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グラード王国王都ヴェーテル

身分証明の為に。

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後日。
喧嘩した男達は、王都処払いの刑で済ませた。
メタルバトラー事、信が

「本当なら命を持って、罰するのだろうが、幸い俺が救出し、物だけが失われた。命を失えば、命で償うべきだが、今後、この過ちで反省して人生を送ってもらいたい。しかし、それでは示しがつかないだろうから、都より出て貰うのが妥当だと思う。」

と、サイに進言した所、サイと宰相ゴンザレスは信の言葉に同意し、今回の判決となった。

そして、カフェの店主夫婦と娘は、王都の大通りに店を構える事が出来た。
こちらの方は、サラの計らいで、サイと宰相と相談の結果、空き店舗があるのが、大通りと言う事で、その土地を買収し与えた。

サラ曰く、

「あそこのケーキも紅茶もパスタも、美味しいんですもの。こんな事で失うのは、国の損失だわ!」

との事だった。

旅に出るにあたって、大切なのは他国へ赴く為の身分証明する為のモノである。

まさか王家の関係が、非公式とは言え、そのまま行くのは非常にマズイ。

なので、サラはお忍びの形となる為、当然何らかの新しい身分証明を作成しなくてはならない。
勿論、信についても同じだ。
異世界に来て、身分を証明するモノは何も無い。

他国でも通用する身分証明を作成出来るのは、僧侶になるか、冒険者ギルドで冒険者となり、渡り歩くかである。

と、なると冒険者になるのが手っ取り早い。

信とサラは、サイに話をすると、サイは「少し待て」と言って、何かを紙にしたため始めた。
そして書き終え、インクを乾かし、封書にして信に持たせた。

「それをギルド職員に渡すが良い。それと餞別代わりになるが、鎧と剣を渡そう。そのままだと、只の旅人だ。例の鎧には敵わぬが、冒険者らしく見せたいのであれば、そこそこの装備は必要だろう?さすれば、お前が以前言っておった『悪目立ち』はするまい?」

言い終えると、サイはブレイブを呼び出し、装備の件を指示し、ブレイブは信に身体に合うブレストプレートメイルと、バスタードソードを渡した。

サラは、流石に白い騎士鎧は目立つので、同じくブレストプレートメイルとロングソードを選んだ。
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