れ込んだか?」
静かに発せられた言葉の内容に、一瞬呆けたゲイルガの顔が、みるみる怒りで真っ赤に染まった。
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