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暗雲たちこめる王国と公国

シンVSグレイ

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静まりかえった城内に、ただ一人。
国王こと、サイクォーダーが玉座に座っている。

それの姿を確認した者が、静かに近付いて来た。

「…………どんなに、この時を待っていた事か。」

一歩、また一歩とゆっくりと近付いて来る。

「貴様に全てを奪われ、この身に堕ち、どんなに憎く思った事か。」

一歩。

「確かに貴様が直接手を下してないだろう。しかし、俺は神がいるならば、神もろとも消さずして、俺の溜飲が下がらん。」

また一歩。

「貴様が愛した、この国を蹂躙し、焼き付くし、最愛なる者を全て奪ってやる!」

奴は剣を抜き放ち、サイに目掛けて玉座ごと、真っ二つにする。

しかし、血が吹き出ず、乾いた音ともに、床にサイだった物が転がった。

「なっ!?なんだとぉー!?」

それは木像にサイの服を着せた、影武者だった。

城全体の光源を少なくする事で、いつもより薄暗く、物を見分けるのは、至難な状況であった。

また、魔術が城の効果で無効な為、直接的手段しか取れないのが、奴の仇となった。

「……はじめまして、と言うべきかな?こちらでは、君の事をグレイと呼ばせて貰っている。」

その言葉と同時に、物陰から、完全武装したシン。

メタルバトラーが姿を現した。

薄暗い中、メタルバトラーの赤い目が

ブォン

と不気味な音と共に光が灯った。

「グレイ?この俺が?あぁ、この衣装の色か。なるほど、なるほど。」

気を取り直し、グレイはメタルバトラーと対峙する。

「……君にはわからないだろうねぇ、俺の怨みの深さが。」

「……知ろうとも思わん。」

メタルバトラーは、レーザーセイバーを抜き放つ。

「へぇ?魔術が使えないこの城で、そんな武器が使えるのか?………興味あるねぇ。」

すると、メタルバトラーのインカムに警告音と、回避指示の表示が画面に表れる。

シンはそれに従い、身体を動かし回避する。

見えない攻撃?
魔術が使えないのに?

更に警告機能が危険を知らせる。

知らせる

避ける

知らせる

避ける

シンは、回避しながら攻撃方法を探り、
グレイは、なかなか決まらない攻撃に苛立ちを覚えた。

……ピピッ

『神ちゃんからのお知らせ。』

……なんだ?こんな時に。

『相手の攻撃方法は、斬魔糸ざんましと言う、攻撃用の糸。糸は、レーザーセイバーでも切断可能。』

なるほど。

糸か。

バイザー機能を生かし、糸を可視化が出来る様にする。

そうすると、赤い線が浮かび上がり、鮮明に見える様になった。

フォン!

ブツ!

フォフォン!

ブツ! ブツ!


悪魔の糸である斬魔糸と、メタルバトラーのレーザーセイバーの激しい攻防が暫く続いたが、徐々にメタルバトラーが押し始めた。

「ブラストナックルっ!!」

メタルバトラーの拳が、グレイの頭部を捕らえた。

しかし。

「……弾かれた?」

確かにブラストナックルは決まった。
だが、何かに阻まれた様な感触が腕に伝わった。

一方、グレイも確かに頭部に一撃を食らった。
だが、フードの守護の能力が、それを上回った。

……ハラリ

フードも無事では無かった。

「……っ!?」

メタルバトラーは驚愕した。

「お前の……その顔は!?」
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