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15話
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今までつき合っている相手と出かける場合、日陽が基本的にはエスコートしていた。いや、エスコートと言えば大袈裟かもしれない。彼女の行きたいところがあればそこへ行くし、希望はなるべく聞いてきた。感覚的なものとでも言うのだろうか。つき合っているのでよそよそしい気の使い方はしないが、結構気を配っていたと思う。
それが那月となるとその感覚が狂う。元々友人だしお互い男だ。とはいえ別に悶々と悩むことでもないので率直に言ってみた。
「お前って女じゃないだろ」
「……そうだね」
出だしが悪かったようでとてつもなく微妙な顔をされる。
「ああいや別にお前が女っぽいとかそういうんじゃなくてさ」
「大丈夫、さすがにそんな心配したことないよ」
慌てて訂正しようとしたら笑われた。
「だよな。えっと、お前も俺も女じゃねーだろ。で、お互い男同士の時ってなんていうの? どう過ごせばいいんかなって」
「どう過ごす?」
「デート、とか……」
思い切りセックスまでしているというのに「デート」とあえて言うのが気恥ずかしく感じた。
「え? 今まで通りでいいんじゃない、かな」
那月は一瞬ポカンとした後に楽しげに笑ってくる。
「いいのか」
「そんなあえて気を張らなくても。俺はいつもの日陽が大好きだし」
「……お前は何でそう、恥ずかしげもなく言い放てるの」
大好きだと目をじっと見られて言われ、日陽はといえばとてつもなく顔が熱い。そわそわとした、心臓が変に痒いような落ち着かない気持ちになる。
「だってほんとのことだからかな。……いつもの日陽でいて? 俺はそれが嬉しいよ。あ、でも俺とつき合ってるのはちゃんと意識して欲しいかな」
「どうしろと」
「別に難しいことないよ。他の男女に目がいかないようにするとか」
「いかないよさすがに」
「いつものままではあるけど二人きりでそれっぽいとこにも行ったりとか」
「それっぽいってなんだよ」
「映画観に行ったり」
「それくらい別に男同士でも普通に行くだろ」
「遊園地で遊んだり」
「最近男同士でって多くない?」
「公園でボート乗ったり」
「あー、それは確かに……」
そんなやり取りをした後に那月がニッコリ笑いかけてきた。
「でも、今みたいにさ、ボートあるような大きなとこじゃなくて何でもないような公園のベンチでこうしてだらだら喋ってるだけでも凄いつき合ってるって感じする」
その笑顔が本当に嬉しそうに見えて、日陽も嬉しくなった。
「そ、だよな。つか、むしろベンチでだらだらとか今までお前としたことない気がする。あんま友だち同士でしないだろ。そう思うとやっぱうん、それっぽいかも」
「……智充とは?」
「え?」
何故そこに智充が出てくる、と日陽はポカンとして那月を見た。表情は柔らかいが、何となく真面目な顔をされている気がする。
「智充ともないな。ていうか、ベンチでだらだらとか、あの煩い智充がやりたがるとか思うか?」
「あはは、そうだよね」
那月は笑いながら手にしていたハンバーガーを口へ運んだ。
休日の今日に遊ぶ約束はしていたが、特に予定は立ててなかった。その辺、どう過ごせばと考えながらもいつもの自分過ぎるくらい自分だなとは思う。那月も「特にすることなければ俺の家においでよ」としか言っていなかった。
それを言われた時は那月の家イコール、セックスだろうかとつい思ってしまい自分に微妙になった。つき合うようになってから、既にもう何度か体を繋げている。最初の頃は気持ちよくもあるが痛みや苦しさもあってなかなかきつかったのだが、最近ようやく少し慣れてきた気はする。そのせいでついそんなことを思ってしまったのだろうかと微妙になったのだが、性少年だから仕方ないということにした。
今朝起きて外を見るとそれこそ気持ちがいいほどの快晴だったため、二人は家から少し離れたところにある緑地公園まで出向いていた。途中、ファーストフード店に寄ってハンバーガーやフライドポテトをテイクアウトした。
「外で食うの、うまいよな」
「うん。うまいよね」
今の今までだらだらと喋っていたが、食べだすと二人とも少々無口がちになった。こういうところも遠慮しなくていいのが何というか心地いい。今までつき合っていた相手にはやはり気を配っていた分、食べながらも話しかけたりしていたような気がする。
名前が挙がったため浮かんだ智充とはそれこそもう家族と言っていいくらい親しいが、那月とも幼馴染と言えるくらいそれなりに友人としてのつき合いは長いし親しくしてきたと思っている。好きになってしまった分、湧かなくていい羞恥心は時に湧いてしまうが、こうして過ごしていると気の置けない友人だった分、すごく落ち着くし心地よかった。
……その上好きで、しかも気持ちのいいことまで一緒にできるとか、かなりいい関係なんじゃないのか?
