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暗雲たちこめる王国と公国

ハンサーラ公国軍

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王都を出てから、早3日。

森の中に潜伏し、眼前の軍勢に目をやる。

なかなか大軍ではないか。
あの時のゴブリンが、ただの小規模な軍勢にしか思えない。

これでは、王国軍は勝てないな。
普通なら。

取り敢えず、戦力は分析完了。

後は撤退し、城に戻り次第、報告し、帝国に援軍要請する事とする。

と、決まれば、いち早く行動を開始した。

ここで王国軍が動けば、必ず隙が出来、そこをグレイが突いて来るのは、火を見るより明らか。

帝国が援軍として、動いてくれるのを期待するしかない。


ただ、それ以上に気になり、報告しなくてはならないのは、ハンサーラ軍の兵士達の無気力さだ。

戦に行く人間ならば、良きにつけ悪きにつけ、人間性が垣間見得る者だ。

それが野心であったり、戦場への恐怖であったり。

公国軍には、それが感じ取れない。

例えるならば、ロボットの様な、無機質に似た、空虚な雰囲気だった。

一言で言えば『異質』である。

巡回も同じルートを

正確な時間に、正確なルートで巡回している。

まるで機械だ。

人間なら誤差が、必ずや起きるものだが、まるっきり無い。

シンは、それが嫌な予感に思い、急いで場を離れた。

その間、シンは神へ通信を実行。
違和感の正体を知るべく、その事を問い質す。

『汝の感じた違和感。間違いなく、亡国の不死皇帝絡みの術。魔術。』

「どういう事だ?」

『魅力にも見えなくはないが、あれはれっきとしたアンデッドよ。昼でも夜でも休み無く動ける類いのな。』

「で?神さんは観てたんだろ?公国の動き。」

『うむ。確かに観てた。が、奴らの妨害も酷くてな。全ては見通すのは至難なのよ。』

「……………それって、知らないのと同じでは?」

『……………そうとも言う。』

なんだか、どっと疲れる会話だな、と思いつつ、シンは帰路をまっしぐらに進んだ。
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