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第1章 ネトゲ発祥のリアル恋愛!?
17 衝撃のクリスマスイブから数日が経った。
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衝撃のクリスマスイブから数日が経った。仕事は相変わらずで、後輩くんの幸せそうな初クリスマスデートの報告を聞いたり、俺の異動が実しやかに囁かれるようになったりしながら、パソコンに向かうだけだった。でもその実、俺の心中は混乱しっ放しで、ふと仕事の集中力が切れたときに、あのとき、居酒屋で見た犬塚さんの表情や、聞いたその声が、妙にリアルに再生されて、困ってしまうのだった。
家に帰ってからもそれは同じで、いつかのときみたいにゲームにログインしないなんていう意地は張っていないけれども、ログインしたらしたで、シノさんを完全に避けるっていう、わかりやすいことをやってしまう俺だ。
今日も、【こんばんはー】と挨拶をして、【ばんわー】【ばんは】と次々と帰ってくる挨拶の中にシノさんの名前があるのを確認すると、【タロウさんダンジョンいかない?!】なんて、別の人にすぐさま声を掛けた。シノさんからのリアクションは何もない。【おk】とクールなタロウさんから最低限の返事をもらって、すぐにパーティを組んだ。ショコラちゃんも当たり前のようについてきた。 三人でダンジョンに潜って敵を倒す間、たまたまギルドのチャットで、シノさんが最近ギルドに加入した女の子に声をかけてパーティを組んだのを目撃してしまって、すごく、落ち込む。こんなことなら素直にシノさんに声掛けときゃよかった、と後悔するのまでが、ここ数日の俺の日常。
あー、やだ。
集中力が欠けて全然敵に弓が当たらないし、【アッキーがんばってよぅ】なんてショコラちゃんに可愛く言われても全くやる気になんないし、もうどうしようかな、って感じ。タロウさんは黙々と敵を薙ぎ倒していて、イケメンだ。
腐った気持ちでコントローラーを握っていると、ピロリン、と間の抜けた音がして、スマホが震える。メッセージの着信を報せるランプに、片腕を伸ばしてスマホを取った。片手にコントローラーを持ちながらスマホを操作して、つい、動きが止まる。
『週末どっちか空いてない? 遊びに行こう』
シノさん、ちがった、犬塚さんからのメッセージだ。
俺の心を見透かしているようなその誘いに、思わずぐぬぬと唸り声を上げてしまう。だけど、それ以上に、ぶっちゃけ、うれしい。
『いっすよ、どこいく?』
そんな気持ちを億尾も出さずに、俺もメッセージを返した。画面の中では俺のキャラクターが倒れて、【アッキー動いて!】とショコラちゃんに注意されているのが見えるが、俺の意識は既にスマホの中だ。ごめんショコラちゃん、タロウさん……。
『カフェ行きたいって言ってたよな』
『行きたい!』
『じゃあそこ行こう、予約しとく』
なんてメッセージのやり取りをして、俺はつい、ゲームの中でもシノさんに話しかけていた。
【こっちでは声かけないんだ?】
【リアルはリアル、な。集中しろよ、アキw】
【え】
【死んでるの見えた】
すごい。
シノさんこと犬塚さんは、本当になんでも、お見通しだ。
衝撃のクリスマスイブから数日が経った。仕事は相変わらずで、後輩くんの幸せそうな初クリスマスデートの報告を聞いたり、俺の異動が実しやかに囁かれるようになったりしながら、パソコンに向かうだけだった。でもその実、俺の心中は混乱しっ放しで、ふと仕事の集中力が切れたときに、あのとき、居酒屋で見た犬塚さんの表情や、聞いたその声が、妙にリアルに再生されて、困ってしまうのだった。
家に帰ってからもそれは同じで、いつかのときみたいにゲームにログインしないなんていう意地は張っていないけれども、ログインしたらしたで、シノさんを完全に避けるっていう、わかりやすいことをやってしまう俺だ。
今日も、【こんばんはー】と挨拶をして、【ばんわー】【ばんは】と次々と帰ってくる挨拶の中にシノさんの名前があるのを確認すると、【タロウさんダンジョンいかない?!】なんて、別の人にすぐさま声を掛けた。シノさんからのリアクションは何もない。【おk】とクールなタロウさんから最低限の返事をもらって、すぐにパーティを組んだ。ショコラちゃんも当たり前のようについてきた。 三人でダンジョンに潜って敵を倒す間、たまたまギルドのチャットで、シノさんが最近ギルドに加入した女の子に声をかけてパーティを組んだのを目撃してしまって、すごく、落ち込む。こんなことなら素直にシノさんに声掛けときゃよかった、と後悔するのまでが、ここ数日の俺の日常。
あー、やだ。
集中力が欠けて全然敵に弓が当たらないし、【アッキーがんばってよぅ】なんてショコラちゃんに可愛く言われても全くやる気になんないし、もうどうしようかな、って感じ。タロウさんは黙々と敵を薙ぎ倒していて、イケメンだ。
腐った気持ちでコントローラーを握っていると、ピロリン、と間の抜けた音がして、スマホが震える。メッセージの着信を報せるランプに、片腕を伸ばしてスマホを取った。片手にコントローラーを持ちながらスマホを操作して、つい、動きが止まる。
『週末どっちか空いてない? 遊びに行こう』
シノさん、ちがった、犬塚さんからのメッセージだ。
俺の心を見透かしているようなその誘いに、思わずぐぬぬと唸り声を上げてしまう。だけど、それ以上に、ぶっちゃけ、うれしい。
『いっすよ、どこいく?』
そんな気持ちを億尾も出さずに、俺もメッセージを返した。画面の中では俺のキャラクターが倒れて、【アッキー動いて!】とショコラちゃんに注意されているのが見えるが、俺の意識は既にスマホの中だ。ごめんショコラちゃん、タロウさん……。
『カフェ行きたいって言ってたよな』
『行きたい!』
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なんてメッセージのやり取りをして、俺はつい、ゲームの中でもシノさんに話しかけていた。
【こっちでは声かけないんだ?】
【リアルはリアル、な。集中しろよ、アキw】
【え】
【死んでるの見えた】
すごい。
シノさんこと犬塚さんは、本当になんでも、お見通しだ。
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