能天気にもそんなことを考える。男同士での恋愛だけに、もっと悩みそうなものなのかもしれないが、何故だろうか、特に葛藤も苦悩もない。
真面目なことを考えれば将来性のない恋愛なのかもしれないが、それこそ未来がどうなるかわからないし、今は好きだという気持ちを大事にしたいし、将来性を考えたつき合いなどといちいち考えたくはないからかもしれない。こうしてつき合い始めてみて、男同士だからということで困ることは今のところほぼない。しいて言えば、さすがに公にはしにくいというところだろうか。
いくら俺たちに偏見がなくても周りもそうだとは限らないもんな。色んな人がいるだろうし。
それに周りから人気のある那月まで変な目で見られてしまうというのが切ない。モテる那月ということに関してはあまり気持ちよくはないので矛盾しているようだが、やはり好きな相手が沢山の人から好かれる存在だというのは基本的に嬉しいものでもある。
「何考えてるの?」
食べながら何だかんだと考えていたのがぼんやりとしていた表情に出ていたのか、那月がおかしそうに聞いてきた。
「え? いや、大したことじゃないけど。まあ何ていうか、お前とこうしてるの、心地いいなって」
「ほんと? それは……その、ありがとう。嬉しいかな、かなり」
一瞬ポカンとした後で那月が顔を赤くしながらしどろもどろになっている。人には恥ずかしげもなく「好きだ」と言ってきたり突然襲ってきたりするくせに、何故いまさらそんなことで赤くなるのだと日陽は思った。思いながら自分まで何となく気恥ずかしくなってくる。
「うん」
「……今すぐキスしたいなぁ」
「……それはヤメロ……」
あんな言葉で赤くなるくせに、何でこう、変なところでガンガン来るのだ、と日陽は微妙な顔をして即答した。
それが那月となるとその感覚が狂う。元々友人だしお互い男だ。とはいえ別に悶々と悩むことでもないので率直に言ってみた。
「お前って女じゃないだろ」
「……そうだね」
出だしが悪かったようでとてつもなく微妙な顔をされる。
「ああいや別にお前が女っぽいとかそういうんじゃなくてさ」
「大丈夫、さすがにそんな心配したことないよ」
慌てて訂正しようとしたら笑われた。
「だよな。えっと、お前も俺も女じゃねーだろ。で、お互い男同士の時ってなんていうの? どう過ごせばいいんかなって」
「どう過ごす?」
「デート、とか……」
思い切りセックスまでしているというのに「デート」とあえて言うのが気恥ずかしく感じた。
「え? 今まで通りでいいんじゃない、かな」
那月は一瞬ポカンとした後に楽しげに笑ってくる。
「いいのか」
「そんなあえて気を張らなくても。俺はいつもの日陽が大好きだし」
「……お前は何でそう、恥ずかしげもなく言い放てるの」
大好きだと目をじっと見られて言われ、日陽はといえばとてつもなく顔が熱い。そわそわとした、心臓が変に痒いような落ち着かない気持ちになる。
「だってほんとのことだからかな。……いつもの日陽でいて? 俺はそれが嬉しいよ。あ、でも俺とつき合ってるのはちゃんと意識して欲しいかな」
「どうしろと」
「別に難しいことないよ。他の男女に目がいかないようにするとか」
「いかないよさすがに」
「いつものままではあるけど二人きりでそれっぽいとこにも行ったりとか」
「それっぽいってなんだよ」
「映画観に行ったり」
「それくらい別に男同士でも普通に行くだろ」
「遊園地で遊んだり」
「最近男同士でって多くない?」
「公園でボート乗ったり」
「あー、それは確かに……」
そんなやり取りをした後に那月がニッコリ笑いかけてきた。
「でも、今みたいにさ、ボートあるような大きなとこじゃなくて何でもないような公園のベンチでこうしてだらだら喋ってるだけでも凄いつき合ってるって感じする」
その笑顔が本当に嬉しそうに見えて、日陽も嬉しくなった。
「そ、だよな。つか、むしろベンチでだらだらとか今までお前としたことない気がする。あんま友だち同士でしないだろ。そう思うとやっぱうん、それっぽいかも」
