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3章 騎士編 光の救世主

99話

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 流輝たちはロニーを救出した上でさらなる味方を得て、倉庫へ戻る道を急いだ。人数が増えたのもあり、目くらましの魔法は下手をすれば途中で切れてしまうかもしれないと思い、流輝は戻りではかけるのをやめた。どのみちロニーを回収できたことだしそこまで厳密に潜むこともないだろう。見つかれば倒すしかない。正妃たちのいる倉庫も精鋭騎士がいるのでそこまで不安はなかった。
 そんな油断があったのか、途中背後から来た魔族の兵士に見つかり咄嗟に闇魔法を放たれ、流輝を含めた数名がその攻撃を受けた。
 はずだったが、流輝は全くの無傷だった。咄嗟だったにも関わらず誰かハーフブラットの騎士が魔法でガードしてくれたのかと思ったが、キャスたちを見ると致命傷ではないもののそこそこの傷を負っている。ハーフブラットの騎士たちが前へ出て襲ってきた魔族の兵士に対抗してくれている間に流輝はあまり得意ではない回復魔法を皆に使った。

「……リキ様の回復は驚くくらい確実に治るんですが……驚くくらい痛いですよね」
「ならキャスだけ傷負っとくか」
「とんでもない。愛の痛みだと俺は……」
「ちょっと黙ってて」

 流輝も仕返しだとばかりに風魔法で相手方の兵士たちを切り裂いた。昔ほど人型をした魔族への攻撃に抵抗はないが、それでも気持ちのいいものではない。だがあまり騒ぎになるといくら精鋭ばかりだと言えども少人数のこちらは不利だ。だから確実に倒すしかない。
 見つからないよう行きの時と同じく目くらましの魔法を使ってもいいのだが、意識をある程度そちらに保つ必要があるため人が増えると完璧に使いこなし辛い。むしろ絶対見つかってはいけない時に解除されてしまうと余計に厄介なため、初めから使わないでいた。

 つか、昔もこういうこと、あったよな?

 いや、その時とは状況などは違うのだろうか。

 あの時もいつの間にか近づいていた強い魔獣に闇魔法を使われて……でも確かソリアが助けてくれたんだっけか。だからあの時も俺、何ともなかったんだったよな?

 だが先ほどは間違いなく流輝はキャスたちと同様の状況だったはずだ。しかし実際は流輝は無傷で、キャスたち数名は魔法攻撃を受け負傷していた。

 どういうことだ……? たまたま偶然俺だけ当たらなかった? そんな偶然ある? いやまあ、ないとも言えない、か?

「リキ殿」

 考えごとをしていたらセオに呼ばれた。

「はい」
「私の油断で申し訳ありません」
「……? えっと、何の話です?」
「魔族の兵士に見つかり、攻撃を受ける羽目に」
「え? ああ、さっきの。いや、何で殿下が謝るんです。不可抗力じゃないですか」
「いえ。あなたは光の救世主だ。見つかるという状況すら避けなければならない上に、万が一の時は命に代えても守らなければならない存在なんです。ですが私は無傷で……」
「俺も無傷でしたよ。それにそんな気遣いはマジで不要です。やめていただきたい」
「しかし」
「しかしも『かかし』もねーんですよ」
「カカ……シ?」
「そこは流して。殿下、俺は申し訳ないですけど強いですよ。殿下が五人に増えて俺にかかってきても倒す自信あります。そんな俺に対してモールザ王国の未来がかかってる殿下の命に代えられつつ守られても困ります」

 流輝の言葉にセオはぽかんとした顔をしてきた。だが次の瞬間には笑ってきた。思わずといった様子で吹いた後に口を押え、セオは「なるほど」と流輝を見てきた。

「確かにそうですね。では頼りにさせてもらいます」
「はい、すげー頼ってください」

 倒した兵士は他の敵の目に触れないよう、近くにあった部屋の中に押し込んでおいた。
 さらに進みながら、流輝はふと気づいてキャスに「なんかさ」と話しかける。

「どうかされましたか」
「いや、城内が少し騒がしくねえかな」
「……、……確かに」
「もしかしてさっき倒したやつらのこと、バレた?」
「……いえ、騒がしいのはまた別の方面からのような気がします」

 目を瞑ってさらに耳を澄ましたのか、少ししてからキャスが答えてきた。

「……じゃあ何かあったのかな」
「そうかもしれません」

 その時、城の外に待機している者から通信機を通じて連絡が入った。ちなみに城外に待機してもらっているのは転移魔法が使える魔術師と少しの騎士たちだ。王国の外へ繋げてある転移魔法をすぐに使えるよう構えてもらっている。
 どうやら神殿付近で魔族の動きがあったのか、神殿へ向けて琉生たちメンバーが向かったようだ。それとともに各国の援軍も神殿へ出発したらしい。

 なるほど……その知らせがここにいる魔族たちにも入ったんだな?

 城内が少々騒がしく感じた理由はおそらくそれだろう。流輝はセオたちにも通信機で聞いた話を告げた。そして手首にある絆の輪を指で触れ、流輝は琉生の無事を祈った。
 昔だったら離れた状態というだけで居ても立っても居られなかっただろう。離れているだけでなく琉生が危険な場所へ赴くことなど、到底耐えられなかっただろう。だが今は違う。琉生も強くなったし信頼している。

 大丈夫だ……大丈夫。だけど無事でいてくれ。

「美しい輪ですね」

 流輝の手首に気づいたロニーが続けてきた。

「どれほどの絆と信頼で固く結ばれているのかよくわかります」
「ありがとうございます、第二王子殿下」
「ひょっとして、もう一人の光の救世主、ルイ殿と結ばれた絆の輪、ですか?」
「はい。ルイも神殿へ向かっていて。無事を祈ってました」
「助けにきてもらった僕が言うことではありませんし、言われたくもないかもしれませんが……きっとルイ殿にもリキ殿と同じように信頼と絆で結ばれた多くの騎士や魔術師がついているのだと思います。それにニューラウラ王国だけでなく他の二国の味方もついている。だからきっと大丈夫、です」
「……はは。ありがとうございます殿下。言われたくないなんてとんでもない。すげー心強かったです」

 ロニーの優しい言葉に流輝は笑いかけた。
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