BLに俺を登場させないで

Guidepost

文字の大きさ
上 下
5 / 20

5話

しおりを挟む
 あの日以来二人の進展を期待していた煌だが、今のところ相変わらず二人に接触はない。多分あの日は盆と正月だったのだと思うしかない。
 いつものように実邦の部屋へ遊びに行き、ゲームをしていると煌はだんだん眠くなってきた。とはいえこれもよくあることだ。珍しくもない。
 実邦の部屋でゲームをしているとはいえ、実邦は基本的にやらない。二人でないとプレイできないようなゲームだと一緒にやってくれたりもするが、大抵は煌一人でプレイしている。ならわざわざ実邦の部屋へ行く必要がないではないかと誰かに話せば突っ込まれそうだが、あいにく煌はハードを持っていない。コンシューマーゲームは好きだが、昔から親に「欲しい」と言えば「じゃあ成績がここまで上がったらね」などと条件をつけられ、そして毎回その条件を情けないことに達成できずにきたからだ。その悔しさをその度に実邦にぶちまけていた。そんなある日「ゲーム買った」と実邦がさらりと言ってからこうして度々ゲームをしに来ている。その後煌がBLにはまってしまい小遣いをつい商業本などに費やしてしまうようになり、自分で貯めてゲームを買うという考えもずいぶん昔に捨てているため大助かりだ。
 ただ実邦はちっとも一緒にしない。不思議に思い「何でゲーム買ったの」と聞けば「やりたいからだけど」と返ってくる。

「でもやらないだろ、いつも」
「一人でするタイプだから。現に一緒にするゲーム、俺上手いでしょ?」
「た、確かに」

 煌としてはできるのなら一緒に楽しみたい気持ちがあるが、無理強いするものでもないしと一人で楽しませてもらっている。その横で実邦はそのゲームを眺めたり本を読んだりしていることが多い。

「コウ、眠いなら寝れば」
「ん……でもここ、あと少しでクリア……」
「寝ながらやっても失敗するだけでしょ」
「まぁ、そだな……」

 確かに舟をこぎながらゲームをして大事なアイテムを逃したりすることもあったので、煌は素直に実邦の言う通りにした。

「ベッド使っていいよ」
「ん……」
「でもジーンズは脱いでね」
「わかった」

 ぼんやりタイプのわりに実邦は多少潔癖症なのか、いつも煌がベッドを使わせてもらう時はズボンを脱ぐよう言ってくる。最初言われた時に「めんどくせーんだけど、何で」と文句を垂れたら「コウ、平気で外だろうがどこでも座ったりするでしょ。床くらいなら別にいいけどさすがにベッドにそんなズボンで上がって欲しくないから」と返ってきた。そう言われるとまあ確かにそうかもと納得し、それ以来素直に脱いでいる。別に昔からの幼馴染な上に同性だ。パンツ一丁でも気にならない。

 ……ああでもこれがBLならあれだ、俺が寝ている間にヤラシーコト、されるやつだ。ズボン脱いでるから手間も省けて、散々弄られるのに俺は寝ててされるがままってやつ。でも夢でヤラシー内容でてきたりして、やっぱ興奮しちゃって、ってやつな。で、受けは知らない間にどんどん開発されてたらなおよしだわ。むしろ開発されて欲しい。で、いずれ起きてる時に攻めにやられて、自分がやべーくらいにエッチになってて驚くやつな。そういうのもけっこういい感じにエロいよな。でも散々ぐずぐずにされても気づかねえとかどんだけ眠り深いんだよって話だけどな。

 とはいえそういうのも好きだよ俺は、などと満足げに思いながら、煌は実邦のベッドに潜り込むと気持ちよく眠りに陥った。自慢じゃないが寝つきはいい。中々起きず寝汚いとは言われるが、眠るのはあっという間だ。実邦にも「悩みがなさそうでいいね」と言われたこともある。