「……智充とは?」
「え?」
何故そこに智充が出てくる、と日陽はポカンとして那月を見た。表情は柔らかいが、何となく真面目な顔をされている気がする。
「智充ともないな。ていうか、ベンチでだらだらとか、あの煩い智充がやりたがるとか思うか?」
「あはは、そうだよね」
那月は笑いながら手にしていたハンバーガーを口へ運んだ。
休日の今日に遊ぶ約束はしていたが、特に予定は立ててなかった。その辺、どう過ごせばと考えながらもいつもの自分過ぎるくらい自分だなとは思う。那月も「特にすることなければ俺の家においでよ」としか言っていなかった。
それを言われた時は那月の家イコール、セックスだろうかとつい思ってしまい自分に微妙になった。つき合うようになってから、既にもう何度か体を繋げている。最初の頃は気持ちよくもあるが痛みや苦しさもあってなかなかきつかったのだが、最近ようやく少し慣れてきた気はする。そのせいでついそんなことを思ってしまったのだろうかと微妙になったのだが、性少年だから仕方ないということにした。
今朝起きて外を見るとそれこそ気持ちがいいほどの快晴だったため、二人は家から少し離れたところにある緑地公園まで出向いていた。途中、ファーストフード店に寄ってハンバーガーやフライドポテトをテイクアウトした。
「外で食うの、うまいよな」
「うん。うまいよね」
今の今までだらだらと喋っていたが、食べだすと二人とも少々無口がちになった。こういうところも遠慮しなくていいのが何というか心地いい。今までつき合っていた相手にはやはり気を配っていた分、食べながらも話しかけたりしていたような気がする。
名前が挙がったため浮かんだ智充とはそれこそもう家族と言っていいくらい親しいが、那月とも幼馴染と言えるくらいそれなりに友人としてのつき合いは長いし親しくしてきたと思っている。好きになってしまった分、湧かなくていい羞恥心は時に湧いてしまうが、こうして過ごしていると気の置けない友人だった分、すごく落ち着くし心地よかった。
……その上好きで、しかも気持ちのいいことまで一緒にできるとか、かなりいい関係なんじゃないのか?
能天気にもそんなことを考える。男同士での恋愛だけに、もっと悩みそうなものなのかもしれないが、何故だろうか、特に葛藤も苦悩もない。
真面目なことを考えれば将来性のない恋愛なのかもしれないが、それこそ未来がどうなるかわからないし、今は好きだという気持ちを大事にしたいし、将来性を考えたつき合いなどといちいち考えたくはないからかもしれない。こうしてつき合い始めてみて、男同士だからということで困ることは今のところほぼない。しいて言えば、さすがに公にはしにくいというところだろうか。
いくら俺たちに偏見がなくても周りもそうだとは限らないもんな。色んな人がいるだろうし。
それに周りから人気のある那月まで変な目で見られてしまうというのが切ない。モテる那月ということに関してはあまり気持ちよくはないので矛盾しているようだが、やはり好きな相手が沢山の人から好かれる存在だというのは基本的に嬉しいものでもある。
「何考えてるの?」
食べながら何だかんだと考えていたのがぼんやりとしていた表情に出ていたのか、那月がおかしそうに聞いてきた。
「え? いや、大したことじゃないけど。まあ何ていうか、お前とこうしてるの、心地いいなって」
「ほんと? それは……その、ありがとう。嬉しいかな、かなり」
一瞬ポカンとした後で那月が顔を赤くしながらしどろもどろになっている。人には恥ずかしげもなく「好きだ」と言ってきたり突然襲ってきたりするくせに、何故いまさらそんなことで赤くなるのだと日陽は思った。思いながら自分まで何となく気恥ずかしくなってくる。
「うん」
「……今すぐキスしたいなぁ」
「……それはヤメロ……」
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