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第一幕 終焉の物語と殉教者たち
三:③
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淡々とした返答があった。遙は納得したくない事実に、俯く。たった一人の意思でどうこうできる事ではないのは理解していた。どんなに悩んで気を揉んだとしても、もう知れる立ち位置には居ないのだ。何かをしようとも出来ないほど遠く離れてしまったのである。
「・・・・・・・・・・日本で暮らしていない旅行に訪れた人たちは・・・・・・・」
脳裏に過ぎったのは、あの時に遙達と共に目撃することになった、一般人には見ることの出来なかっただろう、異形の姿だ。壁蝨の姿に酷似したソレを見て、家族の安否を確かめるために、遠く離れた故郷に連絡を取っていた、日本に遊びに来ていた青年。
それに対して返った声がある。
『“末裔”と呼ばれるようになる』
それを聞いて息をのむ。
「・・・・・・もう、家族に会えないんだね? じゃあ、逆に海外に旅行や出張に出ている人たちも・・・・・・」
『ああ、そうだ。同じ立ち位置だ。日本人の末裔と、呼ばれるようになる』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『日本に訪れ、あの日に居た、全ての人々が、新しい世界で“始まりの人類”と、呼ばれるようになる。今のように、国別で呼ばれる事ではなく、総じて人類と、カテゴリーで“人”として、区別されるのだ』
遙は深く深くため息を吐いた。どんなに、悩んでも、“こうなってしまった”のだ。旅行に来ていた人たちにとって、運が悪いことに、故郷に置いてきた人々と、突然永遠の別れをしたことになる。彼らは事態を把握したら、それぞれの国の代弁者である領事館に問い合わせをすることになるだろう。領事館に勤める職員達が中心となって、彼らを支えていくことになる。大変な騒ぎになるだろう。物価の上昇もある。何しろもう他国から輸入をすることが現時点では出来ないのだから。これからは、本当の意味での内需拡大をしなければならない。輸入に頼った、食糧確保ではなく、自国生産でもって、国民の食生活を支えなければ生きていけないのだ。農業従事者を増やして生産効率を上げなければ、支えられない。例え国の支援でもって増やしたとしても、すぐに補える類ではないから、様々な物価が高騰しそうだ。遙は現在の国のトップを含めた面々を脳裏に浮かべて、項垂れ頭を抱えたくなる。それぞれの派閥争いと有利性を主張するあまり、即決というのが得意でないことが、普段の政治討論をテレビ中継で見れば解ると言うものだ。
(何しろ、議会中に居眠りしている議員が目立つからねぇ・・・・・・)
真剣に国を憂い、行動を起こしているんだと、そう見ただけで思えるような相手が少なく見えるのは、己が穿った見方をしているせいかとも思うが、何はともあれ賽は投げられたのだ。
遙は軽く己の頬を叩く。遙にはそこまで責任を負う必要はない。国を反映させ維持して行くのは、それを職業として、国民から税金という賃金でもって支払われている、政治家達の役目だろう。遙はただ、自分の担った役目を果たすだけだ。遙の現在の役目は、抱えている「日の本」という名の世界樹の、あの日までに過ぎて成長した記憶する時間までの育成。それから先の未来は、世界樹が器であり半身である星と紡いでいくはずだ。
(まずは、環境を生み出すための、土台を集めることかな・・・・・・)
世界樹の根本に僅かに敷き詰められた、腕の中の鉢植えの底の、土を見つつ嘆息する。
(今までと違う環境・・・・・・・いや、今までの環境に要素を加える、というべきか?)
知識が希望する様々なファンタジィ要素。小説や童話、ゲームなどといった中にしか現在は存在しないモノを脳裏に浮かべる。
(けっこうごちゃごちゃするなぁ・・・・・・けど、下手すると、馴染ませる環境は一カ所以上になる)
遙は深くため息を吐いた。
(そんなのが実現したら、はっちゃける人たちも居るだろうね?けど・・・・・・・)
退屈する暇もない、新しい世界の幕開けになる。遙は小さく笑うと呟いた。
(人知れず、その始まりに手を貸したというのが、わくわくするかもね?)
