上 下
68 / 151
第三章 旅立ち

67話

しおりを挟む
 リフィがディルと賭け事をしていた頃、フォルは部屋でコルジアに問い詰められていた。

「フォルス様は本気で少年がお好きなのではないでしょうね……」
「違うと言っているだろうが……何度違うと言えばわかるのだ……!」
「仕方がないでしょう? それほどあなたが毎度毎度疑わしい言動をリフィくんに取るからですよ!」
「だいたい疑わしい言動とはどういったものを言っているんだ」
「逆に聞きますけど、フォルス様がリフィくんに取られている態度などを私にそっくりそのまま取れと言われて取れるのかお聞きしたい」
「そ……」

 そんなことくらい普通にできる、と言い返そうとして、数々の自分がリフィに対して取った言動が脳内を流れる。それをコルジアに取れと言われてもまず取りたくない。

「っというかあの小さな少年と成人しているクソ生意気で性格の悪いお前とを一緒にするな。無理がある」
「……」

 言い返すとまたコルジアが何とも言えない表情でフォルを見てきた。腹立たしいことこの上ない。

「わかっていると思うが、お前が前にしている相手はキャベル王国の第一王子だからな?」
「これ以上ないほどにわかっておりますよ。ですからこそ何度も確認しているんです」

 コルジアはため息をつきながら洗濯に出していて戻ってきた乾いたシャツを所定の場所へしまっている。旅に出て最初の頃は「この私が召使のようなことまでするなどと。雑用係を雇いましょうよ」と不満を言っていたが、フォルが「なら俺がする」と即答すれば「どこの世界に王子にそんなことをさせる側近がいるんです」とさらに文句を浴びせられた。その後基本的に外部へ依頼できる時はするし、できない時はコルジアが対応している。はっきり言って有能だとフォルは思う。改めて何でもできる男だ。完璧と言っても過言ではないだろう。性格がろくでもないのと口が煩いのを除けば。

「……確認といえば、コルジア。いずれ竜の島へ着いたら、リフィの目的は知らないがある程度までは一緒に行けたらと思うんだが」
「は?」

 振り向いたコルジアの顔が全面的に「それのどこが疑わしい言動じゃないと言えるんです」とはっきり言っている。

「いくら幻獣が眷属でそばにいるからとはいえ、竜の住みかかもしれない島なんだぞ。一人……と一匹で行かすのも気になるだろうが」
「何度も確認していることと同じ理由でそれは却下したい気持ちで一杯ですが」

 コルジアが真顔で言い放ってきた。キャベル王国の、しかもフォルスのためにならないことは言わないし行わないコルジアはこれでも案外心情も汲んでくる。よっていくら性格が悪いとはいえ嫌がらせで言っているのでないことくらいさすがにフォルでもわかる。

「理由を述べろ」

 ため息をつきながら言えば、予想通りの言葉が返ってきた。

「あなたはキャベル王国の第一王子です。よって王家の機密事項についての厳守を今一度省みていただきたいですし、次期王の可能性も高い分、跡継ぎについても責任を持って考慮すべきです」
「……だから?」
「いくら信用に足るリフィくんであれ、竜の島へ着いてからも行動を共にするのは少々軽率だと思われますし、いい子だとは私も心底思いますが結婚のできない相手を選ぶ時点でやはり軽率だと思いますし結果的にリフィくんにも迷惑をかけるとしか思えません」
「そう言うとは思った」
「私も嬉々として言っているのではありません」
「わかっている。……まずリフィについてはっきりさせよう」
「望むところです」

 部屋にある小さなテーブルにお互いついて酒をまず注いだ。コルジアはやはりできる側近で、ごそごそとチーズとビスケットを取り出してくる。それらを味わいながら、フォルはリフィの本当の姿について話した。

「お前だからこそ信用するが、本当はお前にすらずっと黙っているつもりだった」
「あなたについて知らないことなどあってはならない私にですか」
「ああ。というのもあの子の秘密を知ったからな。別に暴こうとしたり故意的に知ったのでなく、偶然知ってしまったんだ。だからこの秘密を知る者は俺でなくお前だった可能性もなくはない。とはいえやはりあの子の秘密を俺が漏らすようですっきりはしない」
「私相手にそんな建前のような戯言は結構です」

 ごくごくと葡萄酒を喉に流し込みながらコルジアは実際どうでもよさげに言う。フォルは苦笑した。性格は本当に悪いが、正直なところそういう部分もフォルは好きだったりする。

「あの子は女の子だ」
「……そういう風に見えるとかそういう話ですか」
「本当に俺を何だと思っているんだ……違う。確かに今の姿も可愛らしいとは思うが──」

 話している途中で飽きれたようなため息が聞こえてきた。フォルはジロリとコルジアを睨みつけ、続ける。

「思うが、だが誰が見ても少年だ。少女だと疑う者は多分いないはずだ。だろう?」
「ええ」
「だがあの子を助けた夜、俺は見た。月明かりに照らされたリフィは次の瞬間には美しい長い髪をした少女になっていた」
「……」

 コルジアは何も言わない。フォルはそのまま続けた。

「気を失っているようだったから起きているところは確かに見ていない。だがそれこそあの姿はどう見ても少女だった。顔の面影はあるのだろうか。今となってはもうあまりわからないが、少なくとも髪の長さや色は全く違うし別人だとしか思えないほどの変化がある。もちろん体つきも今よりもっと小さくて丸みがあった」
「……しかし、夜にもフォルくんの姿を我々は何度も見ている気がしますが」

 さすがコルジアといったところだろうか。あからさまな否定や疑いなどを出すこともなく、ただ淡々と的確な疑問を口にしてきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界の路地裏で育った僕、商会を設立して幸せを届けます

mizuno sei
ファンタジー
《第3巻発売します。全3巻完結しました》  旧題:スラム街の陽だまり ~ 少年は覚醒し、意図しないのに誰かを幸せにする ~  主人公の少年ルートは、奴隷の娼婦として働くミーシャが望まない妊娠の末に産んだ子で、母と同じ境遇の娼婦たちが一緒に住むスラム街のぼろアパートで育った。  実は、彼は神の手違いで寿命以前に死んでしまい、本来の転生先とは違う母親のもとに生まれた転生者であった。  しかし、ルートは母親や周囲の娼婦たちから精いっぱいの愛情を受けて、心優しい少年に育っていった。やがて、10歳の誕生日が来て、ルートは教会で、神から仕事に就くための『技能スキル』を受ける儀式に臨んだ。その儀式の途中で、彼は神に招かれ、転生にいきさつを聞き、忘れていた前世の記憶を取り戻した。  神から、おわびとして特別なスキルを与えられたルートは、大好きな母親のミーシャや隣人の娼婦たちを奴隷から解放し幸せにすることを目標に決め、その大きな夢を実現するために歩み始めるのだった。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。

メカ喜楽直人
ファンタジー
物心ついた時にはヴァリは前世の記憶を持っていることに気が付いていた。国の名前や自身の家名がちょっとダジャレっぽいなとは思っていたものの特に記憶にあるでなし、中央貴族とは縁もなく、のんきに田舎暮らしを満喫していた。 だが、領地を襲った大嵐により背負った借金のカタとして、准男爵家の嫡男と婚約することになる。 ──その時、ようやく気が付いたのだ。自分が神絵師の無駄遣いとして有名なキング・オブ・糞ゲー(乙女ゲーム部門)の世界に生まれ変わっていたことを。 しかも私、ヒロインがもの凄い物好きだったら悪役令嬢になっちゃうんですけど?!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...