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暗雲たちこめる王国と公国

弟と兄と……

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サイがクォーロストと斬り結んで、数百……いや、数千合。

互いに未だ、決定的な一撃を出せずにいた。

「…………何故だ?」

シンは、端から観戦して、一つの疑念が浮かび上がった。

クォーロストは、息が上がらず、常に万全。

対してサイは、肩で息を切らしつつある。

「……クォーロスト、地に堕ちたな? まさかアンデッドに成り下がったか。」

すると、クォーロストは残忍な笑みを浮かべながら

「………くくくくっ、漸く其処そこに気が付いたか? 愚弟。父と貴様が俺にあの様な仕打ちしなければ、俺も死なずに済だんだがなぁ?」

「……フン。それはお前が悪いのだろう? お前の今までの振る舞いから、父に愛想を尽かされた。……それだけだ。」

「……普段の振る舞いか。俺は、今まで王族として、間違いの無い振る舞いをしてたのだがな。貴様が全てを台無しにし、最愛のネーネリアをも奪い、王位継承権まで行い、更に父まで手に掛けたのであろう?」

「………何? 余が父を?戯れ言を申すな!! 普段から、民を虐げ、更に父を殺したのは、お前だろう!」

『……おかしい。 会話が噛み合っていない。なんだ?この違和感は。』

メタルバトラーは、兄弟の会話のズレに気付いた。

其処に

「兄上達?」

サラがやって来た。

「サラ、危険だから下がれ!」

サイはサラに注意をするが、

「……サラ、久し振りだな。あの時依頼か?」

オークをけしかけた時の事をクォーロストは言っていた。

「貴様達を屠って、この国を俺のモノにしてやる!」

「クォーロスト兄上! やめて下さい! 一体、何の為にこの様な事を!?」

「………復讐だよ。貴様ら全員に対してな!」

斬魔糸がサラに狙いを定めた動きで、一斉に襲い掛かる。

だが、その凶刃は届く事は無かった。

「………シン?」

レーザーセイバーで、かろうじて攻撃を払い退けていた為である。

「……サイ、そしてクォーロスト。お前達は頭に血が昇り過ぎて、互いに嘘を言っている様な錯覚を起こしてないか?」

『何?』

「お前達は、互いに父を殺された、と言っていたな? 矛盾してないか?」

『………………………………。』

2人は、黙ってしまった。
しかし、この兄弟は互いに、相手が嘘や狂言を述べている、そう思って疑っていた。

「お前達は、少し冷静になるべきだ。 仮に第一段階で、前陛下をしいし奉り、お前達どちらかを現陛下とし、第二段階として、片方を復讐者、そして弑される者とした後、得するのは誰だ?……サラや太后、ネーネリア妃以外で、だ。」

「シン。まさか裏切り者が、この国にいるとでも言いたいのか? 友と言えども、戯れ言で申せば………」

「そのまさか・・・だよ。サイ。」

メタルバトラーは、やられた。と言わんばかりの落胆の声色で話した。

「………冷静に考えれば、そうなんだよ。後継者を指定せず、兄の事をありもしない狂言を前陛下に吹き込み、追放か何らかの処罰にし、弟を後継者とした後に、前陛下を弑し、機が熟してから、今回に至る様に仕向けた人間が内部に存在している。って事がね。」

サイもクォーロストも、そしてサラも半信半疑の思いでメタルバトラーの言葉を聴いている。

居るんだよ・・・・・。昔から従っている様に見せて、王の側に常にいて、操れる人間が1人・・・・・・・・

『………………まさか!?』

話を聴いていた3人は、思い当たったのか、異口同音で言葉を出した。

「あぁ、一杯喰わされたよ。アイツが内通者とはな。」

メタルバトラーの言葉には、苛立ちが込められていた。
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