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HERO異世界へ

運命の悪戯?神の戯れ?

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一年が経ち、メタルバトラーこと、藤倉 信ふじくら しんは、道路工事のバイトを終え、自室の布団に寝転がり、死んだ魚の様な眼で、明かりを消した天井を見ていた。
胸を満たす何かが足りない。
虚しい。何もかもが。

誰か、いっそ俺を殺してくれ。
世の中に必要が無くなった、この俺を。

負の連鎖的感情が、頭に、心に広がっていく。
解ってはいるが、割り切れない。
そんな風に思っている内に信は、いつの間にか眠りに落ちていた。



ん?………ここは何処だ?

信は周囲を見渡す。
何処までも白い世界。
そして、
誰も居ない世界。
何度も見渡す、信の頭に直接、声が響く。

『よく来た。異世界の英雄よ。』

「誰だ!」

『叫ばずとも、我は汝の周囲に居る。』

低くとも高くとも捉える事が出来る不思議な声。
男とも女とも、子供とも老人とも捉える事が出来る。

「……この俺に何の用だ?」

『異世界に於て、悪の組織を壊滅させた力、その汝の力を貸して貰いたい。』

「もし『断る』、と言ったら?」

信は怪しむ視線を白い世界に向けながら、声の主に問い掛ける。
声の主は、くくくっと嗤いながら返答する。

『いや、失礼。汝は断れない。汝は、あの戦いの後、自身の存在意義レゾンデートルに悩んでたではないのか?汝の存在は、苦しむ人々を武を持って救う事ではないのか?』

信は冷や汗が滝の様に流れるのを感じた。
自身の心が餓えている、悪とも取れる『戦いへの渇望』を、この声の主は見抜いているのか。
掠れる声で信は答える。

「確かに俺は戦いに餓えている。だが人々の平和は訪れた。例え俺の心が餓えても、それに溺れれば、俺が倒してきた奴等と変わらない。だから、俺の役割は終わったんだ。」

すると、

『本当にそうか?汝から見て異世界に救いを求める者が居ても、汝はその力を振るう事は無いのか?』

「何?」

『汝の力を必要とする世界が待っておるのだ。未来が絶望に彩られる間近な世界が。汝に我は救って欲しいのだ。我は直接、救う事は出来ぬのでな。』

なんてこった。
こんな事を言われたら、断れないではないか!

迷っていると、声の主は信の目の前に画像を現した。
其処には、夜の村らしき場所に盗賊の一団らしき者達が、家に火を放ち、老若男女を嬲り殺しにしている。

「……ぉぃ。」

『なんだ?』

「俺をあの場所に連れていけるか?」

『出来る。しかし、汝が転移してしまえば、我の願いを聞く事になるぞ?良いのか?』

信は身体が、心が、炎の如く熱くなるのを覚えた。
俺を必要とし救うべく人々がいるなら、なんで迷う必要があるのか?

「構わない。やってくれ!」

そして、信は転移した。
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