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序章
金色の先生
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次の日から毎日、変な仮面とフードを被った医者がフェルデナントの容態を診にフルゲーレ家を訪れた。
彼はいつも決まった時間に部屋にくるので、もう習慣としてフェルデナントの身についてしまった。
フェルデナントは今もベッドに座らせられ、検診を受けていた。
「「.....」」
(き、気まずい...)
何か話したほうがいいのか、邪魔をしないように大人しくしていた方がいいのか視線をうろうろと漂わせる。
そして考えた末、目の前の変な医者を観察することにした。
(観察することは、もしもの非常事態に大いに役立つからな。)
この医者の先生は今、フェルデナントの足を診ている。なぜ足をと皆が思うだろう。これも全て、過保護な家族の要望だ。
なんでも、フェルデナントはもっと幼い頃から怪我を隠す癖があった。小さな切り傷はもちろん、捻挫や骨折など結構大きな怪我でも隠し通そうとしていたが、まあ、親の前ではそんな子供騙しでは歯が立たず、結局バレて心配だと泣いたり、医者を呼ぼうと使用人も使わず急いで走り、階段を踏み外したり、もっと早くに気づかないなんて親失格だと落ち込んだりする家族に、「これだから」と言いたくなったのものだ。どうせ正直に言ってもこのような事態になっていただろう。どうせなら治るまで隠し通した方がこのような事態にはならない。
一回バレてしまえばもう隠し通すことはできなかった。
というわけで今は足に隠している怪我はないか、何か後遺症はないかを診てもらっているというわけだ。
(やっぱり綺麗な金色だな。)
先生はフードを被っているが、頭の全てを隠せているわけではなく、少し金色の髪の毛がはみ出てしまっていた。そもそも髪の毛を隠そうとフードを被っているのかは分からないのだが。その隙間から見える金色の髪の毛は、フードによって光を遮られてはいるが、精錬されたばかりの金のような輝きを持っていた。
先生は足を診終わったのか、次は手の検診を始めた。手には紙で切ってしまった切り傷があったが、先生は魔法であっという間に治していく。
この世には魔石というものがある。魔石はその種類によって価値が変わる。例えば、少量の水を出したり、松明や明かりの火を灯したり、そよ風を吹かせたりするくらいのレベルなら低級魔石、風呂一杯の水を出したり、大きい炎を出したり、突風を生み出すレベルなら中級魔石、滝のような大量の水を生み出したり、山一つを燃やしたり、台風のような強風を吹かせるレベルなら上級魔石と、このようにレベル分けされており、上に上がるにつれて希少性も高くなっていく。他にも特殊魔石というものがあり、その代表格は転移や治癒といった特別な魔法が使える魔石のことをいう。それらは上級魔石よりも高価で希少性が高く、一生に一度見れるかどうかくらいである。まあ特殊魔石もレベルによって希少性は変わってくるのだが。
魔石はあくまでも、魔石の中にある魔力を受け取って使うもののため、魔力のない人間には魔石の完全な力は引き出せない。
そのため、例えば人間が治癒魔石を使っても、良くなることがほとんどだが、たまに効果がなかったり、悪化したりというケースもあった。そのため人間はあまり特殊魔石や上級魔石は使わないし、規制されているところも多い。
話が逸れたが、そのため魔法が生まれつき使える獣人に治療を頼んでいるというわけだ。
(いいなー魔法が使えるの。)
前世では何度獣人に憧れを抱いたか数えきれない。
とそのとき、今日は暖かいからと開けてあった窓から強風が入ってきた。
フェルデナントは咄嗟に、片手で強風から守るように顔を覆ったが、先生の方はどうやらフェルデナントの検診に集中していたらしい。彼の手を握ったまま、強風によってフードが剥がれていく。
その瞬間がひどくスローモーションに見えた。顔を覆う手の隙間からは、風に靡く、まるで稲穂のような美しい髪の毛が輝く。
「綺麗...太陽に輝く稲穂みたいだ...」
「....えっ?」
先生はそこで初めて気づいたようにハッと驚き、すぐにフードを被り直す。そしてフェルデナントの手を掴んだまま、じっと彼の目を見つめる。仮面からわずかに見える金色の瞳からは何かを見透かすような、何かを探すような焦りが見える。
しばらく見つめられた後、流石に視線が痛く、話しかける。
「...あの?先生?どうかしましたか?」
「...いえ...なんでもありません。申し訳ない。.....検診を進めますね。」
(この人...やっぱり獣人だったのか...)
