詩集『刺繡』

新帯 繭

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俳句

徒然、『春』におもうもの

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朝九時の 子どもの声に 散る桜

桜の如く 落ちて舞う 別れの雫

心無く 口綻ぶは 晩冬の衣替え

『男だろ』 言われて悲しむ 花柄腰巻(スカート)

親の亡き今築く 本当の『私』

兜より 誠に嬉しい 化粧指導

歓べど 休みなき 女子の節句

着崩せど 伊達男になるは 婦人服

散る花弁の五月待ちどおし山桜桃梅

祝日を見て 痛感する男尊女卑

『熊之実』『蛙』『竜の落とし子』『私』の共通点

思い出多く 遍路沿いに実家の跡

夏薊 鬼の金棒に紅飾り

草村に跳ねる飛蝗と炭酸ガス

暑い朝 パンケーキの香 母の匂い

春が来て 墓前に想う 母祖父母

晩春に弟 半年便りなし

春の暮れ 逸る煩悩 惑う日々

憧れを 求め寄り添う 碧梧桐

徒に 眠気誘う 小春日和

幼子の 育ちを思う 年度末

春の目覚め 小亀の親離れ哉

春風の 花の色を運ぶままに

青春は 別れと出会いの涙なり

袖通す初々しさ 学生時代

あやまちと出会いで彩る 時代の一頁

酔い回り 花見に喧嘩 咲きにけり

花弁の 緋色に栄ゆる 枯山水

学び舎に見上げる 食えぬ桜餅

春は暁 カフェインの目覚まし

花弁の春風 舞う衣はためく

触れる衣 五分葉桜の下 ひもとく

待ち合わせ 思い出の木を 探しけり

瑠璃立羽にさるとりの花 産医かな
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