そんなことを考えていると、周囲が濃霧に包まれ、気がつくと見知らぬ森の中に立っている自分に気がついた。
「・・・・・・・・・・日本で暮らしていない旅行に訪れた人たちは・・・・・・・」
脳裏に過ぎったのは、あの時に遙達と共に目撃することになった、一般人には見ることの出来なかっただろう、異形の姿だ。壁蝨の姿に酷似したソレを見て、家族の安否を確かめるために、遠く離れた故郷に連絡を取っていた、日本に遊びに来ていた青年。
それに対して返った声がある。
『“末裔”と呼ばれるようになる』
それを聞いて息をのむ。
「・・・・・・もう、家族に会えないんだね? じゃあ、逆に海外に旅行や出張に出ている人たちも・・・・・・」
『ああ、そうだ。同じ立ち位置だ。日本人の末裔と、呼ばれるようになる』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『日本に訪れ、あの日に居た、全ての人々が、新しい世界で“始まりの人類”と、呼ばれるようになる。今のように、国別で呼ばれる事ではなく、総じて人類と、カテゴリーで“人”として、区別されるのだ』
遙は深く深くため息を吐いた。どんなに、悩んでも、“こうなってしまった”のだ。旅行に来ていた人たちにとって、運が悪いことに、故郷に置いてきた人々と、突然永遠の別れをしたことになる。彼らは事態を把握したら、それぞれの国の代弁者である領事館に問い合わせをすることになるだろう。領事館に勤める職員達が中心となって、彼らを支えていくことになる。大変な騒ぎになるだろう。物価の上昇もある。何しろもう他国から輸入をすることが現時点では出来ないのだから。これからは、本当の意味での内需拡大をしなければならない。輸入に頼った、食糧確保ではなく、自国生産でもって、国民の食生活を支えなければ生きていけないのだ。農業従事者を増やして生産効率を上げなければ、支えられない。例え国の支援でもって増やしたとしても、すぐに補える類ではないから、様々な物価が高騰しそうだ。遙は現在の国のトップを含めた面々を脳裏に浮かべて、項垂れ頭を抱えたくなる。それぞれの派閥争いと有利性を主張するあまり、即決というのが得意でないことが、普段の政治討論をテレビ中継で見れば解ると言うものだ。
(何しろ、議会中に居眠りしている議員が目立つからねぇ・・・・・・)
真剣に国を憂い、行動を起こしているんだと、そう見ただけで思えるような相手が少なく見えるのは、己が穿った見方をしているせいかとも思うが、何はともあれ賽は投げられたのだ。
遙は軽く己の頬を叩く。遙にはそこまで責任を負う必要はない。国を反映させ維持して行くのは、それを職業として、国民から税金という賃金でもって支払われている、政治家達の役目だろう。遙はただ、自分の担った役目を果たすだけだ。遙の現在の役目は、抱えている「日の本」という名の世界樹の、あの日までに過ぎて成長した記憶する時間までの育成。それから先の未来は、世界樹が器であり半身である星と紡いでいくはずだ。
(まずは、環境を生み出すための、土台を集めることかな・・・・・・)
世界樹の根本に僅かに敷き詰められた、腕の中の鉢植えの底の、土を見つつ嘆息する。
(今までと違う環境・・・・・・・いや、今までの環境に要素を加える、というべきか?)
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(けっこうごちゃごちゃするなぁ・・・・・・けど、下手すると、馴染ませる環境は一カ所以上になる)
遙は深くため息を吐いた。
(そんなのが実現したら、はっちゃける人たちも居るだろうね?けど・・・・・・・)
退屈する暇もない、新しい世界の幕開けになる。遙は小さく笑うと呟いた。
(人知れず、その始まりに手を貸したというのが、わくわくするかもね?)
そんなことを考えていると、周囲が濃霧に包まれ、気がつくと見知らぬ森の中に立っている自分に気がついた。
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