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第一章

うっかり知ってしまった衝撃的事実

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「は?!え?俺?!」

なんだそれは。何で愛するテオではなく、俺に決闘申し込むんだよ?!

「それはだな、テオが最も大切に思っている相手を下す事で、自分の価値を認めさせようとしている…んではないかと。ついでに敗北させて、自分の支配下に置いたお前を解放する条件として、テオに婚約を認めさせるつもり…なんじゃないかな?」

「猿の浅知恵」

「どう考えても、余計嫌われるよね」

「…どうやら相当な残念王子のようだな」

「テオもとんでもない相手に惚れられたものだ。前言撤回。子供同士の問題に親が出るのはマナー違反だが、可愛い息子がそんな白雉の伴侶になるのは認められん。ウェズレイに動いてもらって、何とかするとしよう」

その場にいる全員が、半目になりながら王子様に対して不敬なお言葉を述べている。が、俺も皆と同意見。

なんかね、もう本当にアホかと。

そんな事するよりも、相手に誠心誠意謝った上で自分磨きとかすればいいのに。

これはあれか。徹底的に甘やかされて、自意識過剰になってしまった口なんだろうな。可哀想に(主に頭が)。

――そこでふと、疑問がわく。

そもそもその王子様、なんでテオ自身に決闘を申し込まなかったんだろう。

「あ~…いや、それがな…」

エイトールの話によれば、最初求婚を断った時点で決闘は申し込んでいたらしい。

だがテオは「受けてもいいが、私が勝てば当然、以後の求婚は諦めていただきます。そして負けたら、私はその場で自決しますから」と言い放ったそうだ。

なるほど。それじゃあ勝っても負けても王子様としては困るよな。

だからって、俺にふるなよ!しかも、当然自分が勝つのが前提っぽい所がなんとも。

「成る程、話は分かった。しかし、決闘は立会人の元、直接相手に申し込むのが決まりだ。どうやって王子がユキヤに決闘を申し込むのだ?王族と言えど、我が家に無理矢理乗り込む事など出来ぬし、万が一そうして申し込んでも、それは正式な決闘とは認められない」

父さんの言葉に、俺は思いっきり内心で頷く。

自慢じゃないがアスタール公爵家は王族とも親戚筋である、この国きっての名家。
その上最高外交官として諸外国にもツテを持っている。王家と言えど、アスタール公爵家を敵に回すような無茶は、おいそれとは出来ない。

だからこそ俺は「病弱」を理由に社交界デビューもせず、こうして半引きこもり生活を続けられていられるのだから。

「……今から一週間後に、ローレンス王子の誕生を祝う宴が催されます。場所は王子のご希望で、急遽王立学院内で。しかもこの国における十代の貴族の師弟は、全て強制的に参加を命じられます。ユキヤも当然それに含まれますから、当主様が王城に呼ばれたのは、それを王から直々に伝えられる為かと」

「馬鹿な!なんなのだ参加を強制などと!あり得ん!」

エイトールの言葉に父さんが気色ばむが、続いての台詞がそれに待ったをかけた。

「王子いわく『これは勅命だから、逆らえないよ』だそうです」

「勅命…!?」

途端、父さんと師匠の顔が緊張する。

聞けば「勅命」とは国の最高権力者が発する絶対命令で、それに逆らう事は国家への反逆と取られる程に重いものなのだそうだ。無論、アスタール公爵家がどれ程力を持っていようが、勅命には逆らえない。そして一旦発せられた勅令は撤回出来ないのが基本との事。

その性質上、勅命が発令されるのは国家の存亡的危機の時が殆どで、代々の王でも勅命を一回も出さずに終わる者の方が多いぐらいらしい。

「なのに、たかだか第二王子の希望を叶える為だけに勅命が出されるとは…」

「はい。まあ、まだ勅命そのものは出されていないので、真偽のほどは分かりません。王子が勝手に言っている可能性の方が高いですからね。ですがテオは万が一を考え、その事を家族に知らせて欲しいと頼んできました。今ならラヴィーンの守護神であり、ユキヤの御生母であられるベハティ様がいらっしゃるからと」

「…は?生母?」

思わず父さんと師匠の方を振り向くと、「しまった」って顔している。

え?母?師匠が?俺を産んでくれた人?マジで?!で、でも確か父さん、師匠とは小さい頃に出逢ったって言っていなかった?しかも大叔母上って、たまに呼んでるぞ?…どんだけ歳の差あるんだ…?

「…あの…。ひょっとして俺、まずい事言ってしまいました?」

エイトールがおずおずとそう言ってくるが、俺達はそれに答えず。…いや、答えられずに暫くの間見つめ合い、固まっていた。
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