さっきの頭の上には二つの、狼のような耳があった。そもそも魔石を使わずに魔法を使っていたので、最初からそうだろうとは思っていたが。
「...はい。」
あの子にやっぱり似ている気がした。あの子がもし獣人であったなら、このような見た目だったのかもしれないと想像する。
「...はい。今日の検診は終わりです。」
そんなことを考えているうちに検診が終わったようだ。
「ありがとうございました。先生。」
「...いえ.........次は少し先生とお話ししましょうか。君には先日の大怪我から記憶障害があった。何か思い出せないことや不安なことなどなんでも話してみてほしいのです。....そうなんでも。」
「思い出せないこと?」
そうは言っても今までのフルゲーレ家のフェルデナントとしての記憶はしっかりと残っているため、特にないし、不安なことはなくはないが話すようなことではない気がする。
「うーん。」
「なかったら何か質問でもいいですよ。」
(質問かあ。)
「じゃあ...先生はやはり獣人なのですか?」
「え?」
「さっき、お耳が見えてしまったので...」
顔は見えないが、少し困惑したような雰囲気だ。
(やっぱり少し踏み込みすぎたか?)
「...そうです。私は狼の獣人です。」
「やっぱり!いいなぁ獣人...かっこいいです!」
「君は獣人が怖くないんですか?特に狼とか..」
「そんなことないです!私が昔拾った...あー、えーーと前に見た絵本に狼さんが描いてあったんです!本当に綺麗でかっこいいです!」
(危ない!前世のことを言いそうになった。)
もちろん、今世ではまだ狼を拾ったことはない。不審がられないようにしないと。
「...そうですか。ありがとうございます。そう言ってくださるのは...あの方とフルゲーレ家の方々だけです。」
(あの方?誰のことなんだろう?)
本当にただの興味本位だった。
「先生、あの方ってどなたのことなのですか?」
「.........」
「先生?」
「......あなたのことですよ。
フェルデナント様....。」
「え?!」
どういうことだ?!バレているのか?
(いやそんなはずはない。)
そもそも前世でこのような獣人に面識はない。
(落ち着け。これは罠かもしれない。)
なぜこの先生が自分に罠を張るのか分からないが。
フェルデナントは平然ととぼけたふりをすることにした。
「...ええと、私ですか?それは私ももちろんフルゲーレ家の一員ではありますけど...。」
「....ふふふ。大丈夫。冗談ですよ。」
「へっ?」
「これも検診の一つですよ。フェルデナント様。」
(そうだったのか?!私としたことが、少々驚いてしまった。)
「そ、そうだったのですね!びっくりしましたよ。もう!」
「ふふ。ごめんなさい。...さて今の所何も支障はなさそうですね。じゃあ今日の検診は終了です。」
「はい。ありがとうございました。」
先生はじっとフェルデナントを見つめたあと、少し足早に部屋を出ていく。
フェルデナントは優しく手を振り返してくれる先生を見送った。
(少し仲良くなれたような気がする!)
前々から獣人には興味があったので、仲良くなりたいと思っていた。
(これからもっと仲良くなりたいな。)
???side
「ハッ.....ハッ.....ハッ!!」
(生きていた...おのお方が!!)
興奮する気持ちを抑えきれず、4本足で森の中を全速力で走る。こんなにスピードを出したのはあの日以来だ。
確信はないが、本能がそう言っている。
あの子はあのお方であると。
(今度こそ逃がさない)
金色に輝く狼は同じ色をした月と共鳴するように叫ぶ。
夜の森に狼の遠吠えが響く。
彼はいつも決まった時間に部屋にくるので、もう習慣としてフェルデナントの身についてしまった。
フェルデナントは今もベッドに座らせられ、検診を受けていた。
「「.....」」
(き、気まずい...)
