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第二章

回顧④【ベリアル視点】

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しかも「自分は異性愛者ヘテロだ!」とキッパリ言い切った割りに、男同士の性交渉にやたらと詳しいというのは、一体なんなんだ?

一回、何故そんなに男同士の性知識があるのか呆れ半分に聞いてみたところ、「腐界に沈んだ身内に、無理矢理色々な沼へ道連れにされたから」と、理解不能な言葉を呟いて、死んだ魚のような目になっていた。

「身内とは…ユキヤが俺を呼び出す切っ掛けになったという、この国の王子に懸想されたという弟の事か?」

そう聞いたら、凄い勢いで否定された。じゃあ両親かと聞けば、それも全力で否定された。じゃあ一体、その身内とやらは誰なんだ?と聞けば、全力で目を逸らされた。

しかし…『魔界』ではなく『フカイ』とは、一体どこの世界の事なのだろうか。

この悪魔公デーモンロードをも手こずらせる程の知識を身につける事の出来る世界があるとは…。是非とも一度、行ってみたいものだ。(ユキヤにそう言ったら、全力で止められたが)






ともかく、ユキヤは第二王子との決闘に備え、俺以外の従魔を得るべく召喚術を何度も試していたが、どれもこれも、ことごとく失敗していた。

まあ、当たり前だな。

ユキヤ極上の魔力に喜んで応じようとすれば、その先に俺の気配があるのだから。普通の魔獣ごときでは恐ろしくて逃げ帰るしかないだろう。

あまりにも失敗する事にブチ切れ、ユキヤの母親がやけくそでユキヤに魔獣よりも上位の幻獣系の召喚をさせ始めた。

幻獣とは、ドラゴンやグリフォンなどのあらゆる国家が警戒する災害級レベルの魔獣だ。
そいつらも、俺が殺気を放てば大半は今迄の魔獣達同様、怯えて出てこなかった。が、中には根性見せて出現しようとする奴らもいた。そういった身の程知らずは召喚直前、殺さぬ程度に潰している。

そんな事を繰り返していたら、魔獣達が一切、召喚に応じる事をしなくなった。

ふん、やっと諦めたか。ユキヤから「ベル~!お前なぁ!」と、散々文句を言われたが、知った事か。

仕方なく、周囲はユキヤに魔法剣士としての手ほどきをし始めた。ふむ。まあ確かに悪くはない選択だ。

ユキヤの魔力は『魅了』のスキル無しでも十分強い。

結果的にだが、俺が魔力循環を安定させたので、ユキヤは以前使えなかったという魔法をなんなく使用する事が出来るようになったらしい。
それに元々得意だったという武術や剣術を組み合わせれば、確かに付け焼刃な召喚術を使うより効果的に相手を潰せるだろう。

後は俺がこの世界に睨まれない程度に、こいつに助力してやればいい。

――俺は仮契約の際、ユキヤに『対価を貰えば助ける』と条件をつけてしまった。

既に魅了で縛られているこの身を悟らせぬ為、等価交換の体を取った。その所為で、対価を貰わずこの世の者に力をふるえば、この世界からペナルティを喰らってしまうという厄介な身となっているのだ。

「気が向いたら助けてやる」とユキヤに言ってはいるが、とどのつまり、よっぽどの時でなければ助けてやることが出来ない。下手すれば魔力不足でこの世界に存在する事が出来なくなってしまう。

そうなってしまえば、ユキヤの望み通りに契約は解除され、魔界に帰らざるを得なくなってしまう。そうなったら仲間内からいい笑い者にされてしまうだろう。

いや、それよりも重要な事は…。そうなってしまえばユキヤはこれ幸いと大喜びし、俺を二度と召喚しないに違いない…という事実だ。

ただでさえ、「契約解除してもいいんだけど」と言い続けていやがるのだから、それは間違いないだろう。そもそも俺を召喚した事自体が「うっかり間違えて」だったのだから。

…まあ、そんな奴だからこそ、俺は興味を持った訳なのだが。

悪魔公デーモンロードを使役する』

これはかの魔術王ソロモン以降、どの召喚士でも成し遂げられなかった偉業だ。なのに本人は全くそんな事に興味が無い。

望めば世界すら手に入れられるかもしれないのに、望んだのは「弟を助ける」ただそれだけ。

それすらも俺を頼ろうとせず、自力で何とかしようとする。こんな無欲で変な奴、俺の永い永い生の中で見た事が無い。

こいつは知らないだろう。自分の何気ない行動や考え方で、人間人外問わずにどれだけ多くを魅了しているのかを。そして、お前の身も心も狂おしく欲してしまう事を。

覚えていろ。最強最悪と謳われているこの俺を魅了したその落とし前は、いつかキッチリと払ってもらうからな。
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