45 / 120
2章 学生編 生きる覚悟
44話
しおりを挟む
「どうやらリキ様は露出狂らしいですね」
「違うから……! 誰から聞いたのソリア」
とてつもなく微妙な顔をしながら流輝はニコニコ楽しそうなソリアを見る。
「キャスですね」
「キャスの野郎……! つか、あの時聞こえてたんか……」
確かに心配そうなローザリアが琉生に「露出狂ではないのか」と聞いて琉生が大笑いしていた時にキャスとフランは遠くないところにいた。護衛騎士のため、日常からある意味風景の一部かのように二人はいるし、ローザリアがやって来る時は今や護衛騎士となっているエリスが必ず付き添っている。
とはいえ少し離れたところにいたし、聞こえているとは思わなかった。特にローザリアの害になりそうなことは片っ端から排除しそうなエリスなら聞こえていれば絶対露出狂をローザリアのそばに置いておかないだろうとしか思えない。
「エリス、別に俺を変質者を見るような目で見てはいなかったんだけどな」
「ふふ。エリスはしっかりしてるわりに妙に疎いところもありますので、ピンと来ていなかったんじゃないですか? リキ様があられもない恰好をなさっておられた時もローザリア様だけでエリスは見ていないでしょうし」
「あられもない恰好とか言わないでよ……」
「キャスから聞いたので」
「ほんとキャスの野郎……」
ソリアとの魔術訓練の時間のためここにはいないキャスを呪っていると、ソリアが楽しそうに流輝を見てくる。
「怒ってやらないでやってくださいね。キャスからすれば大事な主が素晴らしい魔法を使いつつも突然扇情的な恰好をしたかと思うと」
「いやしてねえよ……!」
「下着姿でうろうろするようなことをおっしゃられてびっくりしたんだと思いますので」
「そうじゃねえ……! つかキャス、何でわざわざソリアにそんな話してんの」
「私とキャスって幼なじみなんですよ。それもあってか、俺の主が俺の主がってやたら煩さ……いえ、嬉しそうにそして悲しそうに騒いでいましたよ。もう泣く勢いでね」
笑顔のまま「煩い」と多分絶対言いかけたよな、と流輝は真顔でソリアを見た後でため息をついた。
「元の世界では泳ぐ用の衣装ってのがあったんだよ。それが下着に似てるんだ」
「へえ。ですがいくら水に入るためとはいえここでは少し考えられません。けっこう皆露出の激しい人たちだったんですね、リキ様の元の世界は」
ここにきてカルチャーギャップが半端ねえ……。
ただ確かに庶民はさておき、今までしっかりした衣装以外で人前に出ている者をこの世界では見たことがないかもしれない。
「じゃあ風呂も誰かと一緒に入るとか、しないの?」
「家族以外で、ですか? 庶民の方たちの文化はわかりませんが、我々は特にそういったことはしませんねえ」
「ふーん。だからか。この世界に来てもう六年くらい経つけど夏に泳ぐ機会が全然ないなって思ってたんだよなあ。じゃあ今後も夏は湖や海で泳ぐこと、できねーのか」
「別にしていただいて構いませんよ、私は」
「……ソリアがよくても他のやつに俺は露出狂の変態って思われるってことだろ……嫌だよ……」
「ふふ。楽しいですねえ」
「楽しくねえよ……。じゃあやっぱオリジナルミストシャワーで涼むしかねえな」
「オリジナルみすとしゃわーというのが私にはどんなものかわかりませんが、なかなか上手く応用されたんでしょうね。さすがリキ様です」
褒められると調子に乗りたくなる。流輝は少し照れながらも「こういうのだよ」と今度は容器なしでミストを作り出してソリアに見せた。
「なるほど。これは涼しいですね」
「つか、ソリアも暑いって感覚あるの」
「私を何だと思ってるんです?」
別の次元の人だと……。
「だって夏でもかっちりした制服を着て汗一つかかないだろ」
「私も魔法を使ってますしね」
「えっ、ソリアの涼み方知りたい。教えて」
「いいですけど、その前に少し魔法石のお勉強をいたしましょうか」
「了解!」
魔法石については学園でも習った。魔鉱石と言われる原石からできたもので、石に魔力がある。発掘される時点ではただの石の塊にしか見えないらしいが、加工し磨けば透明感のある七種類の光る宝石となる。魔力がかなり弱い者でもこの魔法石を使うことで魔法を使うことは可能だし、自分の属性以外の属性も使える。ただし力はやはり使う者の魔力に左右されるらしい。
質のいい魔法石なら魔力を一旦使い切ってもまた自然と溜まっていき、何度も再利用できる。ただし質によっては溜まる時間はまちまちだと習った。
「そういや習った時は特に何とも思わなかったけどさ、同じ原石なのに何でそんなに品質変わってくんだろ」
「そういうものですよ。リキ様の世界では宝石、ありませんでした?」
「あったけど……俺らこっち来たの九歳の時だし宝石とかわかんねえよ」
「確かに。多分リキ様の世界でも、宝石は同じ種類の石だとしても価値は様々だったのではないかと思いますよ。純度はそこで取れた魔鉱石によって変わるんです。質の悪い魔鉱石から作られた魔法石なら庶民でも買えたりしますけどね、大抵数回魔法を使えば石は砕けてしまうか、砕けなくとも力の全くないただの石になるでしょうね」
「へえ。そういうもんなんだな。でもいいやつはマジで高いもんなあ。お父さんとかお母さんは気にせず使っていいって言うけど、気にしないでいられるような値段じゃねえし……」
以前モリスに値段を何気に聞いて開いた口が塞がらなかった流輝は微妙な顔をした。