何か話したほうがいいのか、邪魔をしないように大人しくしていた方がいいのか視線をうろうろと漂わせる。
そして考えた末、目の前の変な医者を観察することにした。
(観察することは、もしもの非常事態に大いに役立つからな。)
この医者の先生は今、フェルデナントの足を診ている。なぜ足をと皆が思うだろう。これも全て、過保護な家族の要望だ。
なんでも、フェルデナントはもっと幼い頃から怪我を隠す癖があった。小さな切り傷はもちろん、捻挫や骨折など結構大きな怪我でも隠し通そうとしていたが、まあ、親の前ではそんな子供騙しでは歯が立たず、結局バレて心配だと泣いたり、医者を呼ぼうと使用人も使わず急いで走り、階段を踏み外したり、もっと早くに気づかないなんて親失格だと落ち込んだりする家族に、「これだから」と言いたくなったのものだ。どうせ正直に言ってもこのような事態になっていただろう。どうせなら治るまで隠し通した方がこのような事態にはならない。
一回バレてしまえばもう隠し通すことはできなかった。
というわけで今は足に隠している怪我はないか、何か後遺症はないかを診てもらっているというわけだ。
(やっぱり綺麗な金色だな。)
先生はフードを被っているが、頭の全てを隠せているわけではなく、少し金色の髪の毛がはみ出てしまっていた。そもそも髪の毛を隠そうとフードを被っているのかは分からないのだが。その隙間から見える金色の髪の毛は、フードによって光を遮られてはいるが、精錬されたばかりの金のような輝きを持っていた。
先生は足を診終わったのか、次は手の検診を始めた。手には紙で切ってしまった切り傷があったが、先生は魔法であっという間に治していく。
この世には魔石というものがある。魔石はその種類によって価値が変わる。例えば、少量の水を出したり、松明や明かりの火を灯したり、そよ風を吹かせたりするくらいのレベルなら低級魔石、風呂一杯の水を出したり、大きい炎を出したり、突風を生み出すレベルなら中級魔石、滝のような大量の水を生み出したり、山一つを燃やしたり、台風のような強風を吹かせるレベルなら上級魔石と、このようにレベル分けされており、上に上がるにつれて希少性も高くなっていく。他にも特殊魔石というものがあり、その代表格は転移や治癒といった特別な魔法が使える魔石のことをいう。それらは上級魔石よりも高価で希少性が高く、一生に一度見れるかどうかくらいである。まあ特殊魔石もレベルによって希少性は変わってくるのだが。
魔石はあくまでも、魔石の中にある魔力を受け取って使うもののため、魔力のない人間には魔石の完全な力は引き出せない。
そのため、例えば人間が治癒魔石を使っても、良くなることがほとんどだが、たまに効果がなかったり、悪化したりというケースもあった。そのため人間はあまり特殊魔石や上級魔石は使わないし、規制されているところも多い。
話が逸れたが、そのため魔法が生まれつき使える獣人に治療を頼んでいるというわけだ。
(いいなー魔法が使えるの。)
前世では何度獣人に憧れを抱いたか数えきれない。
とそのとき、今日は暖かいからと開けてあった窓から強風が入ってきた。
フェルデナントは咄嗟に、片手で強風から守るように顔を覆ったが、先生の方はどうやらフェルデナントの検診に集中していたらしい。彼の手を握ったまま、強風によってフードが剥がれていく。
その瞬間がひどくスローモーションに見えた。顔を覆う手の隙間からは、風に靡く、まるで稲穂のような美しい髪の毛が輝く。
「綺麗...太陽に輝く稲穂みたいだ...」
「....えっ?」
先生はそこで初めて気づいたようにハッと驚き、すぐにフードを被り直す。そしてフェルデナントの手を掴んだまま、じっと彼の目を見つめる。仮面からわずかに見える金色の瞳からは何かを見透かすような、何かを探すような焦りが見える。
しばらく見つめられた後、流石に視線が痛く、話しかける。
「...あの?先生?どうかしましたか?」
「...いえ...なんでもありません。申し訳ない。.....検診を進めますね。」
(この人...やっぱり獣人だったのか...)
