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追憶。
夏(7)。
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それから、少し時間が過ぎ、僕と穂香は肩を並べて砂浜を歩いていた。
「……ねぇ?さっきのあの人達と向かいあった時、怖くなかったの?」
上目遣いをしながら、僕に彼女は問い掛ける。
僕は頭をポリポリと掻きながら少し空へと視線をずらす。
「……確かに怖かったよ」
僕はポツリと呟く。
少しの静寂。
その間の、波の音のBGM。
視線を穂香に戻し、もう少し声を大きめにして、彼女に話す。
「確かに怖かったよ。……でもね、それは相手が怖かったと、言うソレとは違う怖さなんだ。」
その言葉に、キョトンとする穂香。
僕は穂香の目の前に立ち、彼女の手を僕は両手で包み込む様に優しく握った。
「僕が恐れたのはね。穂香
……キミが居なくなる事、キミが苦しい思いをする事なんだ。」
僕は少し俯いて、僕自身、両親も親戚も無く、今ある道場に無造作に捨てられていた赤子が自身である事。
道場の爺さんが、親同然に育ててくれた事。
そんな僕に後ろめたさを感じさせる暇を与えない親友がいる事。
僕は自分の過去を彼女に話した。
そして周囲が暖かくも、どこか僕はい言えぬ孤独感に囚われていた。
彼女に出会うまでは。
僕にとって彼女……穂香は雪解けを告げる太陽の様な存在。
かけがえの無い、唯一無二の存在。
「僕にとって、穂香は僕の心に本当の暖かさをくれた大切な人なんだよ。」
僕は穂香を抱き締めた。
身体が細かく震える。
それは穂香でなく、僕自身の身体が震えていた。
「……僕は……穂香……キミを失うのが、怖いんだ。本当に怖いんだ。」
僕は膝から力が抜けてしまった。
つられて、穂香も抱き締める様な形で一緒に座り込んでしまう。
「……大丈夫。私はここに居るよ。ずっと。そして、これからも龍護の側にいるから。」
そんな彼女の言葉に、僕が……
「……うっ、うあぁあぁあぁーっ!」
彼女の肩で泣いてしまった。
穂香は僕の頭を優しく、何度も撫でてくれた。
何度も。
「……ねぇ?さっきのあの人達と向かいあった時、怖くなかったの?」
上目遣いをしながら、僕に彼女は問い掛ける。
僕は頭をポリポリと掻きながら少し空へと視線をずらす。
「……確かに怖かったよ」
僕はポツリと呟く。
少しの静寂。
その間の、波の音のBGM。
視線を穂香に戻し、もう少し声を大きめにして、彼女に話す。
「確かに怖かったよ。……でもね、それは相手が怖かったと、言うソレとは違う怖さなんだ。」
その言葉に、キョトンとする穂香。
僕は穂香の目の前に立ち、彼女の手を僕は両手で包み込む様に優しく握った。
「僕が恐れたのはね。穂香
……キミが居なくなる事、キミが苦しい思いをする事なんだ。」
僕は少し俯いて、僕自身、両親も親戚も無く、今ある道場に無造作に捨てられていた赤子が自身である事。
道場の爺さんが、親同然に育ててくれた事。
そんな僕に後ろめたさを感じさせる暇を与えない親友がいる事。
僕は自分の過去を彼女に話した。
そして周囲が暖かくも、どこか僕はい言えぬ孤独感に囚われていた。
彼女に出会うまでは。
僕にとって彼女……穂香は雪解けを告げる太陽の様な存在。
かけがえの無い、唯一無二の存在。
「僕にとって、穂香は僕の心に本当の暖かさをくれた大切な人なんだよ。」
僕は穂香を抱き締めた。
身体が細かく震える。
それは穂香でなく、僕自身の身体が震えていた。
「……僕は……穂香……キミを失うのが、怖いんだ。本当に怖いんだ。」
僕は膝から力が抜けてしまった。
つられて、穂香も抱き締める様な形で一緒に座り込んでしまう。
「……大丈夫。私はここに居るよ。ずっと。そして、これからも龍護の側にいるから。」
そんな彼女の言葉に、僕が……
「……うっ、うあぁあぁあぁーっ!」
彼女の肩で泣いてしまった。
穂香は僕の頭を優しく、何度も撫でてくれた。
何度も。
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