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暗雲たちこめる王国と公国

襲撃の暗殺者

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兵を全て出陣させてから、丸4日。

そろそろ、ぶつかり合いが始まっている夜。

丸裸なヴェーグラング城に、黒ずくめの一団が侵入を開始していた。

この暗殺者集団は、音も無く素早い身のこなしで、城の内部へと進んで行く。

部屋を一室、また一室と確認しながら、王室の生活圏へと迫っていった。

暗殺者集団は、余りの静寂と、手薄過ぎる警備に疑問を持ちながらも、任務の為に、その疑念を振り払いながら、進む事しか選択肢は無かった。

王の寝室に注意深く、入り混む。

手には、ギャロップと言う絞殺用の武器を用意し、1人は布団を剥ぎ、ギャロップを持つ暗殺者は確認をせずに、一気に首にワイヤーを巻き付けた。

……つもり、だった。

「……おやおや、残念ッスね~。」

窓の近くに黒い影が現れた。
よく見ると、その影はメイド姿の年端もいかない少女。

……視られたからには殺す。

暗殺者2人組は、ダガーを抜き、メイドに斬りかかる。

しかし、メイドはヒラリと難なく軽くかわす。

だがメイドは、かわすだけでは無かった。

すれ違い様、暗殺者の頸動脈を、いつの間にか片手に握られていたダガーで切り裂いたのである。

ドサリと崩れ落ちる2人の暗殺者を、冷ややかな視線を投げながら、メイドは耳に掛けているインカムに手を掛け、話を始める。

「こちら、リーチェ。T(タンゴ)2始末。送れ。」

無線機の使い方や、話し方、そして、フォネティックコードと言う、通話コードを、シンから教わった。
それを駆使して、きちんと通話した。

「こちらシン。了。各員、Tは複数健在。情報では、T総数13。内2ロスト。引き続き警戒されたし。送れ。」

すると、各員から次々と、了解の通話がシンの耳に届く。

因みに侵入者の人数の把握は、シンの神との通話により、仕入れた情報である。
無論、将軍達の戦場の情報も、手に入れている。


リーチェは暗殺者に向かい

「マ・ヌ・ケ。………しっかし、後で掃除が大変ッスね。コレ。」

と、一言述べると、次の任務に取り掛かる為に移動を開始した。

ギャロップが締めたのは、別な布団を簀巻きにしたものであり、暗殺者は確認せずに実行に移したのだった。
その代償は、自らの命とは思いもせずに。



時間が経てば経つ程、暗殺者達は、1人、また1人と討ち取られていく。

しかし、シンは確信していた。

これも捨て駒フェイクだと。

きっと、裏をかいてくると。

グレイと言う、合間見えた事の無い策士でも、策士ならこう来ると。





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