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グラード王国王都ヴェーテル

これは…デート?なのか?そうなのか?

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翌朝、信は王族ファミリーと賑やかな朝食を堪能した。

前の世界では家族も無く、楽しい食卓も無かった。
メイドや執事達は気さくで、暖かく信と接してくれた。
近衛騎士団長や宰相も実際、話してみると、凄く良い人達だと解ってきた。

あの時の塩対応は非公式とはいえ、初対面の人間に対しては、当たり前の対応であった。
しかし王が認め、家族同様に迎えいれた事により、周囲の理解と対応は早かった。

『あの陛下と姫様が家族同様に認めた人間』

それだけで認められた。
詰まりはサイの人物観察力が優れている証であり、周囲の人間はそれを知っているからこそ、認められた人間を信じるのである。
宰相のゴンザレスは、朝食後に挨拶に行き、小一時間ほど話をした。
最初は一応は認めたとは言え、完全に認めた訳ではないゴンザレスではあったが、会話終了の頃には厳つい顔つきも柔和になっており、信を表裏の無い好青年と言うようになっていた。

近衛騎士団長のブレイブに対しては、剣の模擬試合をし、互角の剣技を互いに披露した。
それを観ていた団員達も

『あの団長と互角渡り合えるのは、あの将軍しかいないのに、スゲー!』

って事で評判になった。
そんな互角に渡り合った、信に対しブレイブは、

『迷いも無く、邪心も感じない素晴らしい剣技』

と、太鼓判を押していた。

そんなこんなで、重鎮2人と付き合っていると、サラとの約束の時間になりつつあり、身支度を整え、待ち合わせの城の中庭へ足を運んだ。

「ごめん、遅くなった!」

「大丈夫よ、あの2人は気難しいから大変だったでしょ?お疲れ様。」

「いやいや、凄く良い人達で安心したよ。嫌われてたと思ってたからね。」

「いいえ。間違い無く、あの2人は嫌ってたわよ。でもね。私達家族に誠実に接したのと同じく、あの2人にも短時間だけど、誠意を持って接したからこそ、それを感じ取ったのよ。あの2人に認められて、尚且つ好感を持たれた最短記録は信がダントツね。」

『嫌ってたわよ。』と言ったサラの表情が何処と無く、怒っている様に見えた。
その証拠に、背後にその瞬間憤怒の顔した阿修羅が見えた。

そして信とサラは出口へと向かい、他愛もない話をしながら街へ足を運んだ。



街へ繰り出すと、サラは信に似合いそうな服装をチョイスしたり、サラのおすすめカフェで外食を楽しんだりした。
信は、この世界での共通貨幣の価値や、どんな国々があるのかを簡単ではあるが説明を受けた。
また、魔法は文字通り『魔の法』であり、悪魔が使用する力で、一般の人間が生活上使用しているのが、精霊石を使用した(霊法)、聖職者が癒し等に用いる力を(聖法)、戦士等が戦いに用いる力を(気法)、信の世界の魔術師が使う力を(術法)と言う分類を知る事が出来た。
中でも信が驚いたのは、この国自体は大変な小国で、余りにも貧弱な部類の国であった事であった。
サラは説明を続ける。

「この王国が、他の列強に占領とかされない理由はね、ある伝承が世界に知れ渡っている為なのよ。」

「伝承?」

「そう伝承。『世が興亡の極みに立ちし時、グラード王国たる小さき国に英雄出現する。かの英雄、異なる世界を救済せし、その後、彼の地にで神の命にて涌現す。彼の英雄、国々を分け隔てる事なく、救済するだろう。』ってね。そして、何故、他の国々がこの伝承を知っているのかと言うと、このグラード王国が、他の国々を生み出した発祥の古き国だからよ。」

だから例え小さな国であっても救世の英雄が出現する国だから、手が出せなかったのである。
ましてや、発祥の地となれば、日本で言うなら、昔は京都、今は東京を攻める様なものに似ている。

嘘であれ真であれ、いつかは自分の国を救う力ある者が現れる国を滅ぼす訳にはいかなかったのである。

「不思議だったでしょ?この国には、他の国の様に貴族自体が少ないのが。」

「いや、そもそも俺は他の国は知らない。この国が小さくても、列強の餌食にならなかったのは不思議だったが。そんな理由があったのか。成る程、合点がいった。確かに小さな国かも知れないが、俺には勿体無い位、自然も豊かで美しい国だよ。」

サラは、自分の育った国をそんな風に信が誉めてくれるとは思わなかったので、少し驚きもあり、嬉しくもあったようだった。

「とにかく、今日は色んな事を教えてくれたり、必要な物を買ってくれたりありがとう。サラ。」

「いいのよ。あの魔物を相手に命があった訳だし、報酬だって渡してなかった訳だし。……でも、あの冒険者達には悪い事をしたわ。一応、騎士団の方で、報告はして貰ったけど。亡くした命は帰らないし。」

サラは落胆した様子で言葉を紡いだ。

「……私が兄上の言う事を聴いていれば、あの人達は死ななかったのかなぁ……」

すると、信は首を横に振りながらサラの両肩に両手を置き、サラの言葉を否定する。

「………違う。サイが『冒険者に頼んで討伐に向かわせる』と言っていたから、どのみち、この結果に成った筈だ。何もサラのせいではない。自分を貶めるな。それでは、かつての自らの誇りを失う俺と同じだ。………サラは生き残ったんだ。だから全滅の姿を見ずに、俺は助ける為に戦う事が出来た。君が生き残ってくれたからこそ、俺は戦う事ができたんだ。ありがとう。」

真剣な眼差しで、サラの双眸を見つめる。


そんな2人を物陰から観ていた人達がいた。

『そこザマス。そこでブチュッと行くザマス!既成事実を作るザマス!』

『ちょっとメイド長、あんま押さないでくださいッスよぅ。』

怪しい2人のメイドがコッソリと様子観察しながら小声でやり取りしている。
端から見ると、不審者以外何者でもないのだが。

そんな時に怒声が通りに響き渡った。
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