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大乱と統一

父子の別れ

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「トウッ!」

レーザーセイバーを振り下ろし、アヒムの左腕を切り落とす。
普通なら再生する。
……筈だった。

やはり。

と、メタルバトラーは納得した。

確かにマグナムブラスターも熱線だが、死滅していない細胞から再生。
故に頭の位置が微妙にズレたり、異形の様にいびつな形の再生になる。

つまり『焼き斬る』のが、再生不可能にする方法だった。

「まさしくヒュドラだな?」

成る程。
ただの制御研究だけでは無く、完全なる不死を目指す研究もしていた訳か。

そう思いながら、メタルバトラーとアヒムの戦いは白熱して加速した。

が、弱点を見破られたアヒムに、当然勝ち目は無く、やがて一方的に斬られ始める。

そこに避難誘導を終えて、フォルクハルトと、アルフォンス達が戻って来た。

一方的にやられているアヒムを見て、思わず「父上」と、口から言葉がこぼれる。

すると、忘我ぼうがの域であった筈のアヒムの口から自我のある言葉を発した。

「……フォ、フォルか?そして、アルか?」

生前の面影も無い、鬼の様な顔つきのアヒムではあったが、その声には優しさが帯びていた。

メタルバトラーは一瞬、罠かと思ったが、アヒムの眼は正気を宿しており、表情も苦悶に歪んでいた。

『アーシュリー、大公の意識を感じるか?』

『今のところは、な。……だが、また邪心に呑み込まれる。汝は助けたいと、思うやもしれんが、奴等の罠の方が一枚上だった。もう……救うすべは無い。』

『……そうか。』

メタルバトラーは、『父子の今生の別れになる』と悟り、レーザーセイバーの刀身を納めてから、この時をただ黙って静かに見守った。

「アル、フォル、済まなかったなぁ。……妻が亡くなり、ポッカリと空いた胸に……奴等の付け入る……隙が……出来た。……何かの……暗示だっ……たのかも知れん。……そこから、儂は……制御が……出来な、かっ……た。」

「……もういい!もういいんですよ、父上。」

フォルクハルトの言葉に頭を横に振るアヒム。

「良くは、無いのだ。……今、思えば……儂は妻が……無くなろうとも……愛する国民や……お前達、姉弟を……考えて……未来を見据えれば……斯様かように……国は乱れなかった……全ては、儂の心が弱かった……せいだ。」

「……父上ぇ」

やると決めた限り私心を捨て親殺しを決めた、アルフォンスとフォルクハルトの両目に薄らと涙が滲む。

その場の誰しもが、涙を流すのを堪える者や、恥とも思わず号泣する者が居た。

だが、ただ1人だけ泣かず、アヒムに問い掛ける者が居た。

「……アヒム、いやアヒム大公。意識を保つのも限界か?」

メタルバトラーは、ゆっくりと近付く。

「……うむ。これ以上……は……植え付……けられ……た邪心……が、皆の……良……心を利用……し、儂と同じ……運命にな……る。」

アヒムの心臓の位置が、奇妙な形で盛り上がって肉が開き、中から黒い直径1メートル位の球体が表れる。

「こ、れ……が、儂の……弱点……だ。早く、儂……を……討て。」

メタルバトラーは、アーシュリーに確認した。

『あれは、演技による罠か?』

『いいや。アヒムの良心からの言葉だが、邪心が邪魔をして、本当の事が言えないらしいな。アレを破壊すれば、半径約10メートルの者は呑み込まれ、邪心を増長させられるな。汝ならばアーマーで耐えられるが、普通なら無理だろう。恐らくアヒムの妻も、こうやってアヒムに邪心を植え付けたのだろうよ。』

アーシュリーの言葉に納得したメタルバトラーは、フォルクハルト達に、その事を伝え下がらせた。

レーザーセイバーがブゥンと音をたて、刀身が姿を現す。

「…………最期に言い残した事、伝えるべき事は無いか?」

メタルバトラーは冷ややかな、抑揚よくようの無い声で、アヒムに尋ねた。

「……娘に。エルネスティーネに、済まなかった……幸せになれ、と。」

「承知した。」

メタルバトラーは、レーザーセイバーを構え、一気に振り下ろす。

「……許せよ。バトルプロミネンススラッシュ!!」

必殺技が展開し、光の柱が天を貫く。

アヒムの居た場所には、クレーターと、その中央にメタルバトラーが佇んでいた。

『……私しか見てない。泣いても良いのだぞ。』

「……泣いてられねぇ。泣ける訳がねぇ。……今迄も、そして……これからも。」


アーシュリーの気持ちは有り難かったのだが、メタルバトラーは、自身のやるせない気持ちを俯いて呟いて泣くのは堪えた。

確かに正義を執行した。

だが、今迄も犠牲を払っての正義だった。

疑問に思ってはならない。

歩みを止めてはならない。

ここで終えたら多数の人々が、更なる悲劇を迎える。

そう思い、メタルバトラーの心は堪え忍んだのだった。

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