銀色の魔物

Guidepost

文字の大きさ
上 下
112 / 137

111話 ※

しおりを挟む
 ただの生殺しだろ……。

 サファルは蕩けそうな脳ミソを何とか脳内に留めつつ思う。
 少しずつ慣れるとはどんな感じだろうと疑問に思っていたが、わりとすぐに判明した。それだけカジャックがすぐに対応してくれたということなので嬉しいことは嬉しい。ただ、生殺しだと思う。
 翌日にどのみち進行方向にあったようで川を見つけると、二人は水浴びをした。性的なことをするためではなく、普通にすっきりするためだ。それでも出来れば二人でキャッキャウフフといきたいところだったが、カジャックいわく「この辺りは弱いながらも魔物が出そうだ。先ほど足跡を見た」らしく、警戒のため一人ずつ浴びた。幸い出没はしなかったが、もちろん警戒を怠らないカジャックは正しいし格好がいいとサファルは思っている。どのみちカジャックがキャッキャウフフとはしゃいでくれるとも思えない。

 でも──

「一緒に水浴びしたかったです」
「背中でも洗って欲しかったか?」
「……そういうことじゃないです」

 サファルが首を振ると、ぽかんとしていたカジャックだがすぐに納得がいったという表情になった。見慣れていない人が見れば威嚇するかのような目付きでしかなかったであろうが、サファルには今や完全に分かる。
 その日の夜、川からさほど離れていない、ルークの森からは離れたものの平地ではなく林だろうか、木々に囲まれたような場所をカジャックは野宿に選んできた。

「魔物とか大丈夫でしょうか」
「ここならざっと辺りを確認したところだと問題なさそうだ」
「よかった」
「それに人の気配もない」

 カジャックのその言葉で、サファルは意図に気づいた。急に心臓が煩く鳴り出す。

 どれぐらいぶりだろう、俺の尻、固く閉じちゃってないかな。

 とてつもなくドキドキとしていると、名前を呼ばれた。引き寄せ抱きしめられる。髪を撫でられ、そっと指の腹で耳をなぞられた。それだけで体が震える。だが指はすぐに離れていき、今度はサファルのうなじに唇が軽く触れてくる。その唇はゆっくり動いていき、耳まで来ると耳たぶを甘噛みされた。耳は特に性感帯だと思っていなかったサファルだが、先ほどから座った状態なのに腰がもぞもぞと動いている。カジャックはといえば、耳を愛撫しながらもサファルの背中を優しく上下に撫でており、余計にもぞもぞとしてしまう。
 ふっと耳の穴に息を吹きかけられると、それまでの愛撫と相まってぞわりと体に何かが走った。おまけにカジャックの舌先がゆっくりと中に入ってくる。
 そんな状態がひたすら続いた。
 耳の穴はなぶられ過ぎて、もしかして聞くための器官ではなくやらしい穴に成り果ててしまったのではないかとさえ思えてきた。身悶えが止まらない。このままだと耳だけで達してしまいそうだった。

「あ……、カジャッ……」

 早くもっと他も触って、そして入れて欲しい、と願おうとすると、ようやくカジャックは耳責めを止めてきた。そして軽くサファルの唇にキスをしてくる。そのキスが本当に軽すぎて、さすがに気づいた。

「あの……まさか、終わ、り……?」
「ん?」
「……え、っと……」

 既に興奮し過ぎていて掠れた声が震えそうになる。

「まさ、か……慣れる、までこんな感じ……?」
「のつもりだが……」

 何この生殺し。
 死ぬ。
 俺の俺がまず死ぬ。
 あと精神も死ぬ。

「気が狂ってしまいます……」
「え?」

 カジャックは怪訝な顔をしていた。ということは少なくとも今の愛撫でカジャックは興奮していないということになる。

 どんだけ精神強いの?
 いや、する側はこんなものなのか?
 それとも俺がカジャックを好きな半分もカジャックは俺のこと好きじゃないとかじゃないだろうな。

 その考えはかなりサファルを落ち込ませたが、それでも完全に勃ったものが少しも治まらないほど、耳にされた愛撫で相当興奮させられていた。今のサファルの耳は尻の穴より敏感になっているかもしれない。
 普段なら一人だけ勃起しているところなど、大好きなカジャックに見られるなんて恥ずかしさの極みの勢いでしかないが、最近ご無沙汰過ぎたのと今の愛撫がサファルの羞恥心を蹴散らしていた。

「見てよ、だって。俺、こんなになってんのに……何もしないとか死んじゃう」

 俺が入れる側だったら絶対今、無理やりにでもカジャックに突っ込んでる。カジャックの理性どうなってんの? というか、あーもう、なんで俺、受ける側なんだよ、受ける場合カジャックのがまず可能な状態じゃないと無理じゃないかあ!

