上 下
95 / 111
一時の平和な日常

ヤーシュレイ

しおりを挟む
そんな時であった。

「……だから貴女は、いつまでも大切な人を無意識に遠ざけ、身勝手に孤独を選ぶのですわ。」

森の闇の中から、澄んだ声が聞こえてきた。

「その声は、ヤーシュレイ?」

反応したのは、アーシュリーだった。

「へぇ?互いに『神』になっても、私の声は判るのね?」

スゥッと闇の中から、その女性は現れる。

シンは、その唯ならぬ気に反射的に無言で身構える。

「その殿方が『姉様』が選んだ次の『英雄』ですか?」

ヤーシュレイと呼ばれた女性は、まるで品定めをするかの様に、シンを爪先から頭のてっぺんまで、ジロジロと見回していた。

「……ふぅん?あんまり大した事なさそうね?むしろ私が呼んだ英雄の方が強くてよ?」

なんだ?初対面で随分と失礼な奴だな。とシンは思いながらヤーシュレイを軽く睨む。

「……ふん。言いたい事はそれだけか?ヤーシュレイ。」

「……うふふっ、自分が恋一つせず、自己犠牲で世界を救ったと思い上がった姉様に一つ忠告と、私の子孫・・・・の顔を見にと、そちらの英雄さんへご挨拶に来たのよ?一応は歓迎して下さっても罰は当たらないのではないかしら?」

不敵な笑みを浮かべつつ、チラリとサラを見やる。

どういう事だ?
ヤーシュレイが祖先と言わんばかりの言葉が聞こえたが。

シンは解せないと言う表情をした。

それを見たヤーシュレイは

「姉様はね。その昔、この世界が壊滅する戦いの為に身を投じ、世界を繋ぎとめる為に、命を捧げたのよ?ただの『英霊』が『神』に成れたのを不思議に思わないかしら?英雄さん?」

冷徹な表情をしているヤーシュレイではあるが、シンは彼女の一瞬の表情を見逃さなかった。

一瞬だけだったが、悲しげな感情が表面に表れたのだった。

なんだ?
この違和感は。

「ヤーシュレイ、そんな話の為にここに来たのか?」

アーシュリーは、ヤーシュレイを睨み付けながら、言葉を続ける。

「お前が実体化したと言う事は、『お前が選んだ英雄』をこの世界・・・・に召喚したと言う事か?『別の世界の神に成った』お前が?何故にこの世界に干渉してきた?」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...