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第一章

第二王子に決闘を申し込まれるらしい

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世間的には、アスタール公爵家の正当な跡継ぎはテオことテオノア。俺は観賞用の名ばかり長子と呼ばれていると小耳に挟んだことがあるけど……それって本当だったんだな。

まあ、それもそうかなと納得できるから腹も立たないけど。
なんせテオはアスタール公爵家直系の血を継いでるし、貴族の師弟なら必ず通う王立学院にしっかり通っている。

王立学院は、貴族の息子や娘が知識と教養、人脈を得るために通う場所だ。

そこに通わず、しかも16……いや、もうすぐ17だが、そんな年になってまで社交界デビューもまだ。おまけにアスタール公爵家の血が一滴も入ってないのだから、そう言われているのも仕方がない。

それに俺としては、公爵なんて窮屈で大変そうなものになりたくないってのが本音だ。

親父たちはその辺、どう考えているんだろう。庇ってくれるテオには悪いんだけど、俺は出来ればテオにこの公爵家を継いでもらいたい。

「テオの方が次期公爵に相応しいってのは本当なんだよな…」

何気なく口にした呟きに、途端エイトール、アドルファス、キーランの目がクワッと見開かれた。

「何を言っているんだ!!お前以上に次期公爵に相応しいヤツなんていないぞ!!あのバカ王子は、お前の魅力を知らないからそんな事を言いやがるんだ!!」

「その通り!王子だろうが国王だろうが、一族の誇りであるお前を貶めるなど言語道断!!極刑に値する!!」

「テオも僕も、君を守る為ならどんな事でもする!もしあのクソ王子が君を害しようとしたなら、王家に反逆してでも…」

「ストップ!!キーラン、冗談でもそういう事言うなよ!?みんなも気持ちは有難いけど、ひとまず落ち着け!!」

まさに殺気立つという言葉が相応しい程の皆のキレっぷりに、慌てて諫める。
本当に、王族に対してバカだのクソだの反逆だの…。誰かに聞かれでもしたらどうするんだ。

そんな様子を黙って見ていたベハティが、ユキヤに聞こえない程度の声でボソリと呟いた。

「…ユキヤに対して普通の態度で接しているから珍しいと思っていたのだが。彼らもしっかり、ユキヤ狙いなのだな」

「ええ。彼らの場合好きの周回突き抜けて、逆に普通に見えているだけです」

「なるほど。好き過ぎて、逆に欲望と本能が抑えられている状態か。つまりウェズレイと同類という事だな」

「……そうですね」

つまり今は普通に接しているが、何かのリミットが外れたら超危険という事だ。

良い子達なので交流を許してはいるのだが、彼らはテオ同様、一族屈指の魔力保持者達。いきなりユキヤとの婚約をかけて決闘を申し込まれでもしたら大変だ。今後はよくよく注意しておかなくてはならないだろう。

「まあ…とりあえず話を戻しますが…」

少し冷静になったのか、エイトールが咳ばらいを一つした後、再び口を開く。

「ようするに、問題はテオに対する嫌がらせではありません。本人が全く気にしていませんから。実はその事こそが問題でして…。嫌がらせも効果なし、再三にわたる口説きにもなびかないテオにキレたローレンス王子が、強硬策を打ち出したんだそうです」

「強硬策?ああ、ひょっとしてテオに決闘を申し込んだのか?」

「いや、違います。その…。決闘を申し込む相手はユキヤです。本日、ローレンス王子がテオ本人にそう宣言したそうですから」

予想もしていなかったエイトールの台詞に、ユキヤは思わず飲んでいた紅茶を噴き出した。
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