 かといってこんな場所でいきなり初めての入れる側はサファルには難し過ぎるし、カジャックも歓迎しないだろうことは手に取るように分かる。
 初めて受ける側であることに、ある意味不満を感じつつサファルは自分のものをむき出しにした。

「外でそんな無防備に……」
「人の気配ないって言った」
「それは、そうだ、が」
「いいよ、カジャックがしてくれないなら……、あ、でもさ、あの、もっと耳、舐めて……」

 囁くような声しか出ないのは興奮が治まらないからだ。かろうじて残っているわずかな理性が「後でそれこそ死ぬぞ、死ぬほど恥ずかしくなるぞ止めろ」と自分に言い聞かせてくるが、本能には勝てなかった。
 そっと握ると、分かっていたことだが先はかなり濡れている。それを指や手のひらに絡め、サファルはカジャックが見ている前で自分のものを慰め始めた。

「サ、ファル」
「は、ぁ……どうしよ、すぐ来そう……」
「さすが、早いな……」
「萎えそうなこと言わな……いや、萎えたほうがいいの、か……ううん、もうこれ無理……」

 まるでうわごとだ。
 カジャックに止められるかと少し思ったが、さすがにサファルの状態を見て止めることはしなかった。それよりも早く終わらせようとでも思ったのか、カジャックは言われた通りにまた耳に息を吹くと舌で愛撫をしてくる。

「ぁ、あ……」

 やはり耳だけでも達しそうな気持ちよさだ。しかも今やサファルは自分で扱いている。

「……やらしいな、サファルは」

 おまけに低い声で囁かれ、あっという間に先から白濁を迸らせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主神の祝福

かすがみずほ@11/15コミカライズ開始
BL
褐色の肌と琥珀色の瞳を持つ有能な兵士ヴィクトルは、王都を警備する神殿騎士団の一員だった。 神々に感謝を捧げる春祭りの日、美しい白髪の青年に出会ってから、彼の運命は一変し――。 ドSな触手男(一応、主神)に取り憑かれた強気な美青年の、悲喜こもごもの物語。 美麗な表紙は沢内サチヨ様に描いていただきました!! https://www.pixiv.net/users/131210 https://mobile.twitter.com/sachiyo_happy 誠に有難うございました♡♡ 本作は拙作「聖騎士の盾」シリーズの派生作品ですが、単品でも読めなくはないかと思います。 (「神々の祭日」で当て馬攻だったヴィクトルが受になっています) 脇カプの話が余りに長くなってしまったので申し訳ないのもあり、本編から独立しました。 冒頭に本編カプのラブシーンあり。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

【完結】伯爵家当主になりますので、お飾りの婚約者の僕は早く捨てて下さいね?

MEIKO
BL
【完結】そのうち番外編更新予定。伯爵家次男のマリンは、公爵家嫡男のミシェルの婚約者として一緒に過ごしているが実際はお飾りの存在だ。そんなマリンは池に落ちたショックで前世は日本人の男子で今この世界が小説の中なんだと気付いた。マズい!このままだとミシェルから婚約破棄されて路頭に迷うだけだ┉。僕はそこから前世の特技を活かしてお金を貯め、ミシェルに愛する人が現れるその日に備えだす。2年後、万全の備えと新たな朗報を得た僕は、もう婚約破棄してもらっていいんですけど?ってミシェルに告げた。なのに対象外のはずの僕に未練たらたらなの何で!? ※R対象話には『*』マーク付けますが、後半付近まで出て来ない予定です。

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

捨てられ子供は愛される

やらぎはら響
BL
奴隷のリッカはある日富豪のセルフィルトに出会い買われた。 リッカの愛され生活が始まる。 タイトルを【奴隷の子供は愛される】から改題しました。

処理中です...