上 下
24 / 111
暗雲たちこめる王国と公国

HERO、御前会議に出席す。

しおりを挟む
一行は王都の城、ヴェーラング城に戻り、サイにゴンザレス、ブレイブ等他の重鎮達との話し合いの場を設けて頂いた。

シンは、一礼し先の事件の内容を話始める。
サーハン村でのゴブリンの軍団の襲来。
避難民に対し、謎の男(グレイ)によるオーク召喚による被害。
普通の国の貴族なら、民が被害者になろうが、どうでも良く、舞踏会等の為の話題程度で済ませるだろう。

しかし、小国なればこそ、一枚岩にならねばならない。
ましてや他国による侵略が無いとは言え、状況とは常に変動するものだ。
絶対に侵略が無いと言う保障はどこにも無い。
故に、グラード王国は稀に見る団結のある国と言える。

「それで、通称グレイと言う不逞な輩、魔物を召喚したと言うが、何が目的だ?」

立派な髭を生やした将軍。
ギルバルト将軍がシンに尋ねた。
ギルバルト将軍は生粋の武人であり、ブレイブ近衛騎士団長とは友人である。
以前、「あの団長と互角に渡り合える」腕の持ち主とは、この将軍の事であった。

「相手の目的は未だ不明点が多いのですが、侵略か何かの可能性が高いように思えます。」

ザワザワっと周囲がざわめき出した。

「静粛に!で、根拠は?」

ゴンザレス宰相が場を収め、シンに尋ねる。

「まずは、やり方です。力ずくの様に見せてはいますが、人間の軍ではない点。そして、召喚した『魔物』と言う手法を取った意味です。以前、前国王陛下が魔物討伐の戦場にて討ち死にと聴きましたが、不審な点は御座いませんでしたか?」

すると、黒人の将軍であるヤースキー将軍が答える。

「?……不審点か。確か、あの時……
敵が居なかったのにもかかわらず、馬上にて前陛下は、いきなり苦しみだし、落馬なされた……が?」

シンは言葉を吟味し、推測を脳内でまとめ、可能性を打ち出す。

「……なるほど。相手は魔族で、前陛下は名誉の為に討ち死にとなってはいるが、その実は不審死。では何故、前陛下を戦場へと出陣させる必要があったのでしょうか?そして、そのパターンは、今回の件と非常に酷似した状況ではありませんでしたか?」

「!!!」

その場の臣下一同は、氷ついた。
何故なら、シンが指摘した通り、酷似していたからだ。

魔物の大軍が村を襲い、国が軍を動かし、更に大軍の魔物が現れ、応戦する中、前国王が不審死をした。
その後、魔物は速やかに撤退したのである。

シンは皆の反応を確認した後、言葉を続けた。

「つまり今回も、現陛下、サイクォーダー国王陛下を戦場に引きずり出すのが、敵の目的だったのだと思います。」

ギルバルト将軍とヤースキー将軍は「まさか!」と言って驚いた。

「えぇ、間違いないと思います。そして、本来陛下が来る場所に俺が現れ、撃退してしまった。故にグレイは計画の軌道修正をしなくてはならなくなった。村人達を虐殺と陵辱により、魔物が出る場所だと印象をつける。しかし、これもグレイのブラフであったとするならば?」

サイは、シンにその言葉を確かめる様に尋ねる。

「……シン、それは真か?」

「可能性としては濃厚かと。そして、それをブラフとするならば、グレイの目的は?ヒントとしては、それはブレていない。」

しかし、そのシンの言葉で、サラは気が付いた。

「兄上様の命を奪う事、或いは王家の断絶。」

シンはサラの言葉に、大きく頷く。

「そう。狙いはブレていない。奴は、きっと陛下の命や断絶と言う目標の為に、今回の事件をブラフとして、陛下や御一同の眼を惹き付ける事にした。眼がそれた警備等手薄な時を狙い暗殺、そして侵略を再開するのが、グレイの策略と俺は観ています。」

シンの言葉ゴクリと唾を飲み込む音が誰かとは解らないが聞こえた。

「それは、あり得るのか?シン」

ブレイブ近衛騎士団長は尋ねる。

「極めて。しかし、前国王陛下をこの城から出さねばならなければ、暗殺が不可能だったのも、間違いないと思います。つまり、転移術等があるとするならば、それが使えない何かが、ヴェーラング城にあると思います。とするならば相手の次の一手は、かなり絞られますし、グレイからして見れば打つ手が限られた。と言う事です。」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...