詩集『刺繡』

新帯 繭

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言葉

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出たら引っ込まない
消えるけれど残るもの
直したくても時既に遅し
形をそのままに跡を付けて
その見え方は星の数ほど
こんな当たり前のことを
今更私は思い直している

消したくても消せなくて
そのままずっと残り続けるなら
できる限り優しい言葉を紡ぎたい
可能ならば最高にきれいな言葉で
気高く美しい声と口調で
淑やかに雰囲気溢れるように
そんな人間になれたらなと
つくづく思っている

乱暴で暴力的で支配的な
そんな嫌な言葉で
この世は溢れている
そんな言葉に晒されないよう
私は小さなことから気を付ける
嫌な言葉を紡がないように
少しでも心が穏やかにあるよう
気持ちを強く持っていたい

残したくても形がない
形を直したくても触れない
できることなら目に移したくて
可能ならば色を付けて
素敵なものに誤魔化して
粗野な自分に嘘つきたい
そんな自分に嫌気がさす
そんな他人も同じく嫌だ

思いを伝えたり
励ましたり
時に叱ったり
温かい気持ちと
熱い心と寒いギャグとか
笑ったり怒ったり
喜んだり楽しんだり
悲しみを分かち合うために
『言葉』っていうものが
人間には使う権利があったりして

吐いたものの脆さと儚さに
みんなはいつも悩んでいる
難しいからこそ学ぶのだ
良し悪し関係なく
『言葉』というものを
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