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プロローグ
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ただただ言葉も無く、放心した様子の傷つき倒れ付した者が多くあるその場所にて、今までソコにあった存在を思う事しか、その少女は出来なかった。
この世の者とは思えぬほど、心震えたかの者は、全てが収束に向った事を理解すると、柔らかな涙が零れ落ちそうな美しい微笑を浮かべ、全ての者に別れを告げてその姿を光の粒に変えて天へと消えていく。まるで、ソコには元々居なかったかのように。……名残があるとしたら、かの者が立っていた砂地に残された足跡だけだ。
「……なんで……?」
救われた人たちの中の一人が、声を震わせ疑問を零した。
「やっと、平穏が訪れたんだよ? ……もう異端だからって弾かれる必要も無いのに。バケモノだと恐れられることも、命を脅かされる事も無いのにっ!」
出会ってから今まで、虐げられた者たちに手を差し伸べ続けた者だった。拒絶されようとも、敵意を見せ付けられようとも、何度も命を狙われようとも、意志を曲げることも無く、未来を見据え続けた。この世界はもう長いこと、種族同士で衝突し合い、血で大地が染まるのではと、思える戦争を繰り広げ、双方どちらかが絶え果てるまで続くのだと誰もがそう諦めと共に現実として受け止めていた。その‘確定されつつある未来’に否を唱え抗う、今はもう‘ない’その者が現れた。先の大戦で生き残りとなったとある一族の末裔は、多くの難題を、ひとつひとつ拾い上げた仲間で括られる集団とと共に解決していき、全ての‘根’となった元凶を断つために決戦へと漕ぎ着けたのだ。そして……多大な犠牲を払いながらも、多くの者たちが諦めていた祈りと願いを、勝利という名の果実として手にしたのである。
これからも人々は……仲間たちは今度は復興させるために手を取り合うつもりだった。だが、まるで決められた時間が来たかのように、全てを見渡し、感謝の言葉を口にして消えた。
「……夜明けの為に、訪れたのだと、あいつは言っていた。夜の訪れに芽吹く命が、夜明けと共に還るのが自然の摂理だと、そう……言って居たんだよ。あの親友は……」
激動の時代、彗星のごとく現れた、その存在は、多くの意志や命を背負い、ある者は勇者として立ち向かい、ある者は多くの出来事を傍観する事で記録として残し、ある者は自分自身が課した正義を成すために他者から圧倒的な悪として対立する。須らくカレラはその世界の命の源とされた創世の大樹の種から生まれた申し子達で、救世主の役割を、知らず果たして来た。そのカレラを傍らで支えた者が居る。限られた時間を生きたその存在は、創世の大樹の子等に多大な影響を与えて未練なく去っていく。
だから知らないのだ。置き去りにされた世界が実在する事を。何故ならソレにとって、壮大な物語を夢見ているだけなのだから。
眠れば夢を見るように、眼が覚めれば現実が顔を出す。どんなにソレを彼らが望もうとも、無理な話なのだ。
この世の者とは思えぬほど、心震えたかの者は、全てが収束に向った事を理解すると、柔らかな涙が零れ落ちそうな美しい微笑を浮かべ、全ての者に別れを告げてその姿を光の粒に変えて天へと消えていく。まるで、ソコには元々居なかったかのように。……名残があるとしたら、かの者が立っていた砂地に残された足跡だけだ。
「……なんで……?」
救われた人たちの中の一人が、声を震わせ疑問を零した。
「やっと、平穏が訪れたんだよ? ……もう異端だからって弾かれる必要も無いのに。バケモノだと恐れられることも、命を脅かされる事も無いのにっ!」
出会ってから今まで、虐げられた者たちに手を差し伸べ続けた者だった。拒絶されようとも、敵意を見せ付けられようとも、何度も命を狙われようとも、意志を曲げることも無く、未来を見据え続けた。この世界はもう長いこと、種族同士で衝突し合い、血で大地が染まるのではと、思える戦争を繰り広げ、双方どちらかが絶え果てるまで続くのだと誰もがそう諦めと共に現実として受け止めていた。その‘確定されつつある未来’に否を唱え抗う、今はもう‘ない’その者が現れた。先の大戦で生き残りとなったとある一族の末裔は、多くの難題を、ひとつひとつ拾い上げた仲間で括られる集団とと共に解決していき、全ての‘根’となった元凶を断つために決戦へと漕ぎ着けたのだ。そして……多大な犠牲を払いながらも、多くの者たちが諦めていた祈りと願いを、勝利という名の果実として手にしたのである。
これからも人々は……仲間たちは今度は復興させるために手を取り合うつもりだった。だが、まるで決められた時間が来たかのように、全てを見渡し、感謝の言葉を口にして消えた。
「……夜明けの為に、訪れたのだと、あいつは言っていた。夜の訪れに芽吹く命が、夜明けと共に還るのが自然の摂理だと、そう……言って居たんだよ。あの親友は……」
激動の時代、彗星のごとく現れた、その存在は、多くの意志や命を背負い、ある者は勇者として立ち向かい、ある者は多くの出来事を傍観する事で記録として残し、ある者は自分自身が課した正義を成すために他者から圧倒的な悪として対立する。須らくカレラはその世界の命の源とされた創世の大樹の種から生まれた申し子達で、救世主の役割を、知らず果たして来た。そのカレラを傍らで支えた者が居る。限られた時間を生きたその存在は、創世の大樹の子等に多大な影響を与えて未練なく去っていく。
だから知らないのだ。置き去りにされた世界が実在する事を。何故ならソレにとって、壮大な物語を夢見ているだけなのだから。
眠れば夢を見るように、眼が覚めれば現実が顔を出す。どんなにソレを彼らが望もうとも、無理な話なのだ。
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