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3杯目【後編】
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扉を開けて目に入った光景に
動画クリエイターは思わずたじろいだ
店構えは上品な喫茶店だ
それはいいだがカウンターの
向こうに白ずくめの燕尾服の男が
立っているとなれば話は別だ
燕尾服の男は客の姿を認めると軽く一礼した
「ようこそお客様。あなたの成功を導く店へようこそ」
男の言葉がいかにも怪しい
うさんくさい
動画クリエイターは逆戻りを決めた
だがなぜか背後にあったはずの扉が消えていた
つまりどうがんばっても出られない
『あぁーまさか俺、実はどっかで寝てるのか?』
どこからかはわからないがきっと夢だろう
自分の夢ながらわけがわからないが
無意識領域の不合理に
文句をつけても仕方がない
彼はそう思い込むことにした
雨に濡れた服の冷たさもありありと感じるし
店内からはよい香りもする
やけに五感がリアルに働く夢だ
夢と決まれば好きなように動けばいい
動画クリエイターはとにかく温まりたかったのだ
『なんでもいいから温かいものを…
ってかこの店喫茶店ですよね?あなたがええと店主さん?』
カウンター席について彼は
さっそく注文をしようとした
(しかしそもそもこの店はきちんとした喫茶店なのか?)
念のため確認しておくことにした
動画クリエイターの問いに白ずくめの男は面白そうに笑みを浮かべた
いわくこの店は執事と名乗る燕尾服の男が
道楽で営んでいる喫茶店なのだという
「お客様とのお話やその変わっていく様が、
楽しくてこの店をやっております」
執事の話を聞きながら
動画クリエイターは眉をしかめる
『さっき店入った時に、成功がどうとか言ってませんでした?』
どうしても気になっていたことを
彼は尋ねてみることにした
「あぁこの店を訪れた方は不思議と
望む成功を手にされることが多いのです。
無論お客様方の努力あってこそだとはございますが
ちょっとしたジンクスとはいえ面白いでしょう?
せっかくですからお出迎えのセリフも一捻りすべきかと
色々セリフを考えていたところにお客様がいらっしゃったので」
どうやら自分は新しいセリフの実験台だったらしい
思わず動画クリエイターは真顔になった
怪しすぎるからあのセリフはやめておくべきだと
思わず力説してしまったものの執事はとぼけるばかりだ
「いいセリフかと思っていたのですが…
まぁそれはさておき、当店はお客様に合わせたおすすめの一品のみ
ご提供しております。体が温まるものに致しますのでどうぞお待ちを」
カウンターの向こうで動き出した執事の姿を
見つつ動画クリエイターは頭に引っかかっていた
“成功”という言葉を自分なりに考えていた
(動画で生きていきたい。そう思ってはいたけれど…
俺にとっての成功ってなんだろうな)
動画編集を始めようと決めた瞬間のことを
彼は今でも覚えている
たまたま開いたネットにかかれていた
一文“好きなことで生きていく“
そのYoutubeのキャッチコピーを
見た瞬間心のどこかが貫かれた
自分の好きなことなんて
よく分からなかったがそんな生き方に憧れた
そうしてきっかけとなったYoutubeの様々な動画を
食い入るように見続けた
Youtubeに出演したいとはあまり思わなかった
むしろ動画の作りや見せ方に関心が強くなった
知れば知るほど動画の世界にはまっていく
本格的に技術を磨けば昔憧れた映画やアニメに
近い世界だってもしかしたら自分で描けるのかもしれない
そうして彼は会社員の薄給から捻出して動画の機材を揃え
まずは動画編集の技術を学び始めたのだ
“好きなことで生きていく“
その言葉を叶える厳しさを知らないままに
(成功…やっぱ金かなぁ。高望みはしないから
せめて会社員の給料くらい安定して動画で稼げりゃ…)
「お待たせいたしました」
降ってきた声に思考の世界から引き戻される
いつの間にか執事のおすすめの一品は
完成していたらしい。
動画クリエイターの目の前に
取っ手のついた耐熱ガラスのグラスが置かれた
深みのある金色の液体の中で
オレンジの皮がくるくると螺旋を描き
ほのかに甘い木のような香りが立ち上る
「ホットウイスキーでございます。
少し柑橘のジャムで甘みをつけました。
混ぜながらお召し上がり下さい」
喫茶店で温かい酒が出てくるとは想定外だった
しかもやたらと洒落ている
動画クリエイターは恐る恐るグラスを傾けた
思ったほどアルコールが強くなくて飲みやすい
洋酒のことはよくわからないが
絶対にいい酒を使っているに違いない
香りの深みが違う
ほんのりとした甘みと熱が
自分を満たしていく感覚に彼はふぅっと息を吐いた
「お気に召したようで何よりです」
顔を上げると執事と彼の目線が合った
どうやらカウンター越しに、様子を観察されていたらしい
動画クリエイターの鼓動が跳ねる
「ところで話を戻しますが…
あなたの成功というのは動画で会社員並の給料を得ることなのですか?」
執事は彼に問う
どうしてこの男は自分の考えていたことを知っているのか
動画クリエイターは怪訝そうな表情を隠せなかった
「先程口に出しておられましたからでも私から見るに
あなたの本心は違うところにあるように思われました。
人生をかけてあなたは何を叶えたいのでしょう?
そのために何を越えたいと願っているのでしょう?」
執事の声に動画クリエイターは
しばらく黙り込んだ
怪しすぎると言葉を返すこともできなかった
ずっと見ないふりをしていた、何かを突きつけられていた
しばしの沈黙のあと、動画クリエイターは
今の自分の状況を話し始めた
話を聞きながら執事は
彼の置かれた状況と望みを整理していく
「ふむ…お仕事の状況としてはコミュニティからの受注がほとんど。
あとは技術向上のために動画を作ってはYoutubeに上げていらっしゃる…」
一通り確認を終えてから執事はひとつ頷いた
「“好きなことで生きていく“素晴らしいコピーです。
その言葉があなたを今の動画の道へと突き動かしたところで
Youtubeで一番得をしているのは誰だと思いますか?」
唐突な問いかけに動画クリエイターは目を丸くした
それでも思考を巡らせる
思いついたのは有名なYoutuberたちだった
彼らはチャンネルの広告収入だけで膨大な額を稼ぐという
動画クリエイターは思い浮かんだ何人かの名前を挙げた
その答えを聞いて執事は薄く笑った
「有名なYoutuberたちは確かに得をしているでしょう。
でも一番の得をしているのはプラットフォーム側、
つまりYoutubeというメディアを提供する会社なのです」
執事は続けて彼にこう告げた
あらゆるSNSやプラットフォームは
当然提供する側の利があるからこそ運営されている
本来なら有料にしたいクオリティの
作品たちがプラットフォームに
集められさらに価値を高めている
「考えて見ればおもしろい仕組みですよね。
お金を稼ぎたいと多くのクリエイターが望んでいる。
でも各プラットフォームに作品をアップするときに
彼らはお金がほしいとは言わないでしょう?」
動画クリエイターは執事の言葉にハッとした
そんな視点でYoutubeを捉えたことは一度もなかったのだ
「お金は大事ですが、まずお金ありきで動くと矛盾が起こる。
大事なのは価値を循環させられるか。お金はその先なのです」
執事の言葉は動画クリエイターには少し難しいようだった
彼の表情を見ながら執事は言葉を重ねていく
「価値を高め・提供し・循環させるとはいえひとりだと限界があるものです。
大きな作品ほど役割分担をして何人ものスタッフと
作っているものではありませんか?」
動画クリエイターは雨の中で連想した
とあるアニメ映画のことを思い出した
世界的にも有名な監督の名が一番知られているが
彼一人で映画を作れるはずもない
というよりも監督のこだわりだけ
でもし作ったら商業的にはほぼ失敗するという
話も聞いたことがある作品が
世に出て多くのファンを獲得するまで
プロデューサーをはじめ、音響・作画・色彩設計・演出など
何人ものスタッフたちがそれぞれの専門領域で関わっている
「ご自身のスキルを磨くのも大事なことでしょう。
でももう少し視界を変えてみるとよいかもしれません。
他の領分の方と組んでみたり意見を聞いてみてもよいでしょう」
今まで考えたこともない視点の話が舞い込むとどうなるか
結論人間の理解力は急に落ちる
動画クリエイターはまさにその状態だった
頭は働かないし喉が渇く
残ったホットウイスキーを彼は飲み干した
底に少しだけ沈んだジャムが甘く舌に残る
「そうそう。お出ししたホットウイスキーですが
オレンジの飾りのことをホーセズネックスと呼ぶのをご存知でしたか?」
執事が空になったグラスを指差す
言われてみればグラスのふちに乗っかっていたオレンジの皮は
ホーセズネック(馬の首)のようにも見えた
「あなた自身の背を伸ばさなくても馬に乗れば視界は変わる…
あなたの成功はそれからのようです。
まずは視界を変えられる相手とお話してみるとよさそうです」
執事の言葉は未来を予見する
占い師のような響きをもって聞こえた
そうして動画クリエイターの不思議な夢は醒めた
ということはなくなんだか、狐に化かされたような心地のまま
動画クリエイターはその後もう一杯だけお代わりを
もらいしっかりお代を払って店を出た
店を出るころには服はほとんど乾いていた
消えたと思っていた扉は、
当たり前のように入ってきた場所にあった
無事に家に帰り着いたあと
動画クリエイターはネットで検索してみた
しかし喫茶店があったはずの
住所にはどう見ても、ただのアパートしかない
(あの店はなんだったんだろうな…)
動画クリエイターは首をかしげるばかりだ
どうにも夢ではなかったようだが
現実とも思えない出来事だった
怪しい店だった
でも悪い思いはしなかった
むしろ大事なことを教えてもらったように思った
視点を変えるために組む相手と
言われても心当たりはなかったが
誰かと話がしたいと思った
『そういえばアイツ、動画やらイラストの制作会社に入ったって言ってたっけか』
思い出したのは大学時代の後輩だ
クリエイター職ではないはずだが
面白い視点を聞けるかもしれない
久々にメールをしてみよう
動画クリエイターは携帯を手にとった
不思議と迷いは消えていた
動画クリエイターは思わずたじろいだ
店構えは上品な喫茶店だ
それはいいだがカウンターの
向こうに白ずくめの燕尾服の男が
立っているとなれば話は別だ
燕尾服の男は客の姿を認めると軽く一礼した
「ようこそお客様。あなたの成功を導く店へようこそ」
男の言葉がいかにも怪しい
うさんくさい
動画クリエイターは逆戻りを決めた
だがなぜか背後にあったはずの扉が消えていた
つまりどうがんばっても出られない
『あぁーまさか俺、実はどっかで寝てるのか?』
どこからかはわからないがきっと夢だろう
自分の夢ながらわけがわからないが
無意識領域の不合理に
文句をつけても仕方がない
彼はそう思い込むことにした
雨に濡れた服の冷たさもありありと感じるし
店内からはよい香りもする
やけに五感がリアルに働く夢だ
夢と決まれば好きなように動けばいい
動画クリエイターはとにかく温まりたかったのだ
『なんでもいいから温かいものを…
ってかこの店喫茶店ですよね?あなたがええと店主さん?』
カウンター席について彼は
さっそく注文をしようとした
(しかしそもそもこの店はきちんとした喫茶店なのか?)
念のため確認しておくことにした
動画クリエイターの問いに白ずくめの男は面白そうに笑みを浮かべた
いわくこの店は執事と名乗る燕尾服の男が
道楽で営んでいる喫茶店なのだという
「お客様とのお話やその変わっていく様が、
楽しくてこの店をやっております」
執事の話を聞きながら
動画クリエイターは眉をしかめる
『さっき店入った時に、成功がどうとか言ってませんでした?』
どうしても気になっていたことを
彼は尋ねてみることにした
「あぁこの店を訪れた方は不思議と
望む成功を手にされることが多いのです。
無論お客様方の努力あってこそだとはございますが
ちょっとしたジンクスとはいえ面白いでしょう?
せっかくですからお出迎えのセリフも一捻りすべきかと
色々セリフを考えていたところにお客様がいらっしゃったので」
どうやら自分は新しいセリフの実験台だったらしい
思わず動画クリエイターは真顔になった
怪しすぎるからあのセリフはやめておくべきだと
思わず力説してしまったものの執事はとぼけるばかりだ
「いいセリフかと思っていたのですが…
まぁそれはさておき、当店はお客様に合わせたおすすめの一品のみ
ご提供しております。体が温まるものに致しますのでどうぞお待ちを」
カウンターの向こうで動き出した執事の姿を
見つつ動画クリエイターは頭に引っかかっていた
“成功”という言葉を自分なりに考えていた
(動画で生きていきたい。そう思ってはいたけれど…
俺にとっての成功ってなんだろうな)
動画編集を始めようと決めた瞬間のことを
彼は今でも覚えている
たまたま開いたネットにかかれていた
一文“好きなことで生きていく“
そのYoutubeのキャッチコピーを
見た瞬間心のどこかが貫かれた
自分の好きなことなんて
よく分からなかったがそんな生き方に憧れた
そうしてきっかけとなったYoutubeの様々な動画を
食い入るように見続けた
Youtubeに出演したいとはあまり思わなかった
むしろ動画の作りや見せ方に関心が強くなった
知れば知るほど動画の世界にはまっていく
本格的に技術を磨けば昔憧れた映画やアニメに
近い世界だってもしかしたら自分で描けるのかもしれない
そうして彼は会社員の薄給から捻出して動画の機材を揃え
まずは動画編集の技術を学び始めたのだ
“好きなことで生きていく“
その言葉を叶える厳しさを知らないままに
(成功…やっぱ金かなぁ。高望みはしないから
せめて会社員の給料くらい安定して動画で稼げりゃ…)
「お待たせいたしました」
降ってきた声に思考の世界から引き戻される
いつの間にか執事のおすすめの一品は
完成していたらしい。
動画クリエイターの目の前に
取っ手のついた耐熱ガラスのグラスが置かれた
深みのある金色の液体の中で
オレンジの皮がくるくると螺旋を描き
ほのかに甘い木のような香りが立ち上る
「ホットウイスキーでございます。
少し柑橘のジャムで甘みをつけました。
混ぜながらお召し上がり下さい」
喫茶店で温かい酒が出てくるとは想定外だった
しかもやたらと洒落ている
動画クリエイターは恐る恐るグラスを傾けた
思ったほどアルコールが強くなくて飲みやすい
洋酒のことはよくわからないが
絶対にいい酒を使っているに違いない
香りの深みが違う
ほんのりとした甘みと熱が
自分を満たしていく感覚に彼はふぅっと息を吐いた
「お気に召したようで何よりです」
顔を上げると執事と彼の目線が合った
どうやらカウンター越しに、様子を観察されていたらしい
動画クリエイターの鼓動が跳ねる
「ところで話を戻しますが…
あなたの成功というのは動画で会社員並の給料を得ることなのですか?」
執事は彼に問う
どうしてこの男は自分の考えていたことを知っているのか
動画クリエイターは怪訝そうな表情を隠せなかった
「先程口に出しておられましたからでも私から見るに
あなたの本心は違うところにあるように思われました。
人生をかけてあなたは何を叶えたいのでしょう?
そのために何を越えたいと願っているのでしょう?」
執事の声に動画クリエイターは
しばらく黙り込んだ
怪しすぎると言葉を返すこともできなかった
ずっと見ないふりをしていた、何かを突きつけられていた
しばしの沈黙のあと、動画クリエイターは
今の自分の状況を話し始めた
話を聞きながら執事は
彼の置かれた状況と望みを整理していく
「ふむ…お仕事の状況としてはコミュニティからの受注がほとんど。
あとは技術向上のために動画を作ってはYoutubeに上げていらっしゃる…」
一通り確認を終えてから執事はひとつ頷いた
「“好きなことで生きていく“素晴らしいコピーです。
その言葉があなたを今の動画の道へと突き動かしたところで
Youtubeで一番得をしているのは誰だと思いますか?」
唐突な問いかけに動画クリエイターは目を丸くした
それでも思考を巡らせる
思いついたのは有名なYoutuberたちだった
彼らはチャンネルの広告収入だけで膨大な額を稼ぐという
動画クリエイターは思い浮かんだ何人かの名前を挙げた
その答えを聞いて執事は薄く笑った
「有名なYoutuberたちは確かに得をしているでしょう。
でも一番の得をしているのはプラットフォーム側、
つまりYoutubeというメディアを提供する会社なのです」
執事は続けて彼にこう告げた
あらゆるSNSやプラットフォームは
当然提供する側の利があるからこそ運営されている
本来なら有料にしたいクオリティの
作品たちがプラットフォームに
集められさらに価値を高めている
「考えて見ればおもしろい仕組みですよね。
お金を稼ぎたいと多くのクリエイターが望んでいる。
でも各プラットフォームに作品をアップするときに
彼らはお金がほしいとは言わないでしょう?」
動画クリエイターは執事の言葉にハッとした
そんな視点でYoutubeを捉えたことは一度もなかったのだ
「お金は大事ですが、まずお金ありきで動くと矛盾が起こる。
大事なのは価値を循環させられるか。お金はその先なのです」
執事の言葉は動画クリエイターには少し難しいようだった
彼の表情を見ながら執事は言葉を重ねていく
「価値を高め・提供し・循環させるとはいえひとりだと限界があるものです。
大きな作品ほど役割分担をして何人ものスタッフと
作っているものではありませんか?」
動画クリエイターは雨の中で連想した
とあるアニメ映画のことを思い出した
世界的にも有名な監督の名が一番知られているが
彼一人で映画を作れるはずもない
というよりも監督のこだわりだけ
でもし作ったら商業的にはほぼ失敗するという
話も聞いたことがある作品が
世に出て多くのファンを獲得するまで
プロデューサーをはじめ、音響・作画・色彩設計・演出など
何人ものスタッフたちがそれぞれの専門領域で関わっている
「ご自身のスキルを磨くのも大事なことでしょう。
でももう少し視界を変えてみるとよいかもしれません。
他の領分の方と組んでみたり意見を聞いてみてもよいでしょう」
今まで考えたこともない視点の話が舞い込むとどうなるか
結論人間の理解力は急に落ちる
動画クリエイターはまさにその状態だった
頭は働かないし喉が渇く
残ったホットウイスキーを彼は飲み干した
底に少しだけ沈んだジャムが甘く舌に残る
「そうそう。お出ししたホットウイスキーですが
オレンジの飾りのことをホーセズネックスと呼ぶのをご存知でしたか?」
執事が空になったグラスを指差す
言われてみればグラスのふちに乗っかっていたオレンジの皮は
ホーセズネック(馬の首)のようにも見えた
「あなた自身の背を伸ばさなくても馬に乗れば視界は変わる…
あなたの成功はそれからのようです。
まずは視界を変えられる相手とお話してみるとよさそうです」
執事の言葉は未来を予見する
占い師のような響きをもって聞こえた
そうして動画クリエイターの不思議な夢は醒めた
ということはなくなんだか、狐に化かされたような心地のまま
動画クリエイターはその後もう一杯だけお代わりを
もらいしっかりお代を払って店を出た
店を出るころには服はほとんど乾いていた
消えたと思っていた扉は、
当たり前のように入ってきた場所にあった
無事に家に帰り着いたあと
動画クリエイターはネットで検索してみた
しかし喫茶店があったはずの
住所にはどう見ても、ただのアパートしかない
(あの店はなんだったんだろうな…)
動画クリエイターは首をかしげるばかりだ
どうにも夢ではなかったようだが
現実とも思えない出来事だった
怪しい店だった
でも悪い思いはしなかった
むしろ大事なことを教えてもらったように思った
視点を変えるために組む相手と
言われても心当たりはなかったが
誰かと話がしたいと思った
『そういえばアイツ、動画やらイラストの制作会社に入ったって言ってたっけか』
思い出したのは大学時代の後輩だ
クリエイター職ではないはずだが
面白い視点を聞けるかもしれない
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不思議と迷いは消えていた
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