「違うから……! 誰から聞いたのソリア」
とてつもなく微妙な顔をしながら流輝はニコニコ楽しそうなソリアを見る。
「キャスですね」
「キャスの野郎……! つか、あの時聞こえてたんか……」
確かに心配そうなローザリアが琉生に「露出狂ではないのか」と聞いて琉生が大笑いしていた時にキャスとフランは遠くないところにいた。護衛騎士のため、日常からある意味風景の一部かのように二人はいるし、ローザリアがやって来る時は今や護衛騎士となっているエリスが必ず付き添っている。
とはいえ少し離れたところにいたし、聞こえているとは思わなかった。特にローザリアの害になりそうなことは片っ端から排除しそうなエリスなら聞こえていれば絶対露出狂をローザリアのそばに置いておかないだろうとしか思えない。
「エリス、別に俺を変質者を見るような目で見てはいなかったんだけどな」
「ふふ。エリスはしっかりしてるわりに妙に疎いところもありますので、ピンと来ていなかったんじゃないですか? リキ様があられもない恰好をなさっておられた時もローザリア様だけでエリスは見ていないでしょうし」
「あられもない恰好とか言わないでよ……」
「キャスから聞いたので」
「ほんとキャスの野郎……」
ソリアとの魔術訓練の時間のためここにはいないキャスを呪っていると、ソリアが楽しそうに流輝を見てくる。
「怒ってやらないでやってくださいね。キャスからすれば大事な主が素晴らしい魔法を使いつつも突然扇情的な恰好をしたかと思うと」
「いやしてねえよ……!」
「下着姿でうろうろするようなことをおっしゃられてびっくりしたんだと思いますので」
「そうじゃねえ……! つかキャス、何でわざわざソリアにそんな話してんの」
「私とキャスって幼なじみなんですよ。それもあってか、俺の主が俺の主がってやたら煩さ……いえ、嬉しそうにそして悲しそうに騒いでいましたよ。もう泣く勢いでね」
笑顔のまま「煩い」と多分絶対言いかけたよな、と流輝は真顔でソリアを見た後でため息をついた。
「元の世界では泳ぐ用の衣装ってのがあったんだよ。それが下着に似てるんだ」
「へえ。ですがいくら水に入るためとはいえここでは少し考えられません。けっこう皆露出の激しい人たちだったんですね、リキ様の元の世界は」
ここにきてカルチャーギャップが半端ねえ……。
ただ確かに庶民はさておき、今までしっかりした衣装以外で人前に出ている者をこの世界では見たことがないかもしれない。
「じゃあ風呂も誰かと一緒に入るとか、しないの?」
「家族以外で、ですか? 庶民の方たちの文化はわかりませんが、我々は特にそういったことはしませんねえ」
「ふーん。だからか。この世界に来てもう六年くらい経つけど夏に泳ぐ機会が全然ないなって思ってたんだよなあ。じゃあ今後も夏は湖や海で泳ぐこと、できねーのか」
「別にしていただいて構いませんよ、私は」
「……ソリアがよくても他のやつに俺は露出狂の変態って思われるってことだろ……嫌だよ……」
「ふふ。楽しいですねえ」
「楽しくねえよ……。じゃあやっぱオリジナルミストシャワーで涼むしかねえな」
「オリジナルみすとしゃわーというのが私にはどんなものかわかりませんが、なかなか上手く応用されたんでしょうね。さすがリキ様です」
褒められると調子に乗りたくなる。流輝は少し照れながらも「こういうのだよ」と今度は容器なしでミストを作り出してソリアに見せた。
「なるほど。これは涼しいですね」
「つか、ソリアも暑いって感覚あるの」
「私を何だと思ってるんです?」
別の次元の人だと……。
「だって夏でもかっちりした制服を着て汗一つかかないだろ」
「私も魔法を使ってますしね」
「えっ、ソリアの涼み方知りたい。教えて」
「いいですけど、その前に少し魔法石のお勉強をいたしましょうか」
「了解!」
魔法石については学園でも習った。魔鉱石と言われる原石からできたもので、石に魔力がある。発掘される時点ではただの石の塊にしか見えないらしいが、加工し磨けば透明感のある七種類の光る宝石となる。魔力がかなり弱い者でもこの魔法石を使うことで魔法を使うことは可能だし、自分の属性以外の属性も使える。ただし力はやはり使う者の魔力に左右されるらしい。
質のいい魔法石なら魔力を一旦使い切ってもまた自然と溜まっていき、何度も再利用できる。ただし質によっては溜まる時間はまちまちだと習った。
「そういや習った時は特に何とも思わなかったけどさ、同じ原石なのに何でそんなに品質変わってくんだろ」
「そういうものですよ。リキ様の世界では宝石、ありませんでした?」
「あったけど……俺らこっち来たの九歳の時だし宝石とかわかんねえよ」
「確かに。多分リキ様の世界でも、宝石は同じ種類の石だとしても価値は様々だったのではないかと思いますよ。純度はそこで取れた魔鉱石によって変わるんです。質の悪い魔鉱石から作られた魔法石なら庶民でも買えたりしますけどね、大抵数回魔法を使えば石は砕けてしまうか、砕けなくとも力の全くないただの石になるでしょうね」
「へえ。そういうもんなんだな。でもいいやつはマジで高いもんなあ。お父さんとかお母さんは気にせず使っていいって言うけど、気にしないでいられるような値段じゃねえし……」
以前モリスに値段を何気に聞いて開いた口が塞がらなかった流輝は微妙な顔をした。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる