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第二章 出会い

42話

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 ようやくこれで戻ることができると二人で意気込んでいたが、その前にコルジアと他に心配で駆けつけてきた冒険者や衛兵たちが洞穴近くまで来ていたらしく見つけてくれた。
 ホッとしたのだろう。疲労がまだ強く残っているであろうリフィがふらついた。フォルは慌ててそれを支え、そのまま横抱きしようとしてリフィに断られた。

「しかし君、かなりふらついているが」
「僕は大丈夫です。フォルも疲れているでしょうに、抱えてもらうなんてとんでもない」

 それでも一応支えながら歩いていると、ふと視線を感じた。振り返るとコルジアがじっとフォルを見ている。何だ、と問いかけたかったがこの状況では面倒なので無視をした。
 広いところまで出ると馬車が待機していた。二人ともそれに乗せてもらい、町まで戻る。馬車の中で暖かいスープを貰って嬉しそうにしているリフィを見て、フォルもそっと微笑んだ。
 町へ着くとそのまま休めばいいものの、リフィはギルドへ向かおうとする。かなり疲労していたことを知っているフォルとしては気が気でなく、特に用はないのだが、コルジアが珍しくまだ小言の一つすら言ってこないのをいいことに同じくギルドへ向かった。

「リフィ! ああもう、本当に心配だったんだよ!」
「ごめんなさい、ヴィーさん、リンさん。あ、でも抱きついちゃ駄目です。僕、今清潔じゃないので」
「馬鹿、そんなの気になんないよ!」
「そうですよーもう、ほんと心配させて!」

 二人のギルド受付の仕事をしている女性に囲まれつつ何とか依頼完了の手続きを済ませると、リフィは心配していたらしい他の冒険者たちに今度は囲まれた。そんな様子を微笑ましく見ていたフォルは、その中の大柄な一人がリフィを抱き上げたところを見ると何となくムッとする。いや、というか落ち着かない気持ちになったのだろう。もしかしたら大柄だろうとうっかり落としてしまうかもしれないなどと無意識に考え心配になったのかもしれない。
 よかったよかったと抱き上げたり抱きしめたりしている相手に対し、リフィも特に抱かれることは何とも思っていないらしく「子どもかもだけど僕としては子どもじゃないんですよ僕は。だから下ろしてください」などと悠長なことを言っている。

 ああいや、違うな。多分これはあれだ。リフィの正体を知っているから、はらはらするのかもしれない。

 そう思い、フォルはギルドを出たリフィに「もう少し警戒心などを持ったほうがいい」と注意を促すと怪訝な顔をされた。

「何の警戒心ですか? あ、山に対してでしょうか。確かに油断していたんでしょうね僕。今後気をつけます」
「いや、それもとても大事だしそうして欲しいと思うが、そうじゃなくて……あれだ、あまり無警戒で抱きつかれるままというのは……」

 君は女の子なんだからという言葉は飲み込んだ。

「え? ああ。ちゃんと女性に対しては駄目だって言いましたよ。不快な思いさせたくありませんし。男同士ならまあ多少汚れててもいいかなとは思うけど」
「そこじゃないな……!」
「え?」

 思わず即言い返してしまい、リフィはますます怪訝な顔をしている。何だか引っ込みがつかない感じになり、フォルも困惑してきた。

「フォル。リフィくんも疲れているでしょうし、その辺で。休ませてあげないと」

 丁度いいタイミングなのだろう、コルジアが口を挟んできたのでフォルはむしろホッとして頷く。

「そうだな、すまない、リフィ。とりあえず家まで送ろう」
「別に送ってくださらなくて大丈夫ですよ。改めて助けてくださって、あと親切にしてくださってありがとうございました」
「しかし……」
「本当に大丈夫です。ディルもいるし。ああ、むしろフォルの滞在されている宿を教えていただけますか。休んだら改めてお礼を言いたいので」
「それは別に結構だよ。でもそうだな、言っておこう」

 ニコニコと手を振り、去っていくリフィを見送ったところでコルジアが「何やってんですか」とさっそく小言一発目を発してきた。

「わかっているが、俺も疲れている。先に休ませてもらおうか」
「リフィくんの前ではとても元気がよろしそうでしたが?」
「あの子は相当疲労していたんだぞ。そんなかの……彼の前で疲れたところを見せて気を遣わせるわけにいかないだろ」
「……まあお疲れなのは実際そうでしょうし、とりあえず宿に戻りましょう。熱い湯に浸かって食事を済まされてからは私の独擅場ですからね」
「……自分で宣言することなのか? くそ、一気に疲れが襲ってくる」
「あと、少々聞いておきたいのですが」
「何だ」
「まさかとは思いますがフォルス様、もしや少年愛の気が……」
「ないな!」

 その発想は何だ、とフォルはドン引きしたようにコルジアを見た。だがコルジアも複雑そうな顔でフォルを見ている。
 ああ、もしかして俺はリフィが元々少女だと知っているせいで無意識に女性に対するような言動が出てしまっていたのだろうか。
 ため息をつくとフォルはコルジアを改めて見る。

「少年愛も同性愛も興味ない。そして俺が興味ないという前提で聞け。あの子はあんなに小柄で華奢なのに崖から落ちて数日意識を失ってたんだぞ。心配くらいするだろうが。それにあんな可愛らしい様子だとむさくるしい男どもに何をされるかわからんからそれも心配して、だな……」
「本当に興味ないんですか?」

 コルジアはますます複雑そうな顔をしてきた。
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