さっきの頭の上には二つの、狼のような耳があった。そもそも魔石を使わずに魔法を使っていたので、最初からそうだろうとは思っていたが。
「...はい。」
あの子にやっぱり似ている気がした。あの子がもし獣人であったなら、このような見た目だったのかもしれないと想像する。
「...はい。今日の検診は終わりです。」
そんなことを考えているうちに検診が終わったようだ。
「ありがとうございました。先生。」
「...いえ.........次は少し先生とお話ししましょうか。君には先日の大怪我から記憶障害があった。何か思い出せないことや不安なことなどなんでも話してみてほしいのです。....そうなんでも。」
「思い出せないこと?」
そうは言っても今までのフルゲーレ家のフェルデナントとしての記憶はしっかりと残っているため、特にないし、不安なことはなくはないが話すようなことではない気がする。
「うーん。」
「なかったら何か質問でもいいですよ。」
(質問かあ。)
「じゃあ...先生はやはり獣人なのですか?」
「え?」
「さっき、お耳が見えてしまったので...」
顔は見えないが、少し困惑したような雰囲気だ。
(やっぱり少し踏み込みすぎたか?)
「...そうです。私は狼の獣人です。」
「やっぱり!いいなぁ獣人...かっこいいです!」
「君は獣人が怖くないんですか?特に狼とか..」
「そんなことないです!私が昔拾った...あー、えーーと前に見た絵本に狼さんが描いてあったんです!本当に綺麗でかっこいいです!」
(危ない!前世のことを言いそうになった。)
もちろん、今世ではまだ狼を拾ったことはない。不審がられないようにしないと。
「...そうですか。ありがとうございます。そう言ってくださるのは...あの方とフルゲーレ家の方々だけです。」
(あの方?誰のことなんだろう?)
本当にただの興味本位だった。
「先生、あの方ってどなたのことなのですか?」
「.........」
「先生?」
「......あなたのことですよ。
フェルデナント様....。」
「え?!」
どういうことだ?!バレているのか?
(いやそんなはずはない。)
そもそも前世でこのような獣人に面識はない。
(落ち着け。これは罠かもしれない。)
なぜこの先生が自分に罠を張るのか分からないが。
フェルデナントは平然ととぼけたふりをすることにした。
「...ええと、私ですか?それは私ももちろんフルゲーレ家の一員ではありますけど...。」
「....ふふふ。大丈夫。冗談ですよ。」
「へっ?」
「これも検診の一つですよ。フェルデナント様。」
(そうだったのか?!私としたことが、少々驚いてしまった。)
「そ、そうだったのですね!びっくりしましたよ。もう!」
「ふふ。ごめんなさい。...さて今の所何も支障はなさそうですね。じゃあ今日の検診は終了です。」
「はい。ありがとうございました。」
先生はじっとフェルデナントを見つめたあと、少し足早に部屋を出ていく。
フェルデナントは優しく手を振り返してくれる先生を見送った。
(少し仲良くなれたような気がする!)
前々から獣人には興味があったので、仲良くなりたいと思っていた。
(これからもっと仲良くなりたいな。)
???side
「ハッ.....ハッ.....ハッ!!」
(生きていた...おのお方が!!)
興奮する気持ちを抑えきれず、4本足で森の中を全速力で走る。こんなにスピードを出したのはあの日以来だ。
確信はないが、本能がそう言っている。
あの子はあのお方であると。
(今度こそ逃がさない)
金色に輝く狼は同じ色をした月と共鳴するように叫ぶ。
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それこそ、『推し活』。愛する者を遠くから見守り、ただその者が幸せになることだけを一身に願って、まったくの赤の他人として尽くす、という営みである。
リシャールは正直なところ、もうあんな目に遭うのは懲り懲りだった。番だのΩだの傾国だのと鬱陶しく持て囃され、邪な欲望の的になるのも、愛する者を不当に奪われて、周囲の者もろとも人生を棒に振るのも。
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