後輩の好意は重すぎて

Guidepost

文字の大きさ
上 下
11 / 20

11話 ※

しおりを挟む
 男が本気で抵抗しても無駄だなどと、普段誰が実感する機会あるだろうか。

「何で俺よりお前のが力あるんだよ……!」
「何かおかしいですか?」
「俺のが背、あるだろ。体形だってお前、華奢……」

 一旦壁際まで後退したものの身動きの取れない状況で言えば、片手で高典の両手をつかんでいる周太はニコニコしたままもう片方の手で器用にネクタイを緩め、シャツのボタンをいくつか外してきた。

「ちょ、何脱ごうと……」
「俺は別に脱ぎませんよ。高典先輩のズボンとかは脱がしたいですけど」
「ふざ」
「ふざけてないんですけどね。今は高典先輩が俺を華奢だと思ってくださってるようだけど、残念ながらそう華奢でもないんですよって……」

 相変わらずニコニコしつつ周太は途中とはいえ下の方までボタンを外したシャツを片手でグイッとはだけさせてきた。

「見てもらおうと思って」

 そうでなくとも白い肌が露わになり、男だとわかっていても思わずドキリとしてしまう。だが高典はすぐに違うところに目がいった。

「……何か鍛えておられるんで?」
「何ですかその喋り方? というか筋トレくらい普通皆するでしょう?」
「あ、はは。そう、だな。うんそうだわ」

 今日から俺もしよう。

 シャツの中身も実際細身ではあったが、緩んだところなどなく肉がギュッと濃縮され詰まっているようにしか見えなかった。さすがにボディビルダーのような「同じ人間か?」と思いたくなるような筋肉ではないものの、少なくとも一瞬憧れを持ちそうな程度には引き締まっている。生クリームがたっぷりと入った菓子パンを食べている場合ではなさそうだ。

「俺はでも高典先輩の適度に硬くて適度に緩んだ体、好きですけどね」

 うっかりガン見してしまって油断したせいで、壁際に逃げていたはずが元いた机に戻っており、それもあろうことか押し倒された。ハッとなりまた本気の抵抗を見せようとしたが、立っていてもかなわなかった力が押し倒されている状態でかなうはずもない。無駄に息が乱れてぐったりするだけだった。

「……クソ。お前、何する気? まさかレイプ?」
「レイプだなんて酷いです。同意の元でないセックスを俺がするとでも?」

 今までの言動を思えばしそうでしか、ない。

「ちゃんとね、お互い欲しくてたまらない状況でしたいです、俺は。でも」

 でも、と綺麗な顔を近づけて微笑む周太はこんな状況でも思わず見惚れてしまいそうだ。

 ──ハァハァ息荒げてなければな……!

「でもって、何。今のお前見てたら俺、今にも突っ込まれそうなんだけど……!」
「俺、学校で好きな人とイチャイチャするの、憧れてて」

 そんな見た目していてかわいい憧れだな! とでも思えばいいのか、この状況とイチャイチャが結びつかなすぎるだろ! と言えばいいのか高典は一瞬混乱した。

「だからちょっとだけ」
「何がちょっとだけ……っんぅ」

 近かった顔がさらに近づき、唇が重なった。ぐったりしていたもののまた無駄に抵抗しようとしてむしろ舌を絡められた。くぐもった、それでも変な声が自分から漏れる。
 気持ち悪い、が先行しそうなものなのに多分違う意味で体がぞくぞくと震えた。その体にまわしていた片手で、キスをしながら周太は高典を少し上げてくる。おかげで無理に押し倒され中途半端に乗っていた体は一旦身を起こせたものの机の上に完全に乗るような状態となった。

「……はぁ……好き」

 糸がひきそうなほど絡めてきた舌と唇をようやく離すと、周太は耳元で呟きながら高典のシャツを乱してくる。

「や、めろ」
「やめません」
「クソ、やっぱり襲う気じゃ」
「最後までしませんよ」

 囁くように言い、周太は首筋から鎖骨、胸元へと開いたシャツの中に唇を這わせてきた。あまりがんじがらめにつかまれていない今なら抵抗して逃げられるはずだ。そう思うのに高典の体は動かせなかった。まるで痺れたように固まったようにその場に留まっている。
 その間にも、胸先にキスをしながら周太の手は高典のズボンの前を寛げさせてくる。

「男の胸なんか何が楽しいんだよ……だいたい俺だって気持ちいいはずないだろ……っ」
「尖らせながら言われても。あとちゃんと高典先輩のここが反応してくれてて俺としては嬉しいです」
「……っ」

 仕方ないだろう?

 だって男なのだ。気持ちがいいことにどうしたって反応してしまう。例え男にされていようが、気持ちがよければ反応する。高典が慣れた大人だったならばまた違っていたかもしれないが、あいにく未経験の高校生真っ盛りで、自分の手以外にこんなこと、されたこともしたこともない。反応しないほうがおかしかった。

「や、め……っ」
「はぁ……高典先輩の……。あーもう堪らないです」

 手でゆるゆると扱かれ、どうしたってますます硬くなっていたそれに、周太はあろうことか顔を近づけ咥えてきた。

「っひ?」

 あり得ない状況や光景にドン引きのはずだというのに、悲しいかな、そこは萎えるどころかますます痛いほどに反応してしまう。

 く、ち……ヤバ、い……ぬるぬるして、あったかくて……感じたことない感触伝わって、くる……。

 ともすれば否定的な言葉どころか、出したくもない声が出そうになり、高典は涙目になりながら必死になって口を手で覆っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

俺に告白すると本命と結ばれる伝説がある。

はかまる
BL
恋愛成就率100%のプロの当て馬主人公が拗らせストーカーに好かれていたけど気づけない話

ご主人様と猫少年

みき
BL
BL R-18 エロ度高め 獣耳尻尾の猫少年がご主人様に調教される話。 ペット 猫化 躾 前立腺責め 射精管理 発情期 我慢 玩具 猫耳

くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~

天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。 オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。 彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。 目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった! 他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。 ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです

聖也と千尋の深い事情

フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。 取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

白薔薇を唇に

ジャム
BL
極道の家に生まれた蘭(16歳)は、世話係である矢島(30代)の事が大好きだが、矢島の過ぎる過保護には ついイライラしてしまい、素直になれない・・。が、矢島が過保護にならざるを得ない理由は8年前に起きた誘拐事件のせいだった。当時の事を蘭はよく覚えてはいないが、その事件に矢島が捕われている事を知っていた。そんなある日、蘭は駅で拉致されかける・・。 R18 ヤクザ x ツンデレ坊ちゃん 溺愛 一途

ただキミを支配したかった~Dom/Subユニバース~

宮部ネコ
BL
僕は、社会人になって中学校の同級生託(たく)と再会した。 そしてDomである託は、Subである僕をプレイに誘った。半ば強制的に。 詫は中学でいじめていた僕のことを恨んでいて、僕をいいようにしたかったのだろう。 詫とのプレイは、セーフワードもなく、褒められることもない。 それでも良かった。詫の側にいられるのなら……。

処理中です...