飴玉のように甘く

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12話

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「なにきこうか」

 ニコニコと言ってくるリーバイに紘は呆れた顔を向けた。

「別に無理に聞く必要ないだろ」
「ダメ。Gameはたのしまないと」
「いつゲームになってたんだよ……」
「ヒロはKissしたことぼくだけじゃなく、ある?」
「さっきの飴的な質問でよかったのに……!」
「What?」

 突っ伏しそうな勢いの紘にリーバイが怪訝そうな顔を向けてくる。
 先ほどは結構構えていたら好きな飴について聞かれ、拍子抜けしていた。今は逆に「好きな飲み物とかなら──」などと考えていた紘は思わず力が抜けてしまい、忌々しいといった顔をリーバイに向ける。

「ヒロ、こたえるの、ごめんなさいする?」
「したら罰ゲームなんだろ……まあ別にこれくらいな。キスくらいならある」

 彼女は何人かいた。キスすらしていない付き合いとかむしろどうなのだ。とはいえそれ以上は誰ともしていない。する機会はあった。あった。あったけれども、タイミングとかタイミングとか緊張とかタイミングとかそういった繊細な何かによって今のところ誰ともしていない。だから質問もできればこれ以上は聞かれたくな──

「Fair enough. じゃあMake loveは?」
「クソ」
「You what?」
「……別にどっちだっていいだろ」
「Oh well……」
「今の反応、何言ってんのかわからないけど絶対どっちかわかった上で馬鹿にしてるか同情してるだろ……」
「No way. まあでもGood for meではあるかなあ。だいじょうぶ。だってヒロはぼくとMake loveするから」
「しない。何が大丈夫なんだよ……しないからな」
「Why?」
「本気で意味がわからないって顔すんな。当たり前だろ。つか男同士でどうやってやるんだよ」
「だいじょうぶ。ぼくにまかせて」
「何が大丈夫なんだよ嫌だよ……!」
「ひろはきもちいいこと、きらい?」
「そうじゃなくて」
「じゃあすき?」

 じっと見つめながら聞いてくるリーバイの顔がよすぎて直視できない。思わず紘が顔を逸らせるとリーバイが椅子から立ち上がり近づいてきた。そして手が伸びてきて顔を戻された。

「ぼくを見て。はなすとき、見てはなす、OK?」
「……」
「すき?」
「な、なにが」
「きもちいいこと」
「それは、そりゃ……」
「ぼくのことは?」
「は?」
「ぼくのこと、きらい?」
「いや、嫌いじゃないけど……」
「きらいちがう、じゃあすきでいい?」
「だからそういう意味で好きじゃ」
「I need you, my baby. I want to get you alone」
「ベ、ベイビーとか言うな。つか何……ゲットアロン、何」

 だんだんと近くなる顔はますます直視できないというのに手で固定されていて逸らせない。しかも苦手な英語を甘い声で囁かれ、紘の脳内が混乱をきたす。確か前にも聞いた気がするのだが、何を言われているのか脳が働かない。

「ヒトリジメ」
「はぁっ?」
「ぼくだけのヒロ」
「あ、あんたな……っ」

 言い返そうとしたらまたキスをされた。そういえばいつのまにかベッドの隣に座られている。どうかと思う。何故こうも易々とキスをされるのか。だが抵抗しても力も敵わなければ策略的な何かも多分敵わない。というか別に策略されている訳ではないのだろうが、なら何故こうも毎回易々とキスをされるのか。紘自身、体の関係は今まで持てなくともキスの経験はある訳で、だがいつだってことを上手く運ぶために心を配っていた気がする。それでもキスでさえ簡単に気軽になどできていた記憶はない。相手に好かれていた自信はある。自分の見た目も別に悪くはないと思うし、向こうから告白されたパターンがほとんどだ。それでもキス一つするのに気軽にするという訳にはいかなかった。

「かわいい。なんてかわいいんだ、ヒロ。ねえ、キミを見てるだけで、あー……I am already hard」
「だから何言ってんのか」
「ごめんね。でもエッチなことだからニホンゴむずかしいしはずかしい」

 ニコニコとしながらリーバイは紘の手をつかんできた。それを自らの下肢へ誘導する。

「かっ、硬くしてんじゃねえ……!」
「I'm likely to fantasize about you……and I am excited to be naughty with you」

 またキスをしながら囁いてくる言葉は相変わらず何を言っているのかさっぱりわからない。だが今の流れからしたら絶対にろくでもないことだと紘はドン引きしながら逃れようとするがびくともしない。

「ヒロ、Do you want a hand job?」
「何て……」

 何とか聞き返すとまたキスをされながらすっと股間に触れられた。

「っひ?」

 ハンドジョブ……まさか手でされたい? って意味か……っ?

「さ、されたくないからな! 手でなんてされたくないからな!」
「Well, You want a blow job?」

 ブロー? って何。髪をブローするとかのブローか? いやそれだと意味が……風とか? いやでもそれも違うよな?

 戸惑っていると「blow job、イミ」と言いながらリーバイが舌を出してきた。あまりにも扇情的な様子に心臓が跳ねたがそれどころではない。

「さ、されたくねえから……!」

 声が裏返った。

「だ、だいたい下には母さんがいるってのにあんた、非常識にもほどがあるんだよ……!」
「Uh-huh. ヒナコやシローいなければOK、わかった」
「そうじゃない……!」

 言い返しているとまたキスをされた。

「あんたほんと……」
「きく、こたえるGame、たのしかった」
「は、はぁぁっ?」

 ゲーム? これだけ振り回されて、ゲーム……っ?

「って硬くしておきながら」
「Yeah. I gotta go potty now and I do something naughty in there」
「は?」
「そう。ヒロのせいでコレたいへん。トイレ。出してくる」
「……っ」

 思い切り枕を投げたが当たらず、リーバイは楽しげに部屋を出ていった。
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