上 下
41 / 111
暗雲たちこめる王国と公国

弟と兄と……

しおりを挟む
サイがクォーロストと斬り結んで、数百……いや、数千合。

互いに未だ、決定的な一撃を出せずにいた。

「…………何故だ?」

シンは、端から観戦して、一つの疑念が浮かび上がった。

クォーロストは、息が上がらず、常に万全。

対してサイは、肩で息を切らしつつある。

「……クォーロスト、地に堕ちたな? まさかアンデッドに成り下がったか。」

すると、クォーロストは残忍な笑みを浮かべながら

「………くくくくっ、漸く其処そこに気が付いたか? 愚弟。父と貴様が俺にあの様な仕打ちしなければ、俺も死なずに済だんだがなぁ?」

「……フン。それはお前が悪いのだろう? お前の今までの振る舞いから、父に愛想を尽かされた。……それだけだ。」

「……普段の振る舞いか。俺は、今まで王族として、間違いの無い振る舞いをしてたのだがな。貴様が全てを台無しにし、最愛のネーネリアをも奪い、王位継承権まで行い、更に父まで手に掛けたのであろう?」

「………何? 余が父を?戯れ言を申すな!! 普段から、民を虐げ、更に父を殺したのは、お前だろう!」

『……おかしい。 会話が噛み合っていない。なんだ?この違和感は。』

メタルバトラーは、兄弟の会話のズレに気付いた。

其処に

「兄上達?」

サラがやって来た。

「サラ、危険だから下がれ!」

サイはサラに注意をするが、

「……サラ、久し振りだな。あの時依頼か?」

オークをけしかけた時の事をクォーロストは言っていた。

「貴様達を屠って、この国を俺のモノにしてやる!」

「クォーロスト兄上! やめて下さい! 一体、何の為にこの様な事を!?」

「………復讐だよ。貴様ら全員に対してな!」

斬魔糸がサラに狙いを定めた動きで、一斉に襲い掛かる。

だが、その凶刃は届く事は無かった。

「………シン?」

レーザーセイバーで、かろうじて攻撃を払い退けていた為である。

「……サイ、そしてクォーロスト。お前達は頭に血が昇り過ぎて、互いに嘘を言っている様な錯覚を起こしてないか?」

『何?』

「お前達は、互いに父を殺された、と言っていたな? 矛盾してないか?」

『………………………………。』

2人は、黙ってしまった。
しかし、この兄弟は互いに、相手が嘘や狂言を述べている、そう思って疑っていた。

「お前達は、少し冷静になるべきだ。 仮に第一段階で、前陛下をしいし奉り、お前達どちらかを現陛下とし、第二段階として、片方を復讐者、そして弑される者とした後、得するのは誰だ?……サラや太后、ネーネリア妃以外で、だ。」

「シン。まさか裏切り者が、この国にいるとでも言いたいのか? 友と言えども、戯れ言で申せば………」

「そのまさか・・・だよ。サイ。」

メタルバトラーは、やられた。と言わんばかりの落胆の声色で話した。

「………冷静に考えれば、そうなんだよ。後継者を指定せず、兄の事をありもしない狂言を前陛下に吹き込み、追放か何らかの処罰にし、弟を後継者とした後に、前陛下を弑し、機が熟してから、今回に至る様に仕向けた人間が内部に存在している。って事がね。」

サイもクォーロストも、そしてサラも半信半疑の思いでメタルバトラーの言葉を聴いている。

居るんだよ・・・・・。昔から従っている様に見せて、王の側に常にいて、操れる人間が1人・・・・・・・・

『………………まさか!?』

話を聴いていた3人は、思い当たったのか、異口同音で言葉を出した。

「あぁ、一杯喰わされたよ。アイツが内通者とはな。」

メタルバトラーの言葉には、苛立ちが込められていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

聖女様に貴方の子を妊娠しましたと身に覚えがないことを言われて結婚するよう迫られたのでもふもふな魔獣と旅にでることにした

葉柚
ファンタジー
宮廷魔術師であるヒューレッドは、ある日聖女マリルリから、「貴方の子を妊娠しました。私と結婚してください。」と迫られた。 ヒューレッドは、マリルリと二人だけで会ったこともなければ、子が出来るような関係を持ったこともない。 だが、聖女マリルリはヒューレッドの話を聴くこともなく王妃を巻き込んでヒューレッドに結婚を迫ってきた。 国に居づらくなってしまったヒューレッドは、国を出ることを決意した。 途中で出会った仲間や可愛い猫の魔獣のフワフワとの冒険が始まる……かもしんない。

処理中です...