「俺だって悩みくらいあるんだからな」
「例えば?」
「……せっかく男子校入ったのにリアルBLを目の当たりにできない」
「ああうん、さすがだね」

 こちとらそれなりに本気で悩んでいたというのに、それを実邦に打ち明ければそっと小さく微笑まれ、頭を撫でられた。多分生温い気持ちになったのだろう。他人からすればそうなるだろうなとわからないでもないが、煌としてはそれなりに本気だけにムッとしているともう一度撫でられ「いつか見られるといいね」と言ってくれた。やはり実邦は実邦だし大好きな幼馴染だと思う。
 うたた寝するのではなく短いながらにがっつりと寝るからか、いつも起きた時点で夢を見ていた記憶はない。今回もそうだった。どうせなら眠る前に少し妄想したような、寝ている間に何かされる受けの夢とかを見たいなと少し思う。もちろんどこかの受けの話であって自分がされたいわけではない。
 ただ、短時間だろうがぐっすり眠るからか、いつも起きた時妙にすっきりしていて別にやらしい夢を見なくても満足ではある。

「おはよ。コーヒー淹れたから飲むといいよ」
「ああ、通りで部屋にコーヒーの匂いが充満してると思った! 飲む飲む。サネが淹れるコーヒー、美味いんだもん」

 嬉しげにベッドから降りてさっそくコーヒーを飲もうとすれば「その前にズボン履いたほうがいいよ」と言われ、下は下着姿だったと思い出した。

「そいやそうだったな」
「……コウは無防備だからね」
「何で無防備扱いになんの。うっかり忘れてただけだろ」
「……そうだね」

 実邦が微笑んできた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君の風を

Guidepost
BL
五十島 七瀬(いかじま ななせ)と生駒 瑠衣(いこま るい)は幼馴染で、七瀬は明るく人懐こく、誰からも好かれる性格だった。 しかし中学2年の頃、瑠衣は七瀬に告白される。 「冗談だろ?」 瑠衣は、特に深い意味も傷つけるつもりもなかった。 だけど、その言葉に傷ついた七瀬は、瑠衣を避けるようになってしまった。 そして、瑠衣は謝る機会を逃したまま、高校生となった…… (R指定の話には話数の後に※印)

オメガ学級委員長はド変態

明帆
BL
オメガの学級委員長 向原(むかいはら)りょうは、抑制剤の副作用で、発情期後に性欲が爆発してしまう。 そのため、学校では他人にバレないように自慰行為をしていたのだが、ある日、陽キャなアルファ 佐野名津(さのなつ)にバレてしまう。

エロ垢バレた俺が幼馴染に性処理してもらってるって、マ?

じゅん
BL
「紘汰の性処理は俺がする。」 SNSの裏アカウント“エロアカ”が幼馴染の壮馬に見つかってしまった紘汰。絶交を覚悟した紘汰に、壮馬の提案は斜め上過ぎて――?【R18】 【登場人物】 □榎本紘汰 えのもと こうた 高2  茶髪童顔。小学生の頃に悪戯されて男に興味がわいた。 ■應本壮馬 おうもと そうま 高2  紘汰の幼馴染。黒髪。紘汰のことが好き。 □赤間悠翔 あかま ゆうと 高2  紘汰のクラスメイト。赤髪。同年代に対してコミュ障(紘汰は除く) ■内匠楓馬 たくみ ふうま 高1  紘汰の後輩。黒髪。 ※2024年9月より大幅に加筆修正して、最初から投稿し直しています。 ※ストーリーはエロ多めと、多少のギャグで進んでいきます。重めな描写はあまり無い予定で、基本的に主人公たちはハッピーエンドを目指します。 ※作者未経験のため、お手柔らかに読んでいただけると幸いです。 ※その他お知らせは「近況ボード」に掲載していく予定です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

【R18】保健室のケルベロス~Hで淫らなボクのセンセイ 【完結】

瀬能なつ
BL
名門男子校のクールでハンサムな保健医、末廣司には秘密があって…… 可愛い男子生徒を罠にかけて保健室のベッドの上でHに乱れさせる、危ないセンセイの物語 (笑)

ゲイバレした学年一のイケメンは、その日の放課後、陰キャで平凡な俺を犯した

しゅうじつ
BL
学年一のイケメン、玉木 宝一郎がゲイバレした。 学校中は大騒ぎするなか、ひとつの疑問が皆の頭に浮かぶ。 学年一のイケメン、玉木 宝一郎がが好きな相手は誰なのか。 その日の放課後、陰キャでゲームオタクの俺は偶然、そのイケメン玉木宝一郎と遭遇し、なぜか密室に閉じ込められ2人きりに。 陰キャで平凡のゲームオタクに、とてつもなく執着している美形くんのお話。 美形攻め×平凡受け

身体検査が恥ずかしすぎる

Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。 しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。 ※注意:エロです

処理中です...