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17話
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「で? 他に何の話があるの?」
煌に食べ物を放り込みつつ時折自分でも食べながら実邦が聞いてきた。
「他のやつに付き合ってるとか言うのやめて」
「ああそれ。別にあいつ以外に言うつもりは俺もないよ」
「草壁くんにも言って欲しくなかったんだけど!」
「でももう言ったし、取り消せないし、仕方ないね」
ニコニコと取ってつけたような笑顔で実邦が最後に残った煮物のこんにゃくを煌の口元へ持ってくる。煌が微妙な顔で口を開けるとこんにゃくが入ってきた。それを咀嚼しながら「訂正すればいいだろ。あれは冗談だったって」と実邦を見た。
「しないけど」
「何で!」
「? 言ったよね? 俺がヤキモチをやくから牽制のためにも言ったって。取り消す意味なくない?」
「いや、だから付き合ってるのはあれだろ、あくまでも俺の、男同士のカップルが見たいってのを叶えようとサネが斜め上な発想で言ってきたことで、現実じゃ……」
「現実だよ」
空になった弁当箱を片付けながら実邦が言い放ってきた。
「は?」
「俺はコウが思ってるほどお人好しじゃないよ。いくら幼馴染のためだからって、好きでもないそれも男と付き合うと思う?」
「いや、だって……」
「コウ以外の男とはさすがに無理だって俺、言わなかった?」
「い、言ったけど……」
「ちゃんと思い返してみて。コウ、勉強はいまいちだけど記憶力はわりといいでしょ」
「一言余計なんだよ……」
じろりと睨みつつ、煌は言われた通り思い返そうとした。ただ思い返すも何も、倭とそういう対象で見られるのはごめんだと実邦に言われつつ「俺が誰か男を好きになると嬉しいの?」と聞かれ、その流れでいい方法があると言われたのが実邦と煌がくっつくという案だっただけじゃないだろうか。そして煌は「いいね、じゃあ付き合おう!」なんて答えてないしうやむやのままだと思っていた。
それに煌も実邦に「俺の大事な幼馴染だからちゃんと本当に好きなやつと恋愛して欲しいと思ってる」とも伝えているはずだ。
そういえば俺がそう言えばサネ、何て言ったんだっけ? 確か……ああそうだ、だったらいい方法があるって言って、そんで「俺とコウがくっついたらいいんじゃない?」って言ってきたんだ。
やっぱり思い返そうが特に記憶に相違はないと頷いたところでふと気づいた。
本当に好きなやつと恋愛して欲しい、と言った後に実邦は「だったらいい方法がある」と言ってきた。煌がそれに対し否定したら「コウ以外の男とはさすがに無理」だと続けてきた。
……コウなら昔から知ってるし好きだからいいけど、ね。コウも妄想たくましいんだから、当事者ながらに俯瞰して第三者的な楽しみ方できるんじゃない?
本当に好きな相手と恋愛……だったら俺とコウが……コウなら好きだから……、え? 待って、そういう……?
多分とてつもなく唖然とした顔をしていたのだろう。煌の顔を見た実邦が小さく笑ってきた。
「ちゃんと思い返した?」
「え……いや……えっ? いやでも……」
「コウ。俺はね、ちゃんとコウが好きなんだよ。好きだからくっついたらいいんじゃないって提案した。コウが俺のこと、そういう目で見てないのは知ってたし、でも俺は君が好きだから、だったらお互いウィンウィンなんじゃないかなって。男同士のカップル、きっとコウも楽しめるんじゃないかなって」
「だ、だからでも俺、当事者じゃなくて、だって」
顔が熱い。
あのサネが本当に俺が好き、だって? 何で? こんなにサネ、顔、いいのに? 声もいいし頭もいいし背だって高いし……昔からすげーモテてたし……何で?
「だって俺は、そういうんじゃなくて……だって実際はそういうのと違うって……」
混乱しているのかもしれない。上手く言葉が出てこない。ただひたすら顔が熱い。
「キス、でも気持ちよかったでしょ? 頭ごなしに無理なんて決めつけないで、付き合ってみよ? もしかしたら現実のほうがもっともっとモエっていうの感じたり、気持ちよくて好きになるかもだよ?」
「でも、……でも、だって……」
頭がぐるぐるとしている。あの実邦が何故、と思う。それに煌自身が誰かに告白されたことなど一度もなくて余計混乱しているのかもしれない。全然考えがまとまらないというか、そもそもぐるぐるとして考えられない。
頭を抱えてひたすら考えをまとめようとしていると、あごを持たれてそのまま顔を上げられた。
「……って、何でキスとかこんなとこで……!」
軽くだったが唇が合わさったところがむずむずとする。それを誤魔化すかのように自分の唇を噛みしめると、煌は思いきり実邦を睨み上げた。顔がとてつもなく熱い。
「かわいいなと思ったから」
「は、はぁっ?」
「ほら、今のコウ、例の本とか読んでる時より真っ赤でそれにドキドキしてる」
囁くように言いながら実邦がそっと煌の心臓の辺りに手を当ててきた。慌てて退けようとしたが逆にその手をつかまれる。そして同じくそっと手のひらを優しく撫でるようにつかむとそのまま指を絡めて握ってきた。
「モエっていうの、楽しめる?」
「ん、なわけ、あるか……」
相変わらずひたすら顔がいい。声もいい。そんな美形イケメンが慣れた手つきで手を握ってくる。混乱しか先ほどからしていいない。
すべすべとした手に握られるのがそして気持ちがよかった。
煌に食べ物を放り込みつつ時折自分でも食べながら実邦が聞いてきた。
「他のやつに付き合ってるとか言うのやめて」
「ああそれ。別にあいつ以外に言うつもりは俺もないよ」
「草壁くんにも言って欲しくなかったんだけど!」
「でももう言ったし、取り消せないし、仕方ないね」
ニコニコと取ってつけたような笑顔で実邦が最後に残った煮物のこんにゃくを煌の口元へ持ってくる。煌が微妙な顔で口を開けるとこんにゃくが入ってきた。それを咀嚼しながら「訂正すればいいだろ。あれは冗談だったって」と実邦を見た。
「しないけど」
「何で!」
「? 言ったよね? 俺がヤキモチをやくから牽制のためにも言ったって。取り消す意味なくない?」
「いや、だから付き合ってるのはあれだろ、あくまでも俺の、男同士のカップルが見たいってのを叶えようとサネが斜め上な発想で言ってきたことで、現実じゃ……」
「現実だよ」
空になった弁当箱を片付けながら実邦が言い放ってきた。
「は?」
「俺はコウが思ってるほどお人好しじゃないよ。いくら幼馴染のためだからって、好きでもないそれも男と付き合うと思う?」
「いや、だって……」
「コウ以外の男とはさすがに無理だって俺、言わなかった?」
「い、言ったけど……」
「ちゃんと思い返してみて。コウ、勉強はいまいちだけど記憶力はわりといいでしょ」
「一言余計なんだよ……」
じろりと睨みつつ、煌は言われた通り思い返そうとした。ただ思い返すも何も、倭とそういう対象で見られるのはごめんだと実邦に言われつつ「俺が誰か男を好きになると嬉しいの?」と聞かれ、その流れでいい方法があると言われたのが実邦と煌がくっつくという案だっただけじゃないだろうか。そして煌は「いいね、じゃあ付き合おう!」なんて答えてないしうやむやのままだと思っていた。
それに煌も実邦に「俺の大事な幼馴染だからちゃんと本当に好きなやつと恋愛して欲しいと思ってる」とも伝えているはずだ。
そういえば俺がそう言えばサネ、何て言ったんだっけ? 確か……ああそうだ、だったらいい方法があるって言って、そんで「俺とコウがくっついたらいいんじゃない?」って言ってきたんだ。
やっぱり思い返そうが特に記憶に相違はないと頷いたところでふと気づいた。
本当に好きなやつと恋愛して欲しい、と言った後に実邦は「だったらいい方法がある」と言ってきた。煌がそれに対し否定したら「コウ以外の男とはさすがに無理」だと続けてきた。
……コウなら昔から知ってるし好きだからいいけど、ね。コウも妄想たくましいんだから、当事者ながらに俯瞰して第三者的な楽しみ方できるんじゃない?
本当に好きな相手と恋愛……だったら俺とコウが……コウなら好きだから……、え? 待って、そういう……?
多分とてつもなく唖然とした顔をしていたのだろう。煌の顔を見た実邦が小さく笑ってきた。
「ちゃんと思い返した?」
「え……いや……えっ? いやでも……」
「コウ。俺はね、ちゃんとコウが好きなんだよ。好きだからくっついたらいいんじゃないって提案した。コウが俺のこと、そういう目で見てないのは知ってたし、でも俺は君が好きだから、だったらお互いウィンウィンなんじゃないかなって。男同士のカップル、きっとコウも楽しめるんじゃないかなって」
「だ、だからでも俺、当事者じゃなくて、だって」
顔が熱い。
あのサネが本当に俺が好き、だって? 何で? こんなにサネ、顔、いいのに? 声もいいし頭もいいし背だって高いし……昔からすげーモテてたし……何で?
「だって俺は、そういうんじゃなくて……だって実際はそういうのと違うって……」
混乱しているのかもしれない。上手く言葉が出てこない。ただひたすら顔が熱い。
「キス、でも気持ちよかったでしょ? 頭ごなしに無理なんて決めつけないで、付き合ってみよ? もしかしたら現実のほうがもっともっとモエっていうの感じたり、気持ちよくて好きになるかもだよ?」
「でも、……でも、だって……」
頭がぐるぐるとしている。あの実邦が何故、と思う。それに煌自身が誰かに告白されたことなど一度もなくて余計混乱しているのかもしれない。全然考えがまとまらないというか、そもそもぐるぐるとして考えられない。
頭を抱えてひたすら考えをまとめようとしていると、あごを持たれてそのまま顔を上げられた。
「……って、何でキスとかこんなとこで……!」
軽くだったが唇が合わさったところがむずむずとする。それを誤魔化すかのように自分の唇を噛みしめると、煌は思いきり実邦を睨み上げた。顔がとてつもなく熱い。
「かわいいなと思ったから」
「は、はぁっ?」
「ほら、今のコウ、例の本とか読んでる時より真っ赤でそれにドキドキしてる」
囁くように言いながら実邦がそっと煌の心臓の辺りに手を当ててきた。慌てて退けようとしたが逆にその手をつかまれる。そして同じくそっと手のひらを優しく撫でるようにつかむとそのまま指を絡めて握ってきた。
「モエっていうの、楽しめる?」
「ん、なわけ、あるか……」
相変わらずひたすら顔がいい。声もいい。そんな美形イケメンが慣れた手つきで手を握ってくる。混乱しか先ほどからしていいない。
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