110 / 194
第四章
再契約
しおりを挟む
「ですが本来でしたら、私が携わるのはおふたりを連れ戻すまで。契約はここで成立しますので、それ以降の事は…」
「え?!黒の魅了師殿!?」
暗に「俺の仕事はここまで」と匂わせると、途端に王様が顔色を無くして喰い付いてきた。
「そ、そうでしたな。確かに貴方との契約は聖獣様とシェンナを連れ戻すまでと定められておりました。で、では新たに契約を結ばせて頂く事は!?」
「可能…ではありますが…。さて、どうするか…」
よしよし、やっぱりそうきたか。
そもそも、血の誓約では『相手を魅了してでも無傷で連れ戻す』までが依頼の全てで、アフターケアまでは依頼内容に含まれていない。
なのでその先は預かり知らない事として、さっさとずらかってもいいわけだ。
案の定、王様は顔色不良でオロオロしている。まあ、こんな短時間で依頼達成したのだ。その先のケアも…と望む気持ちは分かるけど、『血の誓約』はあくまでビジネスであり、慈善事業ではないのだ。
…なんて偉そうな事言ってるけど、私的な感情に流され、思い切り慈善事業する気満々だった俺がそれを言うか?って感じだよな。ほら、ベルがジト目で俺を睨んでるし。
「黒の魅了師殿!お望みのものがあれば、可能な限り差し上げます!私の命を差し上げてもいい!どうか…どうか、シェンナを…!」
「…成程。ならば一考する価値はありそうですね」
――まあ最も、命は要らないけどね。
「ですが私は、よっぽどの事情が無い限り、同じ人間から二度依頼を請けない事にしています。そうですね…。では、そちらのザビア将軍からの依頼とするならば、お請けしましょう」
「――ッ!?何故、ザビアを…?」
「彼も王家の一員。違いますか?」
「…ザビアとは、お会いしたばかりの筈。なのに見抜かれておられたとは…。私は貴方の力の偉大さを、まだまだ理解していなかった…という事なのですね」
――いえいえ、確かに彼とは会ったばかりですが、しっかり自己紹介して頂きましたので。
しかも、王様の前では黒の魅了師の威厳を出す風の口調や態度してるけど、彼やグリフォン達には思いっきり地を出してました。
なんて、相変わらず心でツッコミを入れてしまう俺。
「分かりました。では我が息子であるザビアを国王代理として、貴方様との誓約を…」
「あ、シェンナ姫様のお輿入れ後に魅了の力を解くだけなので、『血の誓約』は不要です。その代わり、それなりに対価は頂きますけどね」
そう言うと、王様はあからさまにホッとした様子だった。
そりゃそうだよな。血の誓約ってのは互いに対する縛りが極限に強い。下手すれば寿命まで削られてしまうような誓約だ。つまりは互いに裏切れないようにしている、マジもんの契約。任侠ドラマで言えば「命、預けます」的な?そんなもんを大切な息子に結ばせたくないのは親として当然だろう。
「ああ。黒の魅了師殿、感謝致します!」
「いえ。あ、王様。ザビア将軍にはこのまま残って頂きたいのですが。今後の王宮との連絡係として」
一国の将軍…しかも皇太子を連絡係にしてしまって気を悪くしないかと思ったが、王様は当然とばかりに快く了解してくれた。余程グリフォンと姫様が無事に戻った事が嬉しかったのだろう。
…でもなぁ…。なんだかなぁ…。
王様、一度もグリフォンと目を合わせようとしないんだよ。魅了を解くのも、シェンナ姫の事だけしか口にしていないし。国の守護神云々よりも、ずっと自分達を見守ってくれていた大切な身内じゃないか。
後ろめたい気持ちは分かるけど、その態度は無いんじゃないのかな?まぁ、よそ様の事情に首ツッコむ権利はないけどさ、何だか凄いモヤモヤするな。
「え?!黒の魅了師殿!?」
暗に「俺の仕事はここまで」と匂わせると、途端に王様が顔色を無くして喰い付いてきた。
「そ、そうでしたな。確かに貴方との契約は聖獣様とシェンナを連れ戻すまでと定められておりました。で、では新たに契約を結ばせて頂く事は!?」
「可能…ではありますが…。さて、どうするか…」
よしよし、やっぱりそうきたか。
そもそも、血の誓約では『相手を魅了してでも無傷で連れ戻す』までが依頼の全てで、アフターケアまでは依頼内容に含まれていない。
なのでその先は預かり知らない事として、さっさとずらかってもいいわけだ。
案の定、王様は顔色不良でオロオロしている。まあ、こんな短時間で依頼達成したのだ。その先のケアも…と望む気持ちは分かるけど、『血の誓約』はあくまでビジネスであり、慈善事業ではないのだ。
…なんて偉そうな事言ってるけど、私的な感情に流され、思い切り慈善事業する気満々だった俺がそれを言うか?って感じだよな。ほら、ベルがジト目で俺を睨んでるし。
「黒の魅了師殿!お望みのものがあれば、可能な限り差し上げます!私の命を差し上げてもいい!どうか…どうか、シェンナを…!」
「…成程。ならば一考する価値はありそうですね」
――まあ最も、命は要らないけどね。
「ですが私は、よっぽどの事情が無い限り、同じ人間から二度依頼を請けない事にしています。そうですね…。では、そちらのザビア将軍からの依頼とするならば、お請けしましょう」
「――ッ!?何故、ザビアを…?」
「彼も王家の一員。違いますか?」
「…ザビアとは、お会いしたばかりの筈。なのに見抜かれておられたとは…。私は貴方の力の偉大さを、まだまだ理解していなかった…という事なのですね」
――いえいえ、確かに彼とは会ったばかりですが、しっかり自己紹介して頂きましたので。
しかも、王様の前では黒の魅了師の威厳を出す風の口調や態度してるけど、彼やグリフォン達には思いっきり地を出してました。
なんて、相変わらず心でツッコミを入れてしまう俺。
「分かりました。では我が息子であるザビアを国王代理として、貴方様との誓約を…」
「あ、シェンナ姫様のお輿入れ後に魅了の力を解くだけなので、『血の誓約』は不要です。その代わり、それなりに対価は頂きますけどね」
そう言うと、王様はあからさまにホッとした様子だった。
そりゃそうだよな。血の誓約ってのは互いに対する縛りが極限に強い。下手すれば寿命まで削られてしまうような誓約だ。つまりは互いに裏切れないようにしている、マジもんの契約。任侠ドラマで言えば「命、預けます」的な?そんなもんを大切な息子に結ばせたくないのは親として当然だろう。
「ああ。黒の魅了師殿、感謝致します!」
「いえ。あ、王様。ザビア将軍にはこのまま残って頂きたいのですが。今後の王宮との連絡係として」
一国の将軍…しかも皇太子を連絡係にしてしまって気を悪くしないかと思ったが、王様は当然とばかりに快く了解してくれた。余程グリフォンと姫様が無事に戻った事が嬉しかったのだろう。
…でもなぁ…。なんだかなぁ…。
王様、一度もグリフォンと目を合わせようとしないんだよ。魅了を解くのも、シェンナ姫の事だけしか口にしていないし。国の守護神云々よりも、ずっと自分達を見守ってくれていた大切な身内じゃないか。
後ろめたい気持ちは分かるけど、その態度は無いんじゃないのかな?まぁ、よそ様の事情に首ツッコむ権利はないけどさ、何だか凄いモヤモヤするな。
5
お気に入りに